裏切りの代償
映画を久しく観ていなかった。
親友と食事をしていて映画の話題になり大いに盛り上がった。
その時に教えてくれた映画の題名が僕には衝撃的だった。
【自転車泥棒】1948年公開のイタリア映画
監督 ヴィットリオ・デ・シーモ
《内容》
役所の広告貼りの仕事を得た失業労働者が、仕事に必要な自転車を盗まれてしまい、息子とローマの街を歩き回って自転車を探す物語。職業俳優を使わず素人を起用した珍しいキャスティング。オールロケでドキュメンタリータッチに描いた物語。
この映画は世代や立場によって意見や見方が変わる作品だ。
僕は2児の父親だ。
だから父親目線で伝える。
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同じ立場だったら俺も同じ事をする
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映画の主人公の父アントニオは自分の失敗を棚に上げて
己を正当化してでも他人の自転車を盗む。
これはアントニオが弱いからではない。
おそらく、こう思ってるからだ。
【家族を守りたい】
【せっかく手に入れた仕事を逃したくない】
【息子にカッコいいって思ってもらいたい】
そのために自転車がどうしても必要だ。
アントニオは家族や周りを裏切ったのではなく
自分を裏切ってしまった。
人の自転車を盗んでこの長い旅を終わらせたい。
早くこの苦しみから解放されたい。
この後、アントニオに待っている代償は
後悔と自責、羞恥心と自己嫌悪が襲う。
逮捕され監獄行きになるかもしれない。
そんな恐怖と苦しみを理解して彼は盗んだ。
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きれいごとの意見で片づけるな!!!
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多くの視聴者はこう思う人が多いと僕は思う。
『他に良い方法があるかもしれないから私は盗みはやらない』
『本当にかわいそうだ。涙が出る。同情します。』
『子どもが見てる前で盗みをする。あれはないわ』
そんなの全部きれい事だ。
自分が同じ状況ならどうする?
その価値に気付いてこそ映画の価値がある。
僕はこう思う。
長く生きていると時代や状況で正しい答えが出ない時が本当にある。
もし、自分にそんな時が訪れたら?
自ら犯罪と判っていて手を染める勇気がお前にはあるか?
親になったら、この映画を観てほしい。
映画を観て『俺は絶対に自転車を取らない!』
という奴がいたら僕はこう言うだろう。
『お前、今、守りたいものないだろ?』