夜道
幼いころから10歳ごろまで悩まされていた悪夢の一つに、ふと気づくと夜の住宅街を一人で歩いていて、すぐに森に囲まれた真っ暗な道となり、怖くなって早足で先を急ぐと、突然、無数の提灯が参道に灯された人気のない神社が現れるという夢がある。
とても恐ろしく、しかも何度も繰り返し見ていたので、今でもよく覚えている。多分、誰かに説明して絵や映像にしてもらうことができるぐらい。
もっとも、「無数の提灯が参道に灯された人気のない神社が暗い夜道に突然現れる」出来事が実際にあったことをきっかけに解離性障害などのいろいろなことが連鎖的に明るみになっただろうことを考えると、あの夢はただの悪夢ではなかったのかもしれない。生まれて半世紀を超えてはじめて自分(とたくさんのパーツたち)のことを真に好きになることができたわけだし。それに、そんなにも長い間、自分自身のことを好きではなかったという事実は、悪夢よりも怖い。
ところで、この夢の意味というか背景についてはカウンセラーと話をしている間に思い出すことができたのだが、とても悲しい話なのでここでは書かない。
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先日、駅近くを歩いていると、知らない女性が突然近づいてきた。冷たい雨の降る夜で、いつもとは違い、他に歩いている人はほとんどいなかった。あたりが暗いこともあって女性の年齢はよくわからなかったが、多分、30代ぐらい。40代ではなかったと思う(自信はない)。若いように見えた。
最初は、道がわからなくなったのかと思った。
でも違った。
彼女は、何らかの事情で、生活のためのお金が必要だったみたいだ。
みたいだ、というのは、そのことがわかったときも自分は足を緩めずにそのまま歩いていってしまったから。事情も聞いていない。
ある夜の出来事
このことがずっと心の中でざわざわしている。
表向きは、困っているらしい人の話は聞くべきだったのではないかという意見と、誰もいないところで知らない人に話しかけられても「普通のこと」以外は無視して危険は避けるべきではないかという意見が衝突している。新興宗教やマルチ商法の奴らがそういうことを平気でやるのは知っているし、コロナの前に比べて明らかに街の雰囲気は悪くなっている(パーツたちによって意見は違う。少なくとも23番は、彼女のことをとても心配している)。
でも、ざわざわの理由は本当は違うことに自分は気が付いている。
捨てられることが怖いのだ。心の底から
染みのように消えることがないこの感情が自分を彼女に投影して、心をざわざわさせる。
あくまでも利己的な感情
その感情も自分の中の強力な一部である