中山昭宏社長がハリー・キューウェル監督契約解除の経緯を説明。後任はCFGとともに選定、強化体制も見直しか【無料記事】
中山社長がキューウェル監督契約解除について説明
横浜F・マリノスは7月16日、ハリー・キューウェル監督との契約解除を発表した。
今季のJ1リーグでは初の監督交代であり、クラブとしても16年ぶりの途中解任。選手たちも「ニュースで知った」とキューウェル監督の契約解除に驚きを隠さず、チームに激震が走った。
同日午後には強化責任者を兼ねる中山昭宏代表取締役社長が報道陣の取材に応じ、「ピッチ上で我々の選手が生き生きと、我々横浜F・マリノスのアタッキングフットボールをやっているか、そんなサッカーをどれだけ見られたかと思っていただくと、やはりそうではないサッカーが、この上半期にはあった」とキューウェル監督との契約を解除するに至った背景を説明した。
キューウェル監督からの最後のメッセージとは
マリノスは6月下旬からリーグ戦で16年ぶりの4連敗を喫し、直近の鹿島アントラーズ戦では勝利したものの12位と低迷が続く。中山社長によれば今回の契約解除は鹿島戦の結果とは関係なく、それ以前から検討されていたものだという。
「ACLを準優勝で終えて、いざJリーグに集中するとなった時に、実はそれより前のJリーグでも勝ち方としてはあまり良くない部分があったので、少し心配して見ていた時期がちょうどACL終わった頃です」
「我々が目指したいものの真ん中に『進化』というものがありますが、これは簡単なようで簡単ではなかったというのが今回わかりました。アンジェ(・ポステコグルー)の時に私はいなかったのですが、当時は『何をすべきか』という共通理解がチーム全員にできていたと聞いています。今回のハリーの場合は、そこ(やるべきことの共通理解)が細かく落としきれていないというか、スーパースターの彼だったら簡単にできるような領域がなかなか選手に伝わらないところも多少あったのかなと思います」
強化責任者である中山社長やチーム統括本部がコミュニケーションを取る中で「マリノスのアタッキングフットボールができない理由はACLの疲れからきている部分と、そうではない部分がある」と認識し、4連敗をした直近の約3週間の中で監督人事に関する議論が増えていった。そして、鹿島戦を終えた7月15日にキューウェル監督と面談し、契約解除を言い渡すこととなった。
「我々のアタッキングフットボールをやりきれてないところに課題はありますし、その課題をはっきりさせて、整理をして、修正を入れていくことが必要だと考えております。キューウェル新監督をお呼びすると決めた時に大事にしていたことは、まず我々のアタッキングフットボールを受け入れて理解し、継承してくれること。2点目はそれをあるエッセンスを持ってさらに進化をさせてくれること。3点目はそれによる結果、高みを目指す。つまり我々としては常に勝っている集団になるということを選定する条件にしてまいりました。
今振り返ってみると、キューウェル監督はアタッキングフットボールを一生懸命理解しようとしてくれていましたし、彼なりのエッセンスを入れようとしてくれていたと思います。ただ、その(条件を)1つひとつを見ると、我々クラブが期待していたところには少しずつ届いていない現状があると認識をしております。逆に言うと、この足りていない少しの部分をきちんと補えれば、我々のアタッキングフットボールはまたすぐ戻ってこられるとも考えております。そんな中で、今回や後任としてヘッドコーチだったジョン・ハッチンソンに暫定監督をお願いするということが決まりました」
クラブの決定を冷静に受け止めていたというキューウェル監督は、中山社長に対して「マリノスには今後も素晴らしいクラブであり続けてほしい」という言葉と共に、以下のようなメッセージを残したという。
「上手い選手が次のステップへ行くためには、個々がそのための努力をしなければならない。誰かの真似をするのも大事だが、自分の努力によって次の世界が見えてくる。自分はそのようにやってきた。そして、今のスカッドには将来性のある若手がいる。その選手たちをきちんと育ててほしい」
後任監督は誰に? 強化体制の見直しにも言及
キューウェル監督の後任はシティ・フットボール・グループ(CFG)とともに選定していく予定だ。すでにCFGは適任者探しに動き始めており、彼らからの候補リスト到着を待ったうえで、マリノス内部で誰を招へいするのか検討および最終決定する。中山社長は「オーストラリア人にこだわるつもりはない」と明言しており、他の外国籍も含めて幅広くアタッキングフットボールの後継者となりうる人材の選定を進めていく。
重視するのは、やはりマリノスのフィロソフィーを理解したうえで、ピッチ上のフットボールとして実行に移せるかどうか。中山社長は「監督や選手、コーチが我々のクラブに入ってきていただく中で、やはりフィロソフィーはすごく重要だと今一度感じた次第です。そこをきちんと理解し、実行できる方が、マリノスファミリーに入っていただけるのだという反省があります」と述べる。
そして、社長が責任者を兼任する現行の強化体制の見直しについても言及があった。中山社長は「例えばSD(スポーツダイレクター)のポジション。その課題認識はしていますし、手を打とうということも決めています。いずれどこかのタイミングでお話できるかと思います」と述べ、現場とフロントをつなぐ新たな強化責任者を置く可能性を示唆していた。なお、すでに一部で報道されている西野努氏(元浦和レッズテクニカルダイレクター)の入閣については「現時点で話せることはない」としている。
中山社長の取材対応は約40分間に及んだ。本記事では速報版として一部にしか触れられていないため、補強の可能性について言及した部分などは詳報版として後日掲載する予定となっている。