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サンフランシスコ、監獄島アルカトラズ行きのチケットをもらう

もう20年近く前の出来事。
仕事の関係で、アメリカ西海岸の最南端の町、サンディエゴに出掛けた。
当時、日本からの直行便が無かったのでサンフランシスコで乗り換えた。

業務を終えてからサンフランシスコに一泊滞在し、週末を過ごすことになった。
せっかくなので、映画「ザ・ロック」の舞台になったアルカトラズ島に行こうかと考えた。

当時は今みたいに、インターネットの検索システムが発達していなかった。サンフランシスコの町中にある観光案内所で、アルカトラズへの行き方を教えてもらった。
島に行くには船に乗る必要があるそうなので、船着き場に向かった。
船着き場のチケットカウンターで尋ねると、当日のチケットはすべて売り切れ。
翌日出直してくれとのことだった。

私は翌日には日本に帰らなくてはならない。
「何とかならないか」と食い下がってもよい答えは得られず。
しょぼぼんと、チケットカウンターを後にしていると、後ろから声をかけられた。
親子連れの男性だった。

「アルカトラズに行きたいの?」と尋ねられた。
「はい、行きたいです。でも、今日はチケットが売り入れたみたいで」と答えた。

「1枚チケットがあるけれど、よかったらあげます」
男性はそう話しかけてきた。

その言葉を聞いて、
「ありがとうございます」と受け取った。

あまりに突然の出来事に驚いて、それしか言えなかった。
少し時間がたち落ち着いてきたので、さっきの親子連れを探して声をかけた。
「(ナンパのようだが)お礼にコーヒーをごちそうさせてください」と。

すると男性いわく、
「家族3人で来るはずが、一人これなくなったから、せっかくだから気にしないで」とのこと。

決して安いチケット出なかったので(確か2000円近くした覚えがある)、
お礼をさせて欲しいと伝えると、
「せっかくの一枚を有効に使って欲しい」

お礼は受け取らずに、子供を連れて乗船の列に向かった。
かっこいいな。

あれから20年以上の月日がたつ。
アルカトラズの写真もなければ、アルカトラズがどんなのだったかも記憶が定かではない。
それでも、この出来事だけは今でも鮮明に覚えている。

彼から受けた恩返し、あれから私はできているのかな。
そんなことをふと思い出した。


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