その日から体調を崩してしまい、 一週間あの場所に行くことが出来ずにいた。 昔は体調なんか滅多に崩さなかったのに。 …いや、気付かないように自分自身に見て見ぬふりをしていただけなのだろうか。 ここでの暮らしはまだ短いが、 時の流れをゆっくり感る中で 今まで忘れかけていたことに気付かせて貰える事が多々ある。 この場所でなら 自分自身と素直に向き合えるような気すらしていた。 …こうして生きていればいつか、 好きな自分に出会うことが出来るだろうか…。 体調も良くなり、久しぶ
この何もかも吸い取ってくれるような朝の始まりは、 1ヶ月前と同じ世界に住んでいるとは思えない。 アラームに叩き起され、 身支度も早々に、コンビニで買ったサンドイッチを 齧りながら駅へ向かう。 人々が行き交い、会話が入り交じる中電車を待つ。 あの頃は見えない何かに追われながら 必死でもがいて、走って。 しかし、人は面白いもので その日常から逃げたくてここへ来たと言うのに、 いざ自由に生きれるとなったら、 あの日常が少し恋しくなったりもするもので。 こうして、独り占めで
起きて適当な服に着替えたら、 昨夜作っておいた紅茶を冷蔵庫から取り出し タンブラーに注ぎ込む。 それだけを手に家を出る。 まだ午前6時前の外は、4月だというのに肌寒い。 いつもすれ違う白い軽トラックを横目に 朝露で濡れる草道をしばし登ると、 そこに海が見渡せる小さな公園がある。 少し息が切れた体を 小さなベンチに座らせて、持ってきた紅茶を流し込んだ。 「…はぁ。」 自然とため息が漏れてしまう。 都内での生活に疲れ、仕事ばかりで婚期も逃し、 気付けば三十路。 人