もしかして妊娠したかも…?検査は?病院は?正しい知識を医師が解説【医師監修】
■「妊娠」ってどんなこと?「妊娠」したらどうすればいい?
「妊娠」と言えば、「赤ちゃんができること」と考える方は少なくないはず。妊娠は男女がセックスすることによって成立するものですが、健康な男女が避妊なくセックスしたとしても妊娠する確率は20%ほどと言われています。
一方で、きちんと避妊したつもりでも射精と排卵のタイミングが合ってしまえば妊娠が成立してしまうことだってあるのです。妊娠を希望していない時期に妊娠してしまうと、その後の人生にも大きな影響を与えることになります。
また、妊娠は女性の身体に大きな負担をかけるもの。子宮外妊娠や流産など妊娠には様々なトラブルもあります。妊娠検査薬で陽性反応が出た場合は、できるだけ早く産婦人科などを受診して身体の状態を調べなければなりません。
そこで今回は、妊娠のメカニズムと妊娠したときにとるべき行動について詳しく解説します。
■妊娠とは?妊娠のメカニズムを知ろう!
「妊娠=赤ちゃんができること」と考える方は多いと思いますが、どのようなメカニズムで妊娠が成立するのか詳しく知らない方も多いはず。まずは、「妊娠」がどのような過程を経て成立するのか詳しく見てみましょう。
・妊娠のメカニズムとは?
妊娠は「赤ちゃん」ができることです。ですが、医学的には妊娠は<セックスによって卵子と精子が受精し、受精した細胞が子宮内膜に着床する現象>のこと。
その細胞が順調に子宮の中で成長すれば約10か月で赤ちゃんと対面できることとなります。
つまり、必ずしも「妊娠=赤ちゃん」ではないのです。その複雑なメカニズムについて解説します。
・受精は奇跡の連続?
妊娠が成立するには、卵子と精子が出会って受精しなければなりません。
セックスによって膣内に射精された精液には多数の精子が含まれています。膣内に放たれた精子は泳ぐように子宮内に入り込み、卵子が待つ卵管膨大部を目指します。精子の大きさはわずか60㎛。
精子にとって膣から卵管膨大部までの道のりは果てしなく長いもの。途中で多くの精子が脱落していきます。そして、無事に卵子にたどり着き、最初に卵子の中に入り込めた1匹の精子のみが受精することができるのです。
また、精子は毎日放出することができる一方、女性の卵子が排卵するのは月に一回。しかも、排卵後の卵子の寿命は約24時間。その間に精子が到達しなければ受精することはありません。つまり、受精が起こるには、排卵のタイミングと十分な精子が必要なのです。
・子宮へ移動~着床へ
卵子と精子が合体した受精卵は、どんどん細胞分裂を繰り返しながら成長していきます。そして、約1週間かけて卵管内をゆっくり移動し、子宮内へ。
子宮内に入り込んだ受精卵は子宮内膜と呼ばれる組織に根を下ろします。この現象を「着床」と呼び、着床が無事に完了して初めて妊娠が成立することになります。
つまり、妊娠とは受精卵が着床することを意味するのです。
・妊娠すると身体にはどんな変化が…?
無事に着床が成立すると、妊娠を継続するため身体の中では女性ホルモンバランスの急激な変化が引き起こされます。エストロゲンもプロゲステロンも急激に分泌量が増えるのです。
エストロゲンは「美のホルモン」とも呼ばれ、肌や髪のコンディションを整える作用を持ちますが、プロゲステロンは皮脂の分泌を促したり、水分をため込んだり、体温をアップさせる作用を持ちます。
このプロゲステロンの分泌量が増えることで、ニキビやむくみなどが目立ちやすくなり、さらに微熱が続くことでだるさや眠気、イライラ感などの症状が引き起こされるのです。
また、妊娠が成立して3週間ほど経つと食欲不振や吐き気が生じる「つわり」が現れる方も多いとされ、多くの女性は体調の悪さに悩まされます。おっぱいの張りや下腹部の違和感を覚えることもあるでしょう。
■生理が来ない…妊娠はどうやって確かめる?妊娠していたらどうすればいい?
思春期は生理周期が乱れがちになるものですが、一般的には生理予定日から一週間を過ぎても生理が来ない場合は妊娠している可能性が考えられます。
きちんと避妊していたのに生理が来ない…こんなときはどうすればよいのか詳しく見てみましょう。
・まずは妊娠検査薬で調べよう!
思い当たることと、生理が一週間以上遅れたときは妊娠検査薬で調べてみましょう。妊娠検査薬は薬局やドラッグストア、インターネット通販などで購入することができます。
現在では市販の妊娠検査薬も精度が極めて高いため、生理予定日一週間後に使用すればほぼ確実な結果が分かります。また、自身で検査キットに尿をかければ数分で判定が出るため、いきなりの婦人科受診に抵抗がある方も無理なく検査をすることができます。
ただし、上述した通り思春期は生理周期が乱れやすいものです。妊娠検査薬が陰性の場合でも、その後も生理が来ない時は再度検査するようにしましょう。
・もし妊娠していたら…
妊娠検査薬で陽性が出たら、できるだけ早く産婦人科で検査を受けるようにしましょう。というのも、妊娠検査薬は子宮外妊娠でも陽性反応が出るから。子宮外妊娠は決して頻度は高くないものの、放っておくと卵管破裂などを起こして命に関わることもあります。
正常な妊娠か否かは超音波検査で子宮内に赤ちゃんの部屋(胎嚢)が確認できることによって判断できます。
また、望まない妊娠の場合もできるだけ早く処置をした方が女性への精神的・身体的な負担は少ないとされています。未成年の方、未婚の方はご両親とパートナーに打ち明けて、できるだけ早く病院を受診するようにしましょう。
とはいえ、親やパートナーにすぐに切り出せる方ばかりではありません。陽性だったことを親やパートナーに言いにくい場合、保健室の先生やNPOの方など知識を持つ大人に相談するのもひとつの手。この先のこと、体調不良のこと、出産費について親身に相談に乗ってくれるだけでなく、必要に応じて適切な関係機関を紹介してくれます。
産婦人科に行ったあとの選択肢は「生んで自分で育てる」、「生んで他の人に育ててもらう」、「生まずに中絶する」の3つ。それぞれのメリット、デメリットは以下の通りです。
<自分で育てる>
体力のある若いうちに出産育児に臨めるのは大きなメリットと言えるでしょう。デメリットは周囲が遊びや趣味など自由な時間を謳歌するなか、育児に時間を取られること。また金銭的に余裕がないことが挙げられます。
<他の人に育ててもらう>
生んだ子どもと養親との間で特別養子縁組制度を利用する場合、家庭裁判所が認めた夫婦の元で実子として育てられることになります。子どもを健全な育成環境の中で育ててもらえるメリットがある反面、戸籍上の親子関係がなくなってしまううえ、自分自身で育てることができない寂しさがあるでしょう。
<生まずに中絶する>
子どもを育てる基盤が整っていない、叶えたい夢があるなどの場合は生まずに中絶することも選択肢のひとつに挙がります。しかし中絶は精神的にも肉体的にも負担が大きいもの。痛みや出血だけでなく、罪悪感から心が不安定になる方もいます。中絶にかかる費用は病院によって異なりますが、妊娠11週6日までの「初期中絶」であれば日帰りの手術で帰宅できることがほとんどで10~15万円が相場です。
妊娠12週0日から21週6日までは「中期中絶」と呼ばれ通常の出産と同じように分娩による中絶を行います。その場合にかかる費用は20万円以上。また、妊娠12週以降は死産届を役所に提出すると共に、別途火葬と埋葬が義務付けられています。中絶手術を受ける場合、母体への影響、そして費用面からもできる限り早い決断をすることが大切です。
・望まない妊娠を防ぐには…?
望まない妊娠は女性の心と身体に大きなダメージを与えます。場合によっては人生設計が変わることもあります。「自分は大丈夫」だと思っていても、セックスする限り誰にでも妊娠する可能性はあるのです。
その可能性を最小限に抑えるには、正しい方法で避妊することが大切です。中でもピルは正しく服用すれば避妊失敗率はわずか0.3%とのこと。理想的な使用方法でのコンドームによる避妊の失敗率は3%とされていますので、より高い確率で避妊できることが分かります。
また、セックスの途中でコンドームが破れた…など万が一避妊に失敗した場合は、妊娠を緊急的に予防するための「アフターピル」を服用するのがおすすめ。
無防備なセックスをしてから72時間以内に服用すれば妊娠を阻止できる可能性が高くなるため、「お守り」として覚えておきましょう。
ただし、アフターピルを入手するには医師の診察と処方が必須です。未成年の方はご両親に相談してからの受診をおすすめします。
■妊娠は奇跡の連続!でも望まない妊娠を防ぐには…?
妊娠は、精子と卵子が出会って受精し、子宮内膜に着床することによって成立します。その過程は非常に複雑で、妊娠はタイミングなど様々な奇跡が重なって成立するものなのです。
しかし、セックスのタイミングさえ合えば誰でも妊娠する可能性はあります。望まない妊娠を防ぐには、正しい避妊を心がけるようにしましょう。
また、生理が一週間以上遅れた場合は妊娠検査薬を使用し、陽性判定が出た場合はできるだけ早くご両親やパートナーに打ち明けて産婦人科で検査を受けることが大切です。
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・医師監修:成田亜希子先生
一般内科医として幅広い分野の診療を行っている。
保健所勤務経験もあり、感染症や母子保健などにも精通している。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会、日本健康教育学会所属。