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フォロワーシップ

英雄がいる。誰にも成し遂げられないような偉業に挑み、成し遂げた人。成し遂げられなかったけど何かを残した人。羨まれ、憧れられ、あなたもこうなりなさいというお手本になる人。

そこには必ず裏方がいる。導き、諌め、時にプロデュースしながら世に出したキングメーカー。
彼らがいなければこれだけ世にアップルコンピューターが出回ることは無かったし、ゴッホの絵を現代の日本で見ることは出来なかったし、渡米前日に政府からの資金で豪遊した野口英世が千円札になることは無かった。
業にまみれた人の一生を劇的に、美しく、ストーリー立てて簡潔に。余分な部分は整形して辻褄を合わせ、それを引き立てる登場人物さえも用意する。

それはとても、オイシイ役回りだ。
強いていえば、自分の影が記録に残らない程度のことだろう。

前述の通り、未来の英雄の生殺与奪は裏方が握っている。
人並外れた功績を残すも、反英雄としてアウトローを極めるのも、すべてその手のひらの上。
インプットする情報を操作し、実物以上の価値と定義し、決定させるタイミングを調整し、覇道に転がる小石を動かしながら上手く躓かせて、それすらも起承転結に織り込む。

それは、なにかその英雄となる人のために尽くしたいなどという殊勝なものなのかもしれない。それは、とても素晴らしく充実した価値のある人生なのだろう。
しかし基本的にそれは的を得ていない。
裏方は楽しい。裏方には美学がある。誰にも称えられることはないのかもしれない。歴史には価値のない化石のひとつになるだけだとしても。

この役回りに帯びる魔力、知ってしまえばもう英雄業では満足できない。

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