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ACLエリート・上海海港戦を無駄にするべからず。改善と成長の絶好機…マリノスはかつての指揮官と対峙し「とにかく勝ちにこだわる」【無料記事】

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※トップ写真は横浜F・マリノス提供。


マリノスはACLEリーグステージ最終節で上海海港と対戦

 横浜F・マリノスは2月19日、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)リーグステージ第8節で上海海港と対戦する。

 試合に先立って2月18日には公式記者会見が行われ、スティーブ・ホーランド監督と山根陸が出席した。

(提供:横浜F・マリノス)

 前節の上海申花戦に勝利したことで4位以内でのリーグステージ突破が決定。アウェイでの上海海港戦は一種の消化試合とも捉えることができる。厳しい連戦の最中のため、先発メンバーの大幅な入れ替えも視野に入れるべきだろう。

 だが、ホーランド監督は起用可能なフィールドプレーヤー全選手を遠征メンバーに含めて上海に乗り込んだ。ただの「消化試合」にするつもりはないのだろう。練習もチームづくりのための貴重な時間と捉え、戦術の練度向上や課題の改善に取り組みながら中国リーグ王者との一戦に臨もうとしている。

 記者会見の冒頭でマリノスの新指揮官は「我々が求めているのは自分たちのサッカーをすること。いいパフォーマンスをして、リーグステージをしっかりといい形で終え、ポジティブな結果を残して帰りたいと思っています」と力強い意気込みを述べた。

(提供:横浜F・マリノス)

 もちろん「日本に帰ってから、日曜日、水曜日、土曜日と連戦が続くため、もちろん選手たちの起用方法を考えなければいけない」と慎重なメンバー選びが必要なことを認め、「怪我だけはさせたくないので、それは我々にとって明日のチャレンジになる」とコンディションに配慮した選手起用を示唆した。

連戦でパフォーマンスを落とさず戦い抜くには?

 では、連戦におけるターンオーバーの必要性などについて、具体的にはどのように考えているのか。ホーランド監督は2月7日の練習後に報道陣の取材に応じた際、13年前の敬遠を引き合いに出して次のように語っていた。

「チェルシーのアシスタントコーチを務めていた2012年のことです。私たちは日曜日にトッテナムとのFAカップ準決勝を戦いました。その後、水曜日にUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)の準決勝第1戦でバルセロナとのホームゲームがあり、続く土曜日にアーセナルとのアウェイゲーム、そして火曜日にバルセロナとの第2戦のアウェイゲームが組まれていました。たった11日間のうちにトッテナム、バルセロナ、アーセナルという強豪クラブと合計4試合をこなしたのです。

いずれの試合でも選手たちをリフレッシュさせなければなりませんでした。試合を重ねる度に『最高のチームだ』と称えられたとしても、同じメンバーで戦い続ければどうしたって4試合目には全員が完全に疲れ切ってしまいます。なので、我々はアーセナル戦でスタメンを9人変更するという決断を下しました。一方でそれ以外の3試合はほぼ同じメンバーで戦いました。重要なのは目の前の試合に対して適切なメンバーを選ぶこと。そうしながらチームの柱を強靭なまま維持することは非常に難しい挑戦になります」

 当時のスケジュールと結果は以下の通りだ。

2012年4月15日(日) FA杯準決勝 vsトッテナム(A) ◯5-1
2012年4月18日(水) UCL準決勝第1戦 vsバルセロナ(H) ◯1-0
2012年4月21日(土) プレミア第35節 vsアーセナル(A) △0-0
2012年4月24日(火) UCL準決勝第2戦 vsバルセロナ(A) △2-2

 欧州屈指の強豪クラブとの4連戦を2勝2分で切り抜けたチェルシーはプレミアリーグこそ6位に終わったものの、FAカップとUCLを制覇。見事に二冠を成し遂げた。とはいえどんなにタフな選手たちを揃えていたとしても、同じメンバーで戦い続けることは不可能だ。

 チェルシーがアーセナル戦で9人を入れ替えたように、今のマリノスであれば帰国して中3日で挑むJ1リーグ第2節のサンフレッチェ広島戦を意識してフレッシュなメンバーを起用するのではないだろうか。ACLEで決勝トーナメント進出が確定しているからこそ、大胆な変更に踏み切りやすいとも言える。

山根陸は恩師と再会へ「より成長した姿を見せたい」

(提供:横浜F・マリノス)

 上海海港戦で今季初先発のチャンスを与えられる可能性がある山根は、記者会見で「リーグステージ最後の試合ですけど、しっかり勝利で終えられるようにチーム全員で準備したい」と気を引き締めていた。

 対戦相手を率いるケヴィン・マスカット監督は、山根にとってプロデビューの機会を作ってくれた人物でもある。マリノスで2022年のJ1リーグ優勝を共に祝った恩師との再会を喜ぶだけでなく、ピッチの上で成長した姿を見せた上で勝ち点3を日本に持ち帰るつもりだ。

(提供:横浜F・マリノス)

「(マスカット監督は)僕が1年目の時、プロに入った時の最初の監督だったので、とてもお世話になりました。彼からたくさんのことを学んで、本当に色々な経験をさせてもらったのですごく感謝しています。こうして時間が経ってまた対戦できるのはとても嬉しいですし、より成長した姿を見せたいと思っています。ピッチに入ったら相手が誰だろうと、どこだろうと関係ないので、しっかりチームとして勝ちにこだわって戦いたいと思います」

 ホーランド監督も「たくさんの試合がある中で怪我をどれだけ防げるか」をポイントに挙げつつ、山根と同じように「とにかく勝ちにこだわってやっていきたい」と語った。

(提供:横浜F・マリノス)

 他の選手たちも上海海港戦を無駄にするつもりはない。皆一様にチームとしての改善を示しつつ、次のチャンスにつなげるようなプレーを見せてホーランド監督にアピールしようと燃えている。

 2月15日に行われたJ1リーグ開幕戦のアルビレックス新潟戦に途中出場した鈴木冬一は「自分にとってリーグステージ突破が決まっていることに全く安心はなくて、本当にスタメンを獲ってやるという気持ちでやらなければいけない。心に魂を宿して戦えたら」と上海海港戦への熱い想いを口にした。

(撮影:舩木渉)

 左ウィングバックのポジション争いで絶対的な地位を築く永戸勝也から定位置を奪うためにも上海海港戦は重要な機会となる。もし長い時間プレーすることができれば、ライバルとは違った特徴をアピールしてマリノスの勝利に貢献したいところだ。

 今季開幕から先発出場の機会がない選手はまだたくさんいる。そのうちの1人、天野純も上海海港戦に向けて「もしかしたら普段出ていない選手にチャンスがあるかもしれないし、そこでインパクトを残すことがチームの底上げにつながる。意識してやりたいと思います」と自らの存在を必死にアピールして爪痕を残すつもりだ。

(撮影:舩木渉)

「できるだけ上の順位で、1位で(決勝Tに)行きたいし、目の前の試合は落としたくない。最後までしっかり結果を出して次のステージに行けたら」と渡邊泰基が言ったように、チーム内での競争を活性化しつつ、上海海港に勝って東地区の首位のまま決勝トーナメントへ。クラブにタイトルをもたらしてくれたかつての指揮官の前で圧勝し、「マリノス変わらず強し」を示して帰国の途につきたい。

 試合は2月19日の日本時間21時(現地20時)にキックオフ予定で、DAZNにて独占ライブ配信される。

上海海港のニューストピック

練習試合に勝利するも…

 ACLエリートの前節・ヴィッセル神戸戦とマリノス戦の間に中国2部の上海嘉定会龍FCと練習試合を行い、上海海港は4-2で勝利を収めた。前半は中国代表GKヤオ・ジュンリンを除く中国人の主力選手や新加入のレオナルドらがピッチに立ち3得点を挙げるも、メンバーを入れ替えた後半に2失点を喫したという。

©2025 Asian Football Confederation (AFC)

 今季は初戦となった中国スーパーカップと神戸戦の2試合で計7失点し、練習試合でも2部クラブに2失点と守備に大きな課題を抱える。現地メディアはマスカット監督が率いるチームが昨年から多くの失点を許していることを問題視し、ACLEのラウンド16に進出できる可能性こそ残っていながらマリノス戦も厳しい戦いになることを予想していた。

主力の外国籍選手に新たな負傷者が

 中国メディア『シナ・スポーツ』によれば、2月16日の練習中にガブリエルジーニョが負傷したとのこと。同選手はポルトガル1部のモレイレンセから今季新たに加入したブラジル人のウィンガー。中国スーパーカップで2得点を奪い、ヴィッセル神戸戦にも先発出場するなど新外国席選手の中で最も優れたパフォーマンスを披露していただけに戦線離脱は大きな痛手となる。

 また、右膝の痛みに悩まされてオフシーズンに手術を受けたウー・レイはまだ復帰に至っていない。ディフェンスリーダーのティアス・ブラウニングもコンディション不良によりプレータイムの制限が必要で、レオナルドは過去のACLでの出場停止処分が明けておらずマリノス戦はプレーできないなど、主力に多くの欠場者がいる。

武漢三鎮から新たなセンターバックを獲得

 2月18日に武官三鎮から新疆ウイグル自治区出身の中国代表DFウミジャン・ユスプの加入が決まった。『transfermarkt』によれば移籍金は600万人民元(約1億2500万円)だが、中国メディアの報道では上海海港が出したオファーの総額は1000万人民元(約2億円)を超えているという(加えてDFヘ・グアンが武官三鎮へ期限付き移籍。給料は上海海港が全額負担)。

 もし報道の金額が事実であればウミジャン・ユスプの移籍金は今冬の中国人選手に支払われた最高額となる。これまでの記録は北京国安がDFウー・シャオコン(元清水、京都。日本での登録名は「呉少聰」)を獲得するためトルコ1部のイスタンブール・バシャクシェヒルに支払った680万人民元(約1億4000万円)だった。

 ウミジャン・ユスプは守備陣の立て直しを図るうえでキーマンとして期待される20歳のセンターバック。やや小柄ながら中央だけでなくサイドバックもこなせる機動力と技術を兼ね備え、中国国内では最も将来を期待されるDFの1人として知られる。昨季後半は頭蓋骨骨折のため長期離脱を強いられたが、今年1月に中国代表に初招集されて合宿に参加するなど、すでにプレー可能な状態まで回復している。なお、選手登録が間に合っていないため19日のマリノス戦には出場できない。

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