人材選抜のための良い「組合せ問題」の作り方
多肢選択式問題の問題形式は、いろいろありますが、「組合せ問題」(例えば「四つの選択肢Å~Dのうち、正しいものの組合せを選ぶ五肢択一式」のような問題)もよく見る問題形式です。
この「組合せ問題」は、問題作成者の選択肢の組合せパターンによって、問題の難易度が異なってきます。
さらに、問題作成の観点から考えると、五肢をつくるよりも、四肢や三肢の組合せ問題にした方が、(わざわざ5つの選択肢を作らなくてもよいので)問題作成時間やコストが削減できます。
(しかし、受験者の能力を正確に測定するという観点からは、「組合せ問題」よりも「択一式の基本的な問題形式」のほうが優れているのですが、このことは次回詳しく説明します。)
ここでは、「組合せ問題を作成上での留意点」について考えてみます。
(空欄補充型)組合せ問題の選択肢の用語が適切か
例1は、いわゆる空欄補充の「組合せ問題」ですが、その空欄に入る語を適切に作成する必要があります。
例えば、例1の空欄Aは「間脳」と「大脳」がそれぞれ二つずつあり、もう一つが「中脳」となっています。
「中脳」は脳の一部であることから、空欄Aに入りうる語なので、良いですが、仮に脳と関係のない語の場合(例えば「網膜」)は、それだけで選択肢5は簡単に排除されてしまう可能性があります。
(「網膜」目に関係ある組織であり、脳に関係ないので、それだけで誤答と分かってしまいます。)
そのため、特に空欄補充型の組合せ問題については、空欄に入る用語の選択を慎重に考えて出題することが必要になります。
【例1】
(空欄補充型)
問題文 ヒトの脳に関する次の記述のうち、A、B、Cに当てはまるものとして正しいのはどれか。
「( A )は、主に視床と視床下部に分かれ、視床下部は( B )に関する中枢機能をもち、内臓の働きや( C )、血糖量の調節を行う。」
A B C
1. 間脳 自律神経系 体温
2. 間脳 交換神経 消化
3. 大脳 自律神経系 体温
4. 大脳 交換神経 消化
5. 中脳 自律神経系 体温
(正答1)
質問の仕方が適切か
例2は、A~Dの選択肢のうち正しいものの数を聞いている問題になっていますが、この場合は、正答3で正しいものが二つあることが分かっても、それが具体的にACなのかどうかは分かりません。
(もしかしたら、ある受験者は、正答がBDの2つと思ったケースも、この問題形式の場合は「正答」になってしまします。)
【例2】
(正答数質問型)
問題文 (略)次のうち、正しい選択肢の数のはどれか。
A:間脳には視床下部がある。
B:視床下部では消化ホルモンが分泌される。
C:視床下部は血糖の調整を行う機能がある。
D:中脳には視床がある。
1. 0
2. 1
3. 2
4. 3
5. 4
(正答3)
そのため、このような問題は正確に分からなくても正答となってしまう受験が生じる可能性があるのです。
例3は、正しい選択肢の組合せを答える問題になっていますので、例2の問題よりも、より正確に受験者の能力を測っているといえます。
【例3】
(選択肢組合せ型)
問題文 (略)次のうち、正しいのはどれか。
A:間脳には視床下部がある。
B:視床下部では消化ホルモンが分泌される。
C:視床下部は血糖の調整を行う機能がある。
D:中脳には視床がある。
1. AC
2. AB
3. AD
4. BC
5. CD
(正答1)
このように、組合せ問題は、質問の仕方によて、受験者の「真の能力」の把握度合いが異なる可能性があるのです。
組合せ問題の組合せパターンによる難易度の違い
さらに、組合せ問題の場合は、選択肢の組合せ方によって、難易度が大きく変化してしまいます。
すなわち、組合せの問題を作るときに重要となるのは、組合せパターンをどのようにするかということになります。
例えば、次のような問題例をみてみましょう。
【問題例】
問題文 次の1~5のうち正しいものの組合せを一つ選べ。
A 脂質は、皮下脂肪として体内の組織に蓄えられる。(わかりやすい○)
B ビタミンは、主に活動のエネルギー源になる。(×)
C 無機塩類は、骨格や歯を形成するほか、体液濃度の調整もしている。(○)
D タンパク質は、体内物質の分解をする働きがある。(×)
E 炭水化物は、野菜に多く含まれる物質である。(わかりやすい×)
1. AB 2. AC 3. BC 4. CD 5. DE
この問題の選択肢Aは比較的易しい正答肢(皮下脂肪に資質が蓄えられることは比較的易しい)、Eは比較的易しい誤答肢(炭水化物が野菜に含まれないことは比較的容易に分かる)であるため、
1. AC、 2. BE、 3. CD、 4. DE、 5. AE、
という選択肢 なら(多くの受験者はAが「○」、Eが「×」ということが分かるので、与えられた選択肢の中から正答は「1.AC」に容易に絞り込める※ため)、受験者の正答確率はかなり高くなることが予想されます。
※Aが「〇」なので、与えられた選択肢の中では、1.AC か 5.AE に、絞り込み、次いで、Eが「×」なので、1.AC が正答と分かるのです。
他方、
1. AB、 2. AC、 3. AD、 4. BC、 5. CE、
という選択肢なら、(受験者はAが「○」、Eが「×」とわかっていても、与えられた選択肢の「1.AB」、「2.AB」、「3.AD」のうちからランダムに正答を絞り込むしかないため※)、受験者の正答確率は低くなることが予想されるのです。
※Aが「〇」なので、与えられた選択肢の中では、1.AB、2.AC、3.AD に、絞り込めるのですが、その中に、Eが「×」がないので、これ以上は絞り込めないのです。
このように組合せ問題は、作題者の作る解答肢の組合せパターンにより、受験者の正答確率が大きく変わってくることが考えられます。
受験者の側に立てば、二つの選択肢の「組合せ問題」の場合、一方がわかっても他方がわからなかったので結局正答には至らず、(二つとも)全くわからない受験者と同様の扱い(すなわち0点)になってしまう者や、逆に知識はあまりなくても消去法により、運よく正答に至ることで、完全に二つの正答がわかって正答肢に行き着いた受験者と同様の扱いになることが大いにあり得るのです。
そのため、作題者が、「組合せ問題」を作る際には、想定される受験者の知識レベルを踏まえた上で、慎重に組合せパターンを選び出すことが必要になるのです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。(Mr.モグ)
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