ジパング割引の往復乗車券廃止に伴う対応
本日、ジパング割引の2026年3月以降の対応が判明した。
https://www.toretabi.jp/media-download/26812/
ただ、ジパング割引についてあまりなじみのない方が多いと思うので、そこから説明する。
ジパングというのは、端的に言うと65歳以上の人が年会費3840円を支払うことにより、年20回、JR線の運賃・料金が3割引になるという制度だ。
東京~新青森のような片道2万円以上するような区間であれば片道1回利用するだけで年会費の元がとれるので、加入者は大変多い。
そして、そのジパング割引の適用方法が、会員手帳にある申込用紙をみどりの窓口で提出する方式(または話せる指定席券売機でも可)となっており、今でもネット予約で完結できる方式に移行できないため窓口混雑の原因ともなっている。
そして、この3割引を適用する条件が、
「JR線を片道・往復・連続で201km以上ご利用の場合」
に、年20回のカウントを1回使う形で使用することができる。この条件が、単純なようで難しい。
例えば、
①東京~松本を片道利用
→235.4kmなので利用可能
②東京~松本を往復利用、2泊3日の行程
→距離的には基準を満たすが、東京~松本は大都市近郊区間相互発着のため、往復乗車券の有効期間は2日間。この行程で旅行するには回数を2回消費する必要がある。だが、乗車券を北松本に伸ばすことにより大都市近郊区間相互発着が外れて往復で有効期間6日の乗車券になり、回数1回で利用可能となる。
③東京~茅野を片道利用
→195.2kmなので利用不可能。ただし、東京~上諏訪(202km)に伸ばすか、東京~茅野+茅野~青柳(計204km)の連続乗車券とすれば距離の規定を満たすので利用可能。ちなみに、大抵は1駅伸ばして上諏訪までにすると思われるが、この場合は青柳までの連続乗車券にした方が少し安い。
④東京→松本、甲府→東京(松本~甲府は別途バスで移動)
→行程がつながっていないのでる利用不可能。ただし、甲府→東京→松本の連続乗車券を発券し、連続2から使う分には問題ないので、そのようにすれば利用可能。
利用可能かどうかの基準が微妙な例をいくつか挙げたが、2026年3月の往復・連続乗車券廃止により、ジパング割引も201km以上・片道のみで回数を1回消費という風に改定されるのではという噂があがっていた。
私の考えとしては、さすがにそこまで改悪はできないと思うので、現状の往復・連続という考え方はジパングでも残し、現状維持ではないかと思っていた。ただ、往復乗車券や連続乗車券は存在しないのに、考え方だけ残すというのはスマートではないのでもう少し良い案はないか、と考えていた。
そこで発表された新たな利用条件には驚いた。
「片道101km以上で利用可能。ただし、1回のカウントで2行程まで申込可能」
これはすごい。これなら確かに、往復や連続という考え方を残さずに、現状とほぼ同じ条件で利用ができる。
先ほど挙げた例を順に見ていく。
①については何の問題もなく利用可能。
②については、往復乗車券の有効期間を考える必要がなく、それぞれ使用する日の乗車券を片道で買えば良いので北松本まで伸ばす必要もなくなる。1駅伸ばすと値段が上がることもあったので改良。
③については片道101km以上の利用であれば利用可能になったので、距離を伸ばす必要もなくなったので改良。
④については、区間が全然関連がない片道2枚でも出せるようになったので、特に連続2から使うような小細工も必要なくなったので改良。
と、大半の利用パターンで改良になっている。特に、大都市近郊区間が長野や穂高に拡大されるので、乗車券を北松本まで伸ばして有効期間を延ばすという小技がやりづらくなるのが心配されていたが、そこをしっかりカバーする改良となった。
では、逆に改悪となったパターンはあるのだろうか。考えてみたが、
●東京~浜松~天竜川のように、250km+5kmのような距離の行程で連続乗車券を使っていた場合くらいだろうか。5kmの浜松~天竜川の部分に関して割引が効かなくなる。130km+70kmのような連続乗車券の方がマイナス額は多いが、あまりそういう利用をする人は見かけない。連続乗車券の利用でよくあるのは、優等列車で目的地を通過して、少し戻るといった行程だろう。東京からだと、東京→名古屋→三河安城の利用でよく登場する。しかし、ジパング割引には東海道新幹線利用に関する制約があり、のぞみ号を利用する場合は特急券に割引が適用されない。なので、三河安城に行く場合はひかり・こだまを使うので名古屋から戻る連続乗車券にはならない。
そのため、通過した駅を少し戻る連続乗車券の割引が効かなくなるという人もあまりいないだろう。また、割り引かれない額も少額なので大した値上げではない。また、大抵の人は行ったら帰ってくるので、元々浜松の往復としてジパング1回分のカウント使用で購入し、浜松~天竜川に関しては割引なして購入する人が大半だろう。
ということで、改悪が心配されていたジパング割引はまさかの改良という着地点に落ち着いた。上記の②~④のジパング適用が微妙な例は、ある程度仕組みを分かっていないといけないので、係員も少々苦労していたと思うが、今後は余計なことを考えずに済むようになるだろう。
また、同様に距離によって制約がある学割やレール&レンタカーも今後どうなるのか話題だ。学割もジパングと同様、101km以上で1回に2行程まで購入可能になりそうだが、学割は近鉄や東武といった往復乗車券が残りそうな私鉄でも共通して使える制度なので、2行程という概念を生み出すのも少々ややこしい。私の大学では学割証の発行枚数が年10枚と制限されていたが、最近制限がなくなったという情報もあり、発行枚数の制限をなくせば往復で買えなくなっても問題ない。学割の連続乗車券についても101kmを越えている部分しか割引にならないので、ジパングのような連続乗車券の短い部分は元々割り引かれないので、連続乗車券廃止で損することもない。そのため、学割はシンプルに片道のみ、101km以上となるのではないだろうか。
そしてレール&レンタカーに関しては利用が少ないので、それ自体廃止になるのではないだろうか。
ジパングの改定が発表されたので、両者についても近々発表されるだろう。どのような結果になるか楽しみだ。