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二人乗り。

大人になったから、やっぱり車のデートは嬉しいし、助手席に乗りながら彼の横顔をみたりみなかったりするのは楽しい。電車で隣り合わせにきゅっと座るのも好き。好きな人と乗り物を共にすることは、行き先がどんなとこであっても構わない。関係性が深まるようで大好きだ。だけど、まだまだ恋に不慣れだった頃の私にとってそれはすごく緊張する行為だった。

高校生になったばかりの頃、当時付き合っていた男の子と二人乗りをして、私は両足を揃えて荷台に腰掛けていたことがある。漫画やセブンティーンがそれをモテ仕草だと言うんだから、私もそれを信じてやまなかった。

私を乗せた自転車は軽快に田舎の大通りを進んでいく。風で香る彼の香水にドキドキしながら、楽しい放課後を満喫していた。そんな矢先、恋する乙女史上とても悲しい事件が起きる。彼が力いっぱい漕ぐ自転車の後ろでぶらぶらしていた私の両足が、道沿いにあった飲食店の看板に大激突したのだ。ぼっかーんてすごい音がしたのに、彼は気づくこともなく自転車をこぎ続けている。

もう私は恥ずかしいやら痛いやら、この間抜けな出来事をどうやって昇華すればいいのか、今なら簡単に笑い飛ばすことができるけど、経験値の低かった私は、好きな人の前ではいつもネコかぶって大人しかったので、何も言うことができなかった。可愛くしてるつもりで両足揃えて後ろでちょこんとしてたつもりなのに、看板にぶつかるなんて、もう恥ずかしくてたまらない。大体、なんであの男の子はそんな大事件にも気づかず、のん気に自転車をこぎ続けていたのか。ああ、今思い出しても恥ずかしい。それ以来、雑誌のモテ仕草とか信じるのやめようって本気で思った。

今日は休みで街に出て、世間は夏休みで、自転車に二人乗りしたかわいいカップルを見かけて、そんなことを思い出したのでした。両足揃えて荷台に腰掛ける女の子をみて、私と同じような悲劇が起こらないことを心の中でこっそり祈った。初々しかった私もアラサーになってしまえば、自分のだらしなさを隠しきれなくなってきて、掃除と片付けが得意な人と付き合ったらきっと相性バッチリだわ、なんて開き直るほどに成長してしまった。今の私こそ、モテ仕草が必要だ…。なんて本当は、好きな人が私のこと好きでたまらなくなるような仕草だけわかったら十分なんだけど。


2017年08月21日

「サウダーヂな夜」という変わったカフェバーで創刊された「週刊私自身」がいつの間にか私の代名詞。岡山でひっそりといつも自分のことばかり書いてます。