
71日間地球ひとまわり(16)スペイン、徒歩で聖地巡礼(中編5~7日)
徒歩巡礼開始してから5日目。
ヴィラルバの町の出て次に向かったのがバーモンデ(Baamonde)の町。
ヴィラルバまでは事前にネットで宿泊先を予約していた。
しかし、この日は宿を予約していない。
それは、ネット上で予約できる宿がひとつ。
一泊60ユーロ(8500円程度)と決して安くないホテルのみ。
これまで5000~6000円程度で宿泊していたので、予算オーバー。
公営のアルベルゲはあるが、予約不可の早い者勝ち。
ということで、ヴィラルバの町を朝早く出かけることにした。
この日、歩く距離は25キロ程度。
途中緩やかな坂道はあるものの高低差が激しいわけでない。
途中、放牧地帯を抜け、雑木林を抜けて歩き続けた。

10キロ歩いたところで、この日も休憩。
バルでコーヒーを注文しひと息を付く。

バルを出て、再び歩き始めた。
集落の間を抜けて歩いている時ふと空を見上げた。
虹が出ていた。
なんだかうれしい。
虹を見ながら歩いた。

それからしばらく歩き続けて12時ごろにバアモンデの町に到着。
予約をしていないから、このまま歩き続けて次の町に向かうのもありだ。
昼前にこの町で出会った若い巡礼者たちは、この町を出て歩き続けた。
しかし、この先10キロ歩くのは私には厳しいので、この日はバアモンデで宿泊することにした。
目当ての公営のアルベルゲに向かった。
しかし開館するのが13時半。
1時間半近く待つ必要がある。
町を歩くと数件のバルとレストランがあった。
まずは宿を確保したい。
アルベルゲから少し歩いた場所にあるレストランじゃなくて、アルベルゲの隣にあるカフェでコーヒーを飲みながら開館時間を待った。
そして13時半になった。
アルベルゲのドアをノックすると開いた。
「宿泊したいのだけれど、受け付けてもらえますか?」
と尋ねるとOKとのこと。
お金を支払い簡易シーツと枕カバーを受け取り、2階に部屋に案内された。
だだっ広い部屋に2段ベッドがたくさん並ぶ。
「好きなところに泊まってくれて構わない」
と言われた。
しかし、よく見ると掛け布団はおろか、ブランケットもない。
受付に戻り尋ねると、「ブランケットや掛布団はない」とのこと。
6月末と言えどもスペイン北部の山の中の夜は冷え込む。
さすがに吹き抜けだと厳しい。

受付の方に相談して、スペシャルな部屋にしてもらった。
布団の類はないが、部屋が狭い。
その分、寒さがマシだった。
それにしても寒かった。
そして翌朝、あまりにも寒かったので早朝にアルベルゲを出発した。
大きな道路沿いにしばらく歩き、線路を横切り、川を渡り山の中に入っていく。

坂を上ると、小さな広場に十字架が立つ。

更に坂を上ると石造りの教会がある。
鍵がかかっているから中に入ることはできない。

教会の横を通り過ぎて更に山道を登る。
途中、掲示板が現れて巡礼路の説明がある。
ここから先、巡礼路はいくつかに分かれる。

「さて、どうしよう」
誰か通りかかると声をかけるのだけれど、10分ぐらい待っても誰も通りかからない。
仕方がないので、一番古くからある道を歩くことにした。
山の中をひたすら歩き続けた。
巡礼者はおろか、地元の人にも合わない。
たしかに住居も、牧草地も、畑もない。
加えて霧が立ち込めている。
これで道を迷っていたらどうしよう。

頼りは、巡礼路の立つ道標。長く歩いても、この道標が見えるとほっとする。
実は、この日(6日目)の道のりが、巡礼中一番難しかったかもしれない。

10キロぐらい歩き、山道を抜けると空が少しずつ晴れてきた。
そして道は集落に入ってきた。
集落の中にレストランがあった。
この日は早朝に出発し、朝ごはんを食べていなかった。
昼ごはんと休憩を兼ねて食事がしたいと店に入った。
「12時からなので、あと40分ぐらい待つ?」と尋ねられた。
「コーヒーは飲めますか?」と尋ねると大丈夫とのこと。
紅茶もあるようなので、紅茶を注文して席に座って待っていた。「ボカディージョ(スペイン風のサンドイッチ)なら、一緒にできるけれど、どうする?」と尋ねられた。
ありがたい、あわせてボカディージョも注文した。

食べ終えて店の外に出ると、朝までもやが出ていたのが嘘のようないい天気。
しかも昨日までの肌寒さが嘘のように暑いぐらい。
集落を抜けて歩き続けた。
荒野の中を歩いていると、時折羊飼いに合う。
そして羊の番をする犬にほえられてドキドキしながら、逃げるように歩く。


荒野を抜けると、ようやく緑が見えてきた。
さっきまでの荒野が嘘のようだ。

森に入り日陰に入ることができたので、少し楽になった。
そしてようやく、この日の夜の宿泊先である、ロヒカ(ROXICA)の町名が書かれた矢印が見えてきた。

さらに1時間歩き、宿が見えてきた。
この日歩いたのは30キロ。
高低差もこれまでの中で一番激しかった。
宿に到着したら疲れ果てた。

しかし、ひと休みする前にまずは洗濯をしないと着替えがなくなる。
がんばって洗濯をしてから、日陰のベンチに腰掛けてひと息ついた。
宿の周りに店はおろか、食事できる場所もなかった。
夕食もお願いした。
夕食は肉料理とサラダとデザート。
宿泊者と一緒にテーブルを囲み、和やかに食事をした。
テーブルを囲んだのは、アメリカから来た20代前半の姉妹とフランス人のおじいさんと私だった。
一期一会の出会いを楽しみ、食事を終えてから部屋に戻り眠りについた。
そして翌朝、フランス人のおじいさんは早朝に出発。
私は荷造りをするアメリカ人姉妹に別れを告げて宿を後にした。
宿を出ると朝もやが立ち込めていた。
この日の目的地は、ソブラード(Sobrado)。
距離は25キロ。
最初は山の中を歩いた。
しばらく歩くと、自動車道が見えてきた。
次は自動車道沿いに巡礼路は続く。
自動車道に沿って道は続いているから、迷わないが味気はない。
それはさておき、粛々と歩く。

10キロぐらい歩くと、小さな町に入る。
いつものようにトイレ休憩を兼ねて立ち寄った。

丘を越えて歩き続けると、町が見てきた。
そして町の向こうに、背の高い聖堂が見えてきた。
世界遺産に指定されている修道院である。

大聖堂を通り過ぎて町の中心に向かった。
ちなみに大聖堂はこんな感じ。
※入場料は有料(2ユーロ)。
今回はタイミングが合わずに中には入らず。

大聖堂のそばには修道院がある。
巡礼者はこちらにも泊まれるようだが、この日はホテルを予約していた。
キャンセルができないのが悔やまれる。

この日の宿泊先のホテル。
チェックインは15時と遅い時間。
早めについたら、建物の入り口は開いていたがレセプションは15時まで開かず。

ホテルの部屋はこんな感じ。
シングルなので、部屋は決して広くないがベッドは広い。

ホテルにチェックインを済ませてから昼食を食べに近くのバルに出かけた。
よく頑張ったのでビールとMenu del dia(日替わりランチ)を注文。
前菜はロシア風サラダ。
メインは牛肉のローストを選択。
デザートはプリンを選択。
なぜこのサラダがロシア風なのかは謎?
しかし非常に美味しかった。
ビールに合う。

食べ終わるころには、テラス席に地元のおじさんたちが集っていた。

ワインを飲みながらテーブルの上には、魚のひもの?が並ぶ。
どうもツマミらしい。

うれしくなって、
「日本も同じように魚のひものを食べるの」とオジサマたちに声をかけた。
オジサンたちに、手招きされて座るように声をかけられた。
「魚食べるかい?」と皿を差し出してきた。
しかし私は魚が苦手。
丁重にお断りした。

オジサマたちにお礼を言ってから店を後にして、ホテルに戻った。

ホテルの窓から、町の中心の広場を眺めながらひと息ついた。
(後編に続く)