北マケドニア、風呂に入りたくて国境近くの村に行く
15年ほど前、北マケドニアに長居していた時の話。
北マケドニアは、ギリシャの北側、ブルガリアの西側にある内陸国(地図のグレーので囲まれたところが北マケドニア)。
アレクサンダー大王が生まれたマケドニアは、ギリシャのテッサロニキ付近にあたる。
ひょんなことから、長居することになった北マケドニア。
滞在が長くなったので、ホテルではなくてアパートの部屋を借りていた。
なかなか快適な部屋だったが、バスタブがなくシャワーしかない。
日本人の習性なのと住んでいたのが寒い時期だったので風呂につかりたかった。
かの地ではバスタブにお湯をはって浸かることは必ずしも一般的でなかった。
「じゃあ、ホテルに行けばいいだろう」と考えた。
当時は北マケドニアを訪れる観光客が今よりも観光客が少なく、首都スコピエと言えどもホテルが限られていた。
数少ないホテルのひとつにホリデーインがあった。
日本を含めて、他の海外でもホリデーインと言えば、さほど高くないホテルと言う印象がある。
しかし北マケドニアでは最高級ホテルのひとつがホリデーインだった。
当時シングルで一泊150ユーロ前後だった。
「さすがに一晩のために150ユーロはなあ・・・」
じゃあもっと安いホテルを探せばいいのでは?と言っても、バスタブがあるところだとどうしても100ユーロぐらいは必要。
「さてどうしようかな・・・」
そんな時、知人に勧められたガイドブックをパラパラと眺めていた。
Bradt社の「Macedonia」である。
https://www.amazon.co.jp/Bradt-North.../dp/1784770841
ガイドブックの中に
「北マケドニア東部のブルガリアとギリシャに近いバンスコ村に温泉がある」と記されていた。
バンスコ村までは首都スコピエから車で200キロとかからない。
残念ながら私は車が運転できない。
しかし、よくよく調べてみると途中バンスコ村近くの町で乗り換えるとバンスコ村に行くこと出来るようだ。
(非常にバスの便は限られているが)
首都スコピエにあるバスターミナルに出掛け、情報を仕入れてバンスコ村に向かう。
当時私は首都スコピエに住んでいたので、まさにマケドニア縦断の旅。
半日近くかけて目的の村に到着。
ガイドブックの情報を片手に、まずはサナトリウム(いわゆる療養所)を目指す。
その近くに目的の温泉(スパ)はあるはずだが、サナトリウム以外の建物はない。
ただ近くに老朽化したレンガの壊れかけた建物があった。
なんか嫌な予感がした。
しかし勇気を振り絞って村の住人らしき人を探し、温泉の在処を尋ねた。
会話はマケドニア語。英語は通じず。
私の怪しいマケドニア語で話しかけて、何人か目でようやく話が通じた。
村人いわく、「ずいぶん前につぶれた。サナトリウムに行けばスパがある」と教えられた。
仕方がないのでサナトリウムの建物に向かった。
いかにも共産主義時代の名頃のような老朽化した建物に入る。
※注意:北マケドニアはかつての旧ユーゴスラビア連邦に属していた。
いわゆる共産圏の国。
声をかけても誰も出てこない。
仕方がないので、恐る恐る建物の中に入る。
廊下を歩いていると、スパと言うか風呂らしい部屋を発見。
ドアに手をかけると開いているので、入ってみる。
・いきなり消毒くさい。
・お湯が35度はないぬるさ。
・何よりも設備が古い(不潔ではないが)。
さすがにこのお湯につかると、温泉成分はあるかもしれないけれど、風邪ひきそうだぞ(訪れた時期は秋の終わりだった)。
加えて、自分がホルマリン漬けならぬ、薬漬け(と言うか消毒漬け)にされそうな気がした。
「これはやばいぞ・・・」
誰もいないのをいいことにドアを開けてもと来た廊下を小走りに歩いた。
そしてサナトリウムを後にした。
「いったい私はマケドニアを北から南に縦断して、国境近くまで何をしに来たんだろうか・・・」
確かに往復のバス代は、ホテル1泊の宿泊料よりずっと安かった(往復50ユーロはしなかった)。
しかし、「安物買いの銭失い」に近い結果となった。
しょぼぼんと落ち込んでいたが、おなかはしっかりすいてきた。
帰りのバスの時間までまだしばらくあるので、小さな町の中にある食堂に入り遅い昼食を食べた。
注文した「タフチェ・グラフチェ(ひよこ豆のオーブン焼き。肉)」のしょっぱさが染みた。
(終わり)
※注意:地図はGoogleMapsより引用。
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