綿生さんちの素朴な毎日/昼と夜の混ざる時間
「内の光と外の光が混ざる時間が一番あかんねん」
夕方五時、廊下に車椅子を停めて庭の景色を眺めていると、刻一刻と空が夕方から夜へと色を変えていく。街灯が灯り、庭の向こう側の原っぱから鋭い光が差し込んでくる。夕暮れは綺麗だけど、この時間が一番苦手だ。自然の光と人工の光が混ざり合って、目の明るさをどこに合わせればいいのかわからない。
「いや、なんか文学的な表現やん」
私の苦手発言を聞いて家族はこう答えた。
「え、文学的?そうかなあ?」
私はまんざらでもない。文学的だと褒められて嬉しくないはずがない。
「内の時間と外の時間って、文学的やん!」
「いや違うから、内の光と外の光やから」
「あれ?また聞き間違えた?」
「また間違えてるなあ」
家族は一日に三十回は聞き間違いをする。あんまり聞き間違えるので、間違えた先の内容が面白くて思わず笑ってしまう。
「内の時間と外の時間ってなに?」
「いや、なにかわからへんけど、だから文学的やなあって」
「じゃあ内の光と外の光やったら?」
「それはそれでまた文学的やん?」
やはり私はまんざらでもない。
比喩表現って、それっぽい雰囲気を作るためにするのではなくて、本人が真に感じられるものを他者に伝えるために言葉に変えて出来上がるものなのかもしれない。
「こんなふうに書いたらそれっぽいやろ」と本人も思って書いたような表現って、読み手からしたら意味が分からないことも多い。それはそもそも書き手がそう思っていないからなのかもしれない。
世の中はもう冬本番のようだ。庭のハナミズキは葉を散らし、椿の葉と名も知らぬ雑草だけが緑色に輝いている。先週から赤い椿が花開き始めた。緑と赤の組み合わせはクリスマスカラーのみあらず。日本の冬の美しさを感じている。
(いつかのまんじゅう)
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