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JR東日本運賃改定まとめ

https://www.jreast.co.jp/2026unchin-kaitei/
12月6日、JR東日本が2026年3月に運賃改定すると発表した。
JRの運賃改定自体は、来年にJR北・西・九が運賃改定を行うものの、これに関してはシンプルな値上げで(JR西は電車特定区間拡大で一部値下げ)そんなに話題にならなかったものの、JR東の今回の改定に関しては、様々な要素が変更となるので大きく話題になっている。それぞれのポイントと私の感想をまとめておく。

●山手線内・電車特定区間廃止

やはり一番の話題はこれだろう。現状、山手線内相互発着や、電車特定区間(千葉・取手・大宮・高尾・久里浜より都心側)相互発着となる運賃は、他の区間より割安に設定されていた。これが廃止となり、区間外に関しても同じ距離を乗るなら運賃は同一となる。(地方交通線を除く)
まず、私が住む四街道駅に関しては、千葉駅より外側なので電車特定区間外だ。そのため、1kmあたりの運賃は少々割高で、不公平に感じていた。それが今回の改定により解消される結果となった。数値にすると、山手線内は16.4%値上げ、電車特定区間は10.4%値上げ、幹線は4.4%の値上げとなる。四街道発着などの電車特定区間外(幹線)に関しては値上げ幅は少ないため、少し得した感じになる。
この山手線内・電車特定区間の運賃は私鉄との競合の意味もあり、割安にしていたものと思う。ただ、儲かるところにだけ路線を作れる私鉄と違い、JRは全国の路線網や長距離の輸送を維持するという使命がある。
その中で、この施策は電車特定区間外の割高感を解消しつつ、電車特定区間内でより稼ぎ、その他の路線の維持に回すという考えなのかなと感じた。
値上げにより一定数私鉄に乗客が移るという意見もあるが、私鉄があるなら私鉄を使ってくれ、それで輸送力が過剰になったら減便する、くらいの考えなのかなと思う。

●分割乗車券について

また、この電車特定区間のおかげで乗車券を分割した方が安くなるという例も多々あったが、分割した方が安くなる区間は多少減る。
とはいっても、15kmまでの区間の運賃が1kmあたりで考えると最も安いことは変わらない。分割した方が安くなる現象は是正した方が良いと思うものの、長距離の輸送を行えることがJRの特色なので、長距離乗る場合の方が短距離で利用するより価値があり、1kmあたりも高くするという考え方ならある程度は理解できる。分割が高い現象がずっと維持されているのはこのあたりの理由だろう。

●特定区間運賃一部廃止

これは私鉄と競合する区間で、通常の運賃計算だと私鉄に歯が立たないので特別に安くしている区間の運賃のことで、これが一部廃止となる。
ただ、廃止になるのは上野・日暮里~成田、新橋周辺~横須賀周辺という、それは京成や京急を使うだろうという区間と、渋谷~桜木町という東横線の桜木町は20年前に廃止になってるのにまだ設定されてたのか、という区間なので廃止は妥当だろう。
ただ、電車特定区間の廃止をしているなら、この特定区間運賃も思い切って廃止にしても良いと思う。特に新宿~高尾なんて京王線が安いのでJRも結構値引きしていて、本来740円のところを580円としている。それでも京王の方が410円と170円安い。そして新宿~高尾は580円なのに、新宿~相模湖となると990円と、一気に上がるのも割高感があるだろう。
そして、京王に対抗して値下げしているのは良いものの、中央線と京王は途中の区間は離れている。ただ、高尾~新宿を値下げしたからには、その間の区間の発着についても値下げしないと運賃が逆転してしまうため、値下げされている区間がある。例えば日野~新宿は本来580円のところ、500円の設定だ。
ただ、日野の人が「京王の方が安いから高幡不動まで40分歩こう!」とはならず、580円でもJRを使うだろう。そう考えると、特定区間運賃のせいで、直接競合してない区間の減収が一定数あるだろう。
とはいっても、一気に値上げするとやはり反発が大きいので、今回は見送りという結果になったのかなと予想する。そのうち特定区間全廃もありえるだろう。

●地方交通線の運賃は廃止にならないのか?

電車特定区間を廃止するなら、距離を1.1倍にして計算する地方交通線の運賃も廃止にしても良いのではという声もある。この1.1倍というのも微々たる差であり、わざわざ設定するほどではないのかなという気はする。
ただ、地方交通線の運賃を廃止すると地方交通線の部分は値下げになる。今回の改定内容を見ると、あまり値下げになるような改定はやりたくないのかなと感じた。ただ、将来的に廃止になってもおかしくないだろう。

●東京~熱海別路線化

次に話題になっているのはこれだろう。従来は、東京~熱海間は新幹線経由・在来線経由のどちらの乗車券であっても相互に乗車が可能だったが、今後は新幹線・在来線の利用する方の経路を選択して購入する必要がある。
ただ、これは全く新しい方式という訳ではなく、新下関~博多で取り入れられている仕組みと同じである。

●新幹線経由で途中下車できる裏技

この変更により、東京~品川などの区間を新幹線経由にして乗車券を購入することにより、「大都市近郊区間相互発着は101km以上でも当日限り有効」という制約を解除し、途中下車できるようにするというということがしづらくなった。
とはいえ、乗車券を函南以遠に伸ばすとか、東京~上野を新幹線経由にすることによってこの周辺の区間が含まれた乗車券を途中下車可能にすることは引き続き可能だ。

●踊り子に乗るか新幹線に乗るか決まっていない場合

とりあえず先に乗車券を買っておいて、当日の都合次第で新幹線と踊り子のどちらにするか決めたい場合に困るという声もあった。ただ、これは新下関~博多で行われているように、新幹線経由の乗車券を所持して在来線に乗車する場合、区間変更の扱いで差額を徴収するという扱いになるだろう。
逆に、高い方の在来線経由の乗車券を所持して安い新幹線に乗る場合も区間変更で乗車できるが、差額は戻らない。とりあえず安い新幹線経由で買っておけば損はしないだろう。

●加算運賃の設定はややこしいのか?

JR東海とJR東日本で運賃が異なるようになるため、例えば静岡→熱海→東京を在来線経由で乗る場合、熱海~東京間だけJR東日本の値上げ額相当の加算額を追加するという仕組みになる。
この加算額を追加する仕組みは、JR北・四・九と本州内でまたがって乗車する場合に従来から取り入れられている仕組みだ。
この仕組みをややこしいので、分かりやすい運賃にするという考えから逸脱しているという声がある。確かに、手計算で運賃を算出するのはややこしくなったが、運賃は乗換案内サイトで検索すれば瞬時に出してくれる。運賃を算出するための定義がしっかりしていれば、この加算運賃の設定により、ややこしくなったとは感じない。
むしろ鉄道に詳しくない人にとって、ややこしいかどうかというのは、JRの切符で私鉄には乗れないとか、新幹線に乗るには乗車券の他に特急券が必要とかの次元のことだ。それを解消するために、交通系ICカードの導入や、スマートEXで運賃・料金が一体となったものを発売している。
そう考えると、手計算するならややこしくなったのは事実だが、通常利用するぶんには影響はないだろう。

●新横浜はややこしい

今回の別路線化で思ったのは、私が横浜市内をよく利用していたからだが、新横浜に関連する運賃が分かりやすくなるのではということだ。
新横浜は同一駅扱いとなる横浜駅から離れているものの、横浜線というJRの在来線で繋がっている。そのため、ややこしい状況が発生している。
例えば、新横浜~小田原は切符で乗れば990円、ICで乗ると1166円だ。これは切符の場合は新幹線経由の乗車券で乗れるためだ。ただ、逆方面の新横浜~品川に関しては経路通りの乗車券が必要になる。この時点でなんでやねんとなる。
他にも色々とややこしい例があるものの、正直自分でも完全に把握しきれていないので省略とする。とりあえず、別路線化でこの新横浜絡みのややこしい点は少々解消されるのではないか。

●JR東海も運賃改定する可能性

そうはいっても、JR北・西・九が少し前に運賃改定の発表をした通り、JR各社で運賃改定を発表するタイミングはバラバラだ。JR東海が運賃改定をして、東京~熱海間の運賃をJR東日本と合わせるという可能性もありえる。
JR東海の運賃改定について「JR東日本の申請内容をふまえて検討」と報道が出ている。その言葉通りなら、これから検討するということになる。さすがに事前にJR東日本の改定内容についてJR東海も情報が入っているだろうから、現在どうするか検討中なものの、まだ結論が出ていないので、とりあえず東京~熱海は別路線扱いにすると発表。まだ運賃改定は1年半後なので、JR東海が4月くらいに「運賃改定するので東京~熱海は同一路線扱いにします」と発表、という流れも全然ありえるのではと思う。今後の続報も注視したい。

●6ヶ月定期の割引額縮小

通勤定期代は会社支給のことが多いからかあまり話題になってはいないが、6ヶ月定期の割引率が縮小される。この6ヶ月定期、私鉄と違いJRはかなり割引率が高くなっていた。3ヶ月+1ヶ月+1ヶ月と5ヶ月分購入するより6ヶ月定期を購入した方が安い。これが是正される。
現状だと何が起きていたかというと、6ヶ月定期を5ヶ月使って残りの1ヶ月を払い戻すという場合、3ヶ月+1ヶ月+1ヶ月の定期代を差し引いて払い戻し額を算出するが、そうすると払い戻し額が0円になる。
「1ヶ月残ってるのに何で1円も戻らないんだよ!」
というご意見になり、
「6ヶ月定期は割引率が特別高いので、こういう計算となります…。払戻額が0円という証明書は出せますが、発行すると定期の1ヶ月残ってる部分はもう使えなくなります」
みたいな流れになってしまう。
なお、通学定期に関しては運賃改定なしとなるが、通学定期は元々、6ヶ月定期を5ヶ月で払い戻すと0円になる現象は発生しない。

●定期券の区間変更

ただ、定期券を払い戻す場合、通常は1ヶ月ごとの計算で払い戻すが、区間変更の場合は10日単位で割った金額で払い戻し、新たに買い直すという形になる。区間変更という名称から、残っている期間を別の区間に振り替えられるようなイメージだが、一旦払い戻して新たな区間を1ヶ月単位で買い直しという仕組みだ。
この定期券の区間変更、正直ややこしい。先述の6ヶ月定期を5ヶ月使って払い戻す場合、払戻額は0円だが、一旦適当な区間に区間変更するということにすれば10日単位で計算となるため、払戻額が発生する。区間変更で新たな区間で購入した定期券も、買ってすぐに払い戻せば手数料は220円かかるだけだ。
正直、この仕組みはいらない。区間変更であっても1ヶ月単位で払い戻しという計算方法にしても別に文句は出ないだろう。
しかし、定期券となるとJR各社だけでなく、私鉄各社とも連絡定期を発行しているため、恐らく各社と取り扱いを合わせる必要がある。それが大変すぎるのでそのまま放置されていると思われるが、いつか区間変更の扱いも廃止になってもおかしくない。

かなり長くなってしまったが、今回の運賃改定で思ったことは上記の通りだ。改定まで1年以上あるので今後も続報があるだろうし、それまでに色々と取り扱いが変更となるものを記録しておきたい。


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