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修理の時期

※性的な話があります。
※具体的なエピソートは出てきませんが、性加害に触れています。

☆ ☆ ☆



ひなたさんが見つかった何日か後、怖い夢を見た。

もともと明晰夢を見ることが多く、明晰夢を見たときには現実と夢の中の世界が曖昧になりがちである。目が覚めてからしばらくの間、幻覚を見ることも多い。

夢から現実に戻るのにしばらく時間がかかることもある。でも、怖いと思うことはほとんどない。幻覚にしても、動物や人の顔、景色、本のページ、布の模様などが記憶の中からランダムに出てくるだけである(どうやら、起きている間に見た映像が大量に記憶にストックされているらしい)。ドキュメンタリー番組かなんかで見たと思われるライオンのドアップの顔が出てきたときには、そのあまりの意外さにおかしくて笑ってしまった。

それに明晰夢では、様々な「役」が自分に割り当てられることが多い。割り当てられているのは、あくまでも「役」である。

役は、性別や年齢を問うことなく様々で、女性として知らない誰かと結婚していたことも子どもを抱いていたこともある(本人目線なので腕と服と脚しか見えないが、中央アジア風の民族衣装を着ていた。ストックされている映像記憶やストーリーの断片が使われているらしい)。

現実とかけ離れた夢を動かしているのは私の無意識で、言い換えると、夢をコントロールしているのはあくまでも自分である。


自分自身がコントロールしている限りは大丈夫。
コントロールを失ったときは起きてしまえばいい。


10代の頃に、解離が原因らしい金縛りに日々苦しめられた私の経験則である。本来はそんなもの決して持つ必要がない技能だけど。


でも、その夢は少々違った。


夢の中で私は、以前行ったことのある(そして心の中の部屋を見つけてくれた)カウンセリングルームの臨床心理士の人と話をしていた。

そして、ひなたさんというパーツがみつかったこと、ひなたさんはもしかすると性的なことに関係するパーツらしいこと、そして、声を取り戻すことと、パートナーの彼女と触れたときに暖かく穏やかな気持ちを心から感じたいことが今の課題だと思っていることを相談していた。

私は、それを2mほど離れた後ろから見ていた(解離による離人が起きたときの気配の側に視点がある感じ)。

すると、突然、


「あったことは絶対に人に喋るな」


と、しわがれた感じの女性の大きな声が私の口から飛び出してきて、夢のコントロールを失ってしまった。

そのまま暗転してすぐに目を覚ましたのだけれど、その声は、夢の中の「役」やパーツたちとは違い、自分自身の中から出てきたようには思えなかった。それに、現実の自分よりも年上のパーツにはこれまで会ったことがないし、存在する気がしない。

直観的には、実際に聴いたことのある声(記憶に残る声)にしか思えなかった。あまりにも生々しくて悪意があった。


ひなたさんが見つかってよりはっきりしたのだが、これまで薄々気づいていながらあえて避けてきた、というか見えないようにしていたことについて、自分自身のより根本的な修理が必要な時期が近づいてきているみたいだ。

避けてきたのは、それが性的なことを含むから。
面と向かいあうのを避けているのは自分でもよくわかっていた。

ただそれには、性的なことには自分の身体への違和感も含まれていて、正面から向き合うのが難しいと感じていたこと(人には言えないしね)、そして、他者との性的な関係への興味というか欲求が普通の人に比べて弱いようなので(他人の内面はもちろんわからないのだけれど)、向き合わなくてもいいだろうと思っていたこともある。小さなころから親に散々脅迫され続けてきた、経済的な問題の方が生きるために遥かに重要だったし。

いや、欺瞞が混じっているな、それは。

向き合う勇気がなかった。
シンプルにそうだ。

本来であればもっと若いときに正面から向き合うべき問題だったと思う。

回避したままなんとなくうまくやれている気になっていたため、こんなにもずるずると先延ばしにしてしまった。

***


ところで、口止めされた何かは本当にあったのか?


全く記憶はないけれど実は性加害を受けたことがある?と少し疑問に思ったことはこれまでにもある。いや、でもさすがにそれはないだろうと思っていたし、今でもあったとは思っていない。

きっと、いろいろな問題は人間不信が原因だろうと思う。例えば、愛着障害の典型例にあてはまっているように思えるし、愛着障害になりうるエピソードなんて数えきれないほどある。

それに、ひなたさんが背負い続けていたものがとてつもなく大きく重かったのかもしれない。

ただ、夢はあまりにも生々しくて、その後で一時的に酷い解離症状が出て体調も悪くなった。この記事も数日前に書き始めたのだが、途中で解離症状が酷くなってしまい、書き終わるのに時間がかかってしまった。


見た夢を含めて、臨床心理士の人にまた相談してみようと考えている。誰にも喋るなと言われたけどね。


心の修理をする時期らしいのは確かなのだし、なによりも、そうしたいと自分が感じている。

そして、パーツたちが見つかってから、いろいろと身体が普通になってきているのは事実なんだよね。身体のいろいろな場所の痛みが治まったのなんか、とても嬉しい。



荒波を超えた後に穏やかな海が待っている予感がする。


でも、荒波を超えるのには、ここで語ることと人の助けが必要みたいだ。


***

余談

タイトル画像の猫ですが、持っているレンチの片側がちゃんとメガネ(わっかになってる)なのがとってもキュート