見出し画像

『源氏が勝つとは限らない』元号転生バトルロイヤル

「俺は平教経。お前は園城寺のものか。お前らがどんな謀を企んでも見逃さない。俺には不思議な力があるからな。今日のことは何年も前から知ってたよ」

燃え盛る館の中より出てきた男がそう語った。男の眼は半分真っ赤だった。

「なんだ。お前の眼も片目が真っ赤じゃないか。もしかして同類か。俺の不思議な力も見透かされているな。なんかスミレが話したがってるから替わるわ」

教経はそういうなり、真っ赤な片目がみるみるうちに両目共真っ赤になった。

篤胤も両目が真っ赤に切り替わる。

「私はスミレ。あなたはどの時代から来たの」

「俺は篤胤。どこからって未来だよ」

「未来からってのはわかる。どの時代から来たって事。あなたのいた世界の元号を教えてよ。私は大正。あなたは?」

「令和」

「レイワ?知らない。私より未来?」

「80年くらい未来だと思う」

「ずいぶん未来じゃない。あなたも以仁王の令旨や挙兵はもう知ってたんでしょ。なんでそんなアブナイ時に園城寺なんかにいたのよ」

「そんな細かい歴史のことなんて全部覚えてないよ。分かるわけないじゃないか」

篤胤はスミレの問いに返すも、吾妻鏡に書いてあったじゃないとか言い始めた。

それからもあれこれ言っていたが、急に片目が白くなりスミレはしゃべらなくなり教経が戻ってきた。

「まあ話もお互いにして、それなりに理解はしたようだな。これから俺は以仁王と源頼政を追いに行く。目指すは興福寺ってのもわかってるんでね」

「あんたはこのまま見逃すことにするよ。こっちも急いでるんでな」

そう言って教経は少し離れたところにいる馬へ駆け寄り、さっと乗馬して去っていった。

※創作大賞2022 応募作品 TOPページはコチラ☟


いいなと思ったら応援しよう!