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千葉篤胤の転生記_11~治承・寿永の乱

「俺は平教経。お前は園城寺のものか。お前らがどんな謀を企んでも見逃さない。俺には不思議な力があるからな。今日のことは何年も前から知ってたよ」

燃え盛る建物の中より出てきた男がそう語った。男の眼は半分真っ赤だった。

「なんだ。お前の眼も片目が真っ赤じゃないか。もしかして同類か。俺の不思議な力も見透かされているな。なんかスミレが話したがってるから替わるわ」

教経はそういうなり、真っ赤な片目がみるみるうちに両目が真っ赤になった。篤胤も日胤に願い、両目が真っ赤に切り替わる。

「私はスミレ。あなたはどの時代から来たの」

「俺は篤胤。どこからって未来だよ」

「未来からってのはわかる。どの時代から来たって事。あなたのいた世界の元号を教えてよ。私は大正。あなたは?」

「令和」

「レイワ?知らない。私より未来?」

「80年くらい未来だと思う」

「ずいぶん未来じゃない。あなたも以仁王の令旨や挙兵はもう知ってたんでしょ。なんでそんなアブナイ時に園城寺なんかにいたのよ」

「そんな細かい歴史のことなんて全部覚えてないよ。分かるわけないじゃないか」

篤胤はスミレの問いに返すも、吾妻鏡に書いてあったじゃないとか言い始めた。それからもあれこれ言っていたが、急に片目が白くなりスミレはしゃべらなくなり教経が戻ってきた。篤胤も片目が白くなり日胤が戻ってきた。

「まあ話もお互いにして、それなりに理解はしたようだな。これから俺は以仁王と頼政達を追いに行く。目指すは興福寺ってのもわかってるんでね」

「あんたはこのまま見逃すことにするよ。こっちも急いでるんでな」

そう言って教経は少し離れたところにいる馬へ駆け寄り、さっと乗馬して去っていった。

教経がいなくなった今、日胤しかここにはいない。

(私から篤胤に伝えたいことがあります)

(いま篤胤は胤通以外に私へと憑依できました。これは私が半ば強引に呼び寄せたからできたことではありますが、篤胤自身がコツを掴んで鍛錬すれば他の兄弟に対してもできる事なのです)

(日胤はなんでそんなことが分かったの?)

(私には少し未来が視えるのです。微かなときもあれば、くっきりしたときもあります。篤胤と初めて遭ったときに、篤胤が私を含め兄弟たちのあいだを飛び交う姿が視えたのです)

(私はこれから以仁王の元へと向かわなければいけません。それも私自身の視えた未来ですから)

(篤胤、さようなら。私の兄弟たちにありがとうとお伝えくださいませ)

日胤がそう言い終わるやいなや、篤胤は一瞬記憶が途切れ、また胤通の意識下へと戻った。

以仁王の挙兵はものの一週間程で鎮圧された。源頼政は興福寺までたどり着けず平等院で自害し、以仁王は平等院を超えるも興福寺へと向かう途中で討ち取られた。

以仁王を含め多数死んだが日胤の亡骸はどこにも見当らなかった。

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