市場を創るマーケティング:タクシーCM開始の裏側 | アスゼロ
アスエネ株式会社でプロダクト統括/Chief Product Officer("CPO"、最高プロダクト責任者)をしている渡瀬(@wataset)です。
6月の末、アスエネは、CO2見える化SaaS「アスゼロ」の初めてのマス広告として、こんなタクシーCMを作成しました。
「アスゼロ CO2見えてる?編」
「アスゼロ CO2見えてる?部長編 ロングVer」
今回は私が、アスエネのデジタルマーケティングの責任者として、「アスゼロ」のマーケティングにタクシーCMを作った理由とその紆余曲折について書いてみます。
・爆速成長中のスタートアップの、デジタルマーケティングの考え方が気になる人
・アスエネのデジタルマーケがどんなことをしているのか、知りたい人
などに読んでいただけると幸いです。
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■デジタルマーケのチームを率いる立場で考えていること
私は、インターネットビジネスで勝つために取り組める差別化の要素は「開発完了までの時間的な差別化」、または「ブランドとしての差別化」の2つしかないと考えています。
例えば、検索エンジン。Googleでの検索結果と、bingでの検索結果、その内容を表示しても、一般消費者にはどちらの検索結果なのかを判別することはできません。
「(イケてる機能が最初にあったので)そのサービスを使ってきた」、「そのブランドを好んで利用している」という部分にしか、差別化の要素は存在しないのです。
では、この「開発完了までの時間的な差別化」と「ブランドとしての差別化」、この2つの要素はなにで達成できるのかというと、前者は標準化によるスピード向上、後者は早期リリースと認知最大化だと考えます。
前者に対してはプロダクトの責任者として進める一方、後者、特に認知最大化にどう取り組んでいくか。
これが、今回のCMリリースの前提となった課題です。
■そもそも、マーケティングを行う意味とは?
マーケティングを行う意味を一言で表現するならば
その事業カテゴリーにおける“圧倒的”No.1事業を作ること
これに尽きます。
そして“圧倒的”No.1とは
事業カテゴリーにおける純粋想起での第一想起の獲得をしている状態
であると考えています。
例えば、私の古巣であるリクルートのサービス、ゼクシィ。ゼクシィは「第一想起の獲得」をしている事業のひとつです。
Googleトレンドで指名検索の量比較ができます。結婚に関連する検索ワードとして「ゼクシィ」と「結婚式場」の、2つの単語を調べると、「結婚式場」よりも「ゼクシィ」が検索量が多い、という結果がでます。世の中で、人々は「結婚を考えると、結婚式場を検索するよりも、ゼクシィを見る」という文化のあらわれになっています。
指名検索されるということは、結婚における「真っ先に思い浮かんだサービス(=第一想起)」である、ということ。「プロポーズされたら、ゼクシィ」というタグラインは本当に秀逸だな、と改めて感じます。
同様に、フリマの文化を作った、メルカリも圧倒的な認知となっていて、ビジネスの成長と連動するのは想像に難くないと思います。
「プロポーズされたら、ゼクシィ」と同じように、「CO2削減なら、アスゼロ」を獲得していくことが、アスエネ/アスゼロの、現状のマーケティングのゴールだと考えています。
■マーケティング施策の検討
では、指名検索されるために具体的にどんな手法を取るか。
指名検索されるということは、これまでのリード刈り取り施策であるリスティングやLPOなどから、より上段の潜在層にむけた施策検討になっていきました。潜在層の認知最大化のため、ある程度の規模があるマス広告へと絞っていきました。
軸ははシンプルに
①ターゲット
②インサイト
③ベネフィット
④Reason to Believe(=RTB)
の定義・設計から進めていきました。
①ターゲット
これはそのまま、いま「アスゼロ」を使ってほしいターゲットになります。「使ってほしい」は言い換えると「抱える悩み」にもつながります。ターゲットを起点に、出稿先をタクシー広告に決めました。
②インサイト
「抱える悩み」につながる潜在課題です。ターゲットがどんな場面で、どのようにしてこのサービスの必要さに気づくか。これがクリエイティブの中心部分になっていきます。
③ベネフィット
事前調査で判明していた、ターゲットからの「アスゼロ」への評価点をもとに、複数あるメリットの中から、最も強くターゲットに刺さる部分を訴求します。
④Reason to Believe(=RTB)
ベネフィットが達成できる根拠となる部分。「アスゼロ」のプロダクトの説明となります。
■アウトプットが決まるまで
実は、最初に企画提案されたクリエイティブは、かわいらしい子供のキャラクターが主人公となるものでした。未来性や社会に切り込むことのギャップも興味深い点があったのですが、今回はブランドの体現の観点から、その案は採用には至りませんでした。
CMの主人公は、ブランドのメッセンジャーとなりうる存在です。今回のCMで、メッセンジャーになってほしかったのは「アスゼロを体現する人」。未来や地球を考える挑戦心があり、スマートで、パートナーとしての信頼に足りうる人物像を描いた中で、検討を進めていきました。
もちろん、CMの設定には、常に伝わるスピードと既視感のせめぎ合いがあります。今やビジネスツールのCMはレッドオーシャンであり、見慣れた形は求心力を欠いていきます。そのジレンマを解消するために、掛け合い上の演出をつくっていただき、メッセンジャーの考え方が今回のキャスティングへとつながりました。
ちょっとしたこだわりですが、今回のピアス一つをとっても、こだわりが詰め込まれています。
このピアス、一見すると、さくらんぼのようにも見えますが、実は二酸化炭素(CO2)の分子模型になっています。今回の撮影にあたり、既製品ではなく、特別に作っていただいた一点ものになっています。
これに気づいたメンバーや知人からは、CO2の可視化を体現する小物として、好評をいただいています。(本当にこの商品つくってもいいのかもしれないと思うくらいです(笑))
■最後に
長々と、CM作成にあたって考えてきたことを書いてみましたが、このCMは取り組みのファーストステップにすぎない、と思っています。
CM制作にあたり、数多くの事例や企業CMや取り組みを調べてきましたが、1回のCMが全てを変えるようなものではないと強く感じています。ある企業は、クリエイティブ最適化に数年の月日をかけて成功の型をつむいだ企業もあれば、ある企業は動画マーケティングの取り組みによって顧客リテラシーが大きく変わり、うねりをつむぎながら成功に至る企業もあります。まだまだ、脱炭素、気候テック(クライメートテック)として、市場を僕らは作っていく企業として、向き合う課題がたくさんあります。
マーケティングの世界に、シルバーバレット(=課題解決の万能の武器)はありません。ただ、成功する者は、等しく正しい努力をしています。このCMをもとに効果の検証を重ね、「CO2削減なら、アスゼロ」と誰もが思う“圧倒的”No.1事業をつくっていくべく、マーケティングも更に、磨きをかけていこうと思っています。
開始数週間の現在も、クエリ量や訪問数、各種係数の分析に向き合っていますが、ファインディングスだらけで非常に面白いです。
アスエネでは現在、デジタルマーケティングに取り組んでくれる仲間を募集しています。
脱炭素や環境問題などの大きな課題に興味がある方、世の中に大きな影響を与えたい方、向上心を持って一緒にトライしてくれる方、ぜひご応募ください!“圧倒的”No.1事業を一緒につくっていきましょう。
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