距離を置きたい友人
ソーシャルディスタンス
コロナのおかげで、当たり前になってよかった。
会いたくない人、気が向かないお誘いから、離れるとき理由にできる。
そんな、いま会いたくない友人がいる。
高校の時に出逢ったAは、スレンダーな美人だ。
母子家庭育ちの私から見ると、父親が大企業に勤めて、センスよい物を身につけるAは、羨ましいことばかりだった。
家庭環境の良さを見せつけることもなく、性格も朗らかで優しく、高校時代は1番の親友だった。
Aと距離が空き始めたのは、お互いに大学生になり、Aに初めての彼氏ができたとき。
モテなかった私とは、話が合わなくなってた。しかし、私にも彼氏ができると、再び連絡を取り合うようになった。Aは、大学時代に頻繁に告白されるようになり、3人と付き合ったが、どの人とも長く続かなかった。
社会人になり暫くして、私は今の夫と付き合い始めた。Aもすぐに職場で新しい彼氏が出来た。
Aの場合、交際が2年以上続かなかった。相手が一人暮らしだと、入り浸り、転がり込んで、そのまま同棲。2年以内に破局するパターンを私が知る限り、3回していた。
その頃から、Aの話を聞くのが嫌になった。
2014年、Aが同棲していた5歳以上年上の彼と結婚をした。結婚式など何もしなかった。
嫌だったけど、共通の友人とお祝いをするため、新婚のAの家を訪問した。古びた2Kのアパート。夫婦でフリーランス、結婚指輪なく、始終一緒の新婚生活。旦那さんに会えなかったけれど、嬉しそうなAだった。けれど、生活は苦しそうだった。
2015年、私が結婚。結婚式をしなかったが、友人たちがお祝いをしてくれた。そのとき、久しぶりにAと会った。苗字が旧姓に戻り、フリーランスを辞め、都内の実家へ戻り、正社員に転職していた。
私はこのとき、Aに優越感を感じた。
2017年、私が育休から明け、復職した頃、Aは5歳年下の同僚と同棲していた。プロポーズをされて、相手の両親とも旅行に行ったりしていた。しかし、2年経たずに破局していた。
2020年5月、コロナで緊急事態宣言下、私は実家母の葬式を終え、相続関連の手続きに追われていた。友人たちとグループラインで母の訃報や近況を知らせた。
娘と同じ年の子を持つ友人Bが、第二子の妊娠中を報告してくれた。Bは第一子を不妊治療で授かり、第二子もやっとのことで授かった。暗く落ち込んでいた私には、嬉しい報告だった。
そして、Aも妊娠していると報告した。しかもAとBは同じ産婦人科であると。どいうこと?
Aはマッチングアプリで知り合った同い年の男性と今年の3月に知り合い、すぐに付き合った。5月に妊娠。入籍は9月で、出産は12月。
コロナ渦が分かってる状況で、入籍前に妊娠。彼と結婚出来なかったら、シングルで産むつもりだったそう。Aは、結婚と子どもに焦っていたらしい。母子家庭育ちの私は呆れた。子どもを持つことを、自分のステータスを上げる道具にしてるように感じた。
相手の男性も、子どもを持つ環境を整えず、出逢ってすぐなのに避妊しなかったことが気持ち悪い。それを許したAも。
そういうことを、あっけらかんとグループラインで報告してきた。
とにかく、むかむかした。
それから8月頃にまたAからラインが来た。
妊娠中のAは、6月に遠方の彼の実家へ飛行機で行った。Aの訪問と妊娠は彼の実家には、サプライズ報告だったと。そして、安定期になる9月に北海道へマタニティー旅行をするけど、大丈夫かな?と相談があった。辞めた方が良い理由をつらつらと説明した。しかし、結局、北海道へ行った。
ドン引きした。気持ちが決まってるなら、相談なんかしないでほしい。2人の時間が欲しいなら、タイミングを計ればよかったのに。Aが子どもを大切にしていると思えなかった。
そして、Aが北海道旅行をしているとき、Aと同じ産婦人科に通うBが切迫早産で入院した。
10月、Bが第二子を出産した。しかし、子に病気が見つかり、産婦人科から大きな医療センターに転院した。グループラインの報告で次々に心配と労いの言葉が飛び交った。Aもさらっとお祝いのコメントを残して、自分ももうすぐ産休と報告した。誰もAの産休の話題や妊娠には反応しなかった。Aは相変わらず、コロナ渦の都内を出かけ回っていた。
11月、Bの第二子が退院した。私は、1人でBと赤ちゃんに会いに行った。Bが家事をする間、赤ちゃんを抱っこさせてもらった。2人とも健康を取り戻した様子に安堵した。
そして、昨日の深夜、Aからラインが来た。子どもが逆子で治らず、明日から入院すると。明日と明後日の診察で逆子が治ってなければ、予定帝王切開になると。自然に産みたかった、周囲に帝王切開の経験者がなく、実感が湧かないと。
可哀想だと思った。いい気味だと思った。
他の友人にもラインをしたようだが、反応がなかったのかもしれない。私がすぐに返事を返すと、深夜までやり取りが続いた。
Aが無事に出産しても、私はすぐには会いにいかない。
私の娘がAと同じことをしたら、失望するから。私がAと会いたくないのは、親になったからかな。Aには自分を大事にしてほしい。そして、生まれてくるAの娘を愛してほしい。
高校のころ、Aのことがとても大切だった。歳を重ね、近づいたり、離れたりを何度かした。
私はAのことが嫌いではない。好きだった。Aの振る舞いが羨ましくて、私には真似できないので、妬んでるんだ。優しく、心から祝福出来ないなら会わない方がいい。
女の友情は、自在に変化する。崩れやすいが、立て直せることを知ってる。
Aが今の家族と2年継続できたら、お祝いを持って再開したい。それまでAとは距離を置く。
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