ワンランク上の人材選抜【良い人材を確保するための多肢選択式問題の作り方(2)】
前回「多肢選択式問題」の12のポイントのうち、1~4までを解説しました。今回は5~9のポイントを説明します。
多肢選択式問題の12のポイント
多肢選択式問題を作成する際に、注意すべきこととして、次の12のポイントがあります。
1 確実な正答が1つのみに絞り込める問題にすること
2 解答に必要な条件を問題にいれること
3 問題文や選択肢は、できるだけわかりやすく簡潔な表現にすること
4 誤答の選択肢は、惑わしの効果があるものにすること
5 選択肢の長さはなるべく同じような長さにすること
6 問題文や選択肢に使用する用語の統一を図ること
7 選択肢には、なるべく「常に」「必ず」「・・・のみ」といった、いわゆる強調語や限定語を避けること
8 選択肢には、なるべく「上記のすべて」「上記のいずれでもない」を用いないこと
9 問題文や選択肢は、なるべく「肯定文」にすること
10 問題文や選択肢の一つ一つの表現にも注意して問題を作成すること
11 その他、問題集全体として、他の問題のヒントになる問題がないこと
12 正答位置の不自然な偏りがないこと
このうち、今回は5~9を説明します。
5 選択肢の長さは、なるべく同じような長さにすること
例6にあるように、一つの選択肢の長さが、他の選択肢の長さと明らかに異なる場合、受験者はその選択肢が異質なので、正答とわかってしまったり、誤答とわかってしまう可能性があります。
そのため、できるだけ、各選択肢の長さは同じようにすることが望ましいのです。
よくない問題【例6】
(選択肢の長さは、なるべく同じような長さにすること)
問題文 (略) 、次のうち正しいのはどれか。
1. 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇。
2. △△△△△△△△△△△△△△。
3.◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇。
4.●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。
5. □□□□□□□□□□□□□□□□。
(正答4)
(理由)
正答4の選択肢のみが長い文になっており、詳しく書かれているので、他の選択肢に比べて異質になっている。
そのため、次の改良例のように、選択肢4の長さを他の選択肢と同じような長さに揃え、異質にならないようにする必要があります。
改良例
問題文 (略) 、次のうち正しいのはどれか。
1. 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇。
2. △△△△△△△△△△△△△△。
3.◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇。
4.●●●●●●●●●●●●●●●●●。
5. □□□□□□□□□□□□□□□□。
(正答4)
6 問題文や選択肢に使用する用語の統一を図ること(表記の揺れをなくすこと)
例7にあるように、問題文や選択肢の中で、同じ内容のものについては、同じ言葉や用語を使うようにします。受験者は、用語が異なると、同じ内容のものでも別のものを意味していると誤読したり、場合によっては、その問題の解答に影響を与えることもあります。
よくない問題【例7】
(問題文や選択肢に使用する用語の統一を図ること)
(選択肢には、なるべく「常に」「必ず」「・・・のみ」といったいわゆる強調語や限定語を避けるようにすること)
問題文(略)次のうち、正しいのはどれか。
1. 地方自治体の中には人口が少ないものもあるが、・・・・・・これらの公共団体は一定の財政規模・・・・・・・必要がある。
2. 今年度の財政規模は・・・・・・となっているが、対前年増加率は・・・・である。
(略)
5. 政府は景気対策のために、・・・・・政策をとっているが、・・・・これにより必ず・・・・になっている。
(理由)
選択肢1では、前半部分で「地方自治体」、後半部分では、「これらの公共団体」としており、表記が統一されていない。
選択肢2では、「今年度」と「年度」の表記が統一されていない。
選択肢5では、「必ず」という強調語が使われているが、なるべく使用しない方が望ましい。(「常に」「必ず」「・・・のみ」といった強調語は、一般的に例外がないので、受験者は異質な選択肢と考えやすくなる。)
そのため次のように改良すると、より良くなります。
改良例
問題文(略)次のうち、正しいのはどれか。
1. 地方自治体の中には人口が少ないものもあるが、・・・・・・これらの地方自治体は一定の財政規模・・・・・・・必要がある。
2. 今年度の財政規模は・・・・・・となっているが、対前年度増加率は・・・・である。
(略)
5. 政府は景気対策のために、・・・・・政策をとっているが、・・・・これにより・・・・になっている。
7 選択肢には、なるべく「常に」「必ず」「・・・のみ」といったいわゆる強調語や限定語を避けること
上の例7にあるように、いわゆる強調語や限定語が選択肢にあると、受験者からは、「例外があるのではないか」と考えて誤答とすぐにわかってしまったり、内容そのものが疑わしい印象を与えてしまう。(受験者から見ると、これらの表現が入っている選択肢は、胡散臭く感じて、誤答とすぐに判断しがちになるのです)
8 選択肢には、なるべく「上記の全て」「上記のいずれでもない」を用いないこと
例8にあるように、「上記の全て」の選択肢は、他の選択肢の二つの正誤が分かってしまうと、(他の選択肢を考えなくとも)推測できてします。
(例えば、「正答が一つ」もしくは「全てが正答」という問題形式の場合、二つの選択肢が正答と分かれば、他の選択肢を見なくても、全て正答と分かってしまい「上記の全てが」正答になる)
また、「上記のいずれでもない」の選択肢は、(問題作成後などに)正答になってしまう可能性が出てくる場合があるので、使用は避けた方が無難です。
(例えば、作成者が正答と考えていた選択肢よりも、より妥当な方法や答えがあった場合は、「上記のいずれでもない」が正答になってしまうからです)
よくない問題【例8】
(選択肢には、なるべく「上記の全て」「上記のいずれでもない」を用いないこと)
問題文 コンクリート特徴として、最も正しいものはどれか。
1.コンクリートは乾燥するにつれて収縮が起きる。
2.コンクリートは、熱を伝えやすい材料として知られている。
3.コンクリートは、耐久性に優れているが、遮音性が悪いとされている。
(略)
5.上記の全て
(正答1)
(理由)選択肢5の「上記の全て」は、選択肢1~4のうち、一つでも「違う」と分かれば誤答と分かってしまう。他方、選択肢1~4のうち、二つが正答と分かれば(他の選択肢を見なくても)「上記の全て」が正答となる。また、仮に選択肢5が「上記のいずれでもない」の場合、受験者が正答と思う解答が選択肢に無いことになるので、解答し難くなる恐れがある。(心理的に選択肢5を選びにくくなる)さらに、最も正しいものは、問題作成者が考えつくことのできなかったものとなる可能性もある。
そのため、次のように選択肢を工夫することが望ましいのです。(「上記のすべて」という選択肢5を、普通の問い方に変更する。)
改良例
問題文 コンクリート特徴として、最も正しいものはどれか。
1.コンクリートは乾燥するにつれて収縮が起きる。
2.コンクリートは、熱を伝えやすい材料として知られている。
3.コンクリートは、耐久性に優れているが、遮音性が悪いとされている。
(略)
5.コンクリートは、寿命が5年程度と短いことが欠点としてあげられる。
さらに、「正しいもの全て挙げてある選択肢はどれか」という問題形式(組合せ問題)の場合、受験者心理として、「全てが正しい」とする選択肢を選ぶことには躊躇しがちになる傾向があります。
(例えば、選択項目がA~Dの4つであるときに、その「全てが正しい」とする選択肢が「正答」の場合、受験者心理として「全てが正しい」とする選択肢を選びずらいので、正答率が悪くなる傾向にあります。)
9 問題文や選択肢は、なるべく「肯定文」にすること(特に問題文や選択肢における二重否定はなるべく避けること)
例9にあるように、問題文や選択肢を「肯定文」ではなく「否定文」にするときは、受験者が慌てて誤読しないように、アンダーラインや太字にして、目立つようにすることが大切です。(このようにしないと、その問題を間違えた受験者は、問題の内容がわからずに間違えたのか、単に読み違えて(間違ったものを選ばずに)正しいものを選んでしまったのかわからなくなり、正しい能力測定が出来なくなるからです。)
よくない問題【例9】
(問題文は、なるべく「肯定文」にすること
※設問を否定文にする以外に方法がないときは、アンダーラインを引いたりして受験者が誤読しないように強調すること
※特に、問題文や選択肢における二重否定はなるべく避けること) 問題文(略)次のうち、正しくないのはどれか。
1. Aを選択したのは5人だった。
2. Bを選択したのは10人だった。
(略)
5. Eを選択したのは2人ではなかった。
(理由)問題文が肯定文ではないので、はっきり分かるように表記しないと、受験者は間違って「正しいもの」選んでしまう可能性があります。(その結果、受験者の能力と言うよりは注意力をテストしたことになってしまう可能性があるのです)
選択肢5では、問題文が否定文であるため、結果的に二重否定となり、(本来の問題としては論理的思考力を判別しようとしているのに)文章上の表現が無用に、わかりにくくなってしまいます。
そのため、記述は、できるだけ単純でわかりやすくする必要があるのです。
上記の例9は次のように改良すると、より良くなるのです。
改良例
問題文(略)次のうち、正しくないのはどれか。
1. Aを選択したのは5人だった。
2. Bを選択したのは10人だった。
(略)
5. Eを選択したのは3人だった。
今回は、前回に引き続いて、多肢選択式問題の作成における12のポイントのうち、5~9を解説しました。 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。(Mr.モグ)
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