多肢選択式問題を作る際の留意点
前回、多肢選択式問題のメリットとデメリットについて説明するとともに、多肢選択式問題でも、出題の仕方によって、受験者の思考力、理解力などの深い知識や能力を測定できることを解説しました。 今回は、実際に多肢選択式の問題を作るにあたって、注意すべき点を中心に解説していきましょう。
多肢選択式問題(客観テスト)とは
多肢選択式問題は、マークシート式の問題であり、一般に客観テストとされていますが、池田※1) は、客観テスト問題の諸形式を、次のような五つの形式に分類しています。
1. 真偽形式(○×形式)
2. 多枝選択式(択一式)
3. 組み合わせ式
4. 並べ換え式
5. 完成式(穴埋め式)
また、『テスト・スタンダード』※2) (日本テスト学会、 2007)によると、「多肢枝選択式」とは、「あらかじめ選択枝として複数用意された質問に対する答のリストの中から適切なものを選ぶという形の質問形式。選択式のひとつ。用意される選択肢の数によって、四肢選択式、三肢選択式などと呼ばれることもある」としています。
※1)『テストの科学』池田央、日本文化科学社、1992年
※2)『テスト・スタンダード』日本テスト学会編、金子書房、2007年9月14日
そのため、多肢選択式試験の設問形式としては、真偽形式(○×形式)、択一式、組み合わせ式、並べ換え式、 完成式(穴埋め式)等の設問形式の全てが含まれるとの考えの下で、以下、説明をします。
良い多肢選択式の問題を作るには
まずは、次のような段階を経て問題を作ることが重要になります。
①出題分野やその範囲を決める
選抜を行う上で、どのような能力・知識が必要かを整理した上で、それに沿った形で、出題の範囲や内容を決めます。(受験者には必要に応じて、出題の範囲を公表します。)
②各分野ごとの問題数と出題の主題(テーマ)を決める
決められた出題範囲のなかで、出題題数とその分野を細かく決めると共に、各問題の主題(テーマ)を決めます。
その際には、選抜試験において、受験者が知っていなければならない(もしくは知っていて欲しい)知識や能力の観点から、出題することが必要になりますので、あまりに専門的であったり、些細な知識(いわゆる「重箱の隅をつつく」ような問題)を避けるようにすることが大切です。
③問題形式の統一を図りつつ、受験者のレベルを意識して問題を作成する
詳しくは後述しますが、多肢選択式試験問題集としての統一性を図ることも重要です。
各問題ごとに使用する用語が異なっていたり、各問題ごとに出題方法が異なっていることにより、結果的に、(能力以外の)解答ミスや、解答する際に、疑念をもたれるような問題は避ける必要があります。
このような段階を経て、問題を作ることになりますが、問題の形式の統一も図りつつ、問題作成チームを作り、問題作成スケジュールを作ったうえで、問題作成に取り掛かることになります。
(参考)問題の問い方の例 ・ 〇〇として、正しいのはどれか。 ・ 〇〇のなかで、あっているものを一つ選べ。 ・ 〇〇のうち、正しいと思うものをマークしなさい。 など
受験者のレベルに合った問題作成の重要性
また、受験者のレベルを考え、レベルにあった出題をすることも重要です。
一般的に、選抜の強い試験(倍率の高い試験)の場合は、難易度が高くても構わないとされていますが、多肢選択式試験においては、マークシートで解答を選ぶ形式になるため、問題が難しすぎると、前回説明したようにゲス解答が多くなり、受験者の能力を正しく判定できなくなる可能性が出てきます。そのため、概ね40~60%程度の正答率の問題が望ましいと思います。
例えば、競争率の高い試験で、問題が易し過ぎると(図の「やさしすぎる問題」のように)、多くの受験者が高い点数をとり、上位層の差がつかなくなり、効果的な選抜ができなくなる可能性が出てきます。
逆に、問題が難しすぎると(図の「難しい問題」のように)、多くの受験者が低い点数をとり、(上位層の選抜はできますが)下位層の差がつかなくなり、合否判定の境目の点数に多くの人が集まり、選抜の誤差が大きく生じる可能性が出てきます。
受験者層のレベルに見合った問題を作成することが、効果的な選抜を行う上で極めて重要になるのです。
まとめ
こうしてみると、単に問題作成といっ手も、受験者像を描きつつ、そのレベルにあった問題をつくることが重要であることがよくわかると思います。
難しすぎる問題は、ゲスが多くなり、結果として、たまたまその問題の答えとマークが一致したことで合格してしまう人を増やすことになります。
また、やさしすぎる問題は、受験者間の差がつかなくなり、試験をした意味そのものが無くなってしまうことになりかねません。
問題作成は、とても重要な作業となるのです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。人材選抜は奥が深いですよね。 次回はさらに問題作成の具体的なことに踏み込んで解説していきたいと思います。(Mr.モグ)
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