2週間でアポが取れる!完全オンラインで実施したインサイドセールスの研修プログラムのすべて
私は普段カスタマーサクセスの担当なのですが、実は2020年1月からインサイドセールスの責任者も兼任しています。そのインサイドセールスチーム(以下ISチーム)で2020年4月および6月に1名ずつ新メンバーを受け入れたのですが、新型コロナウイルスの影響もあり完全オンラインで研修を実施することになりました。
IS新メンバーの受け入れ自体が私の中でも初体験だったことに加えてフルオンラインということで、当初は非常に不安でした。しかし先人の経験を頼ったり、カスタマーサクセスの実務で培ったオンボーディングの知見をフル動員して研修プログラムを作ったことで、実際に受け入れた新メンバーは2人とも
・研修開始から2週間以内にアポが取れる
・3週間目からは自走できる
という状態に到達することが出来ました。
※新メンバーの早期オンボーディングの甲斐もあって2020年6月22週はISチーム商談創出数で過去最高記録を更新することが出来ました!(2020年6月27日時点)
今回は、このオンラインプログラムをどのような思想で設計したのか、実際にどんなことをやったのかをご紹介できればと思います。インサイドセールスで新人教育を担当している、あるいはそれらをオンラインで研修する必要があるけどどうやって良いかわからない、といった悩みがある方の参考になれば幸いです。
因みに事前のTwitter上でのアンケートでもこのトピックが「CSチーム内連携方法」に次いで2位でした!
弊社のISチームの概要
弊社のISチームは2018年に立ち上がったのですが、責任者については3回の変更を経ており、私は4人目の責任者としてアサインされました。チーム体制はこんな感じです。
・KPI:当月の商談創出数
・使用ツール:Salesforce、Pardot、Dialpad
・主なリードソース:自社セミナー、資料請求、リトライ
業務としてはマーケが作ってくれたリードを精査し、架電やメールを中心にアプローチを行い、アポイントメントを取得したらフィールドセールスにバトンタッチするという形態を取っています。加えて、直近のご導入は難しいとわかったリードへのナーチャリングや、一度失注した商談へのリトライも業務の範囲内です。
今回ご紹介する研修はこの体制でいうところの「コールスタッフ」育成のお話になります。
研修プログラムの概要
さて2週間の研修プログラムの概要ですがざっとこんな感じでです。
ごちゃごちゃしてて分かりづらいですね。すごく簡単に言うとこうなります。
1週目は座学を中心にプロダクトや顧客のことを学びつつ、責任者のロープレチェックに合格することを目指す、そして2週目からは早速実リードに架電を開始しセミナー誘導や場合によってはアポ獲得を狙う、というのが研修の大枠になります。
今期受け入れたメンバーは2名とも、この2週目の実架電の際に初アポを獲得することが出来ました(大体9日目か10日目あたり)。
ちなみに実際の研修スケジュールシートはこんな感じ(更にカオスw)
さて、ではこれらの研修を一体どんな思想で組み、どんな工夫を盛り込んでいったかを1つずつご紹介したいと思います。
研修の根本を支える3つの思想
まず研修の根本を支える3つの思想はこちらです。
これらを考えるにあたっては「THE CULTURE CODE 最強チームを作る方法」という書籍の内容も参考にしました。私がまとめた本の要約はこちら。
では1つずつ詳細を見ていきたいと思います。
1:明確なゴール定義
研修の中では到達して欲しい状態を明確に定義し、達成したかどうか客観的にわかりやすいように設計をしています。研修は一歩間違えると「受けること」そのものが目的になってしまうことがあるのですがそれでは非効率。本来は「到達して欲しい状態」から全て逆算して研修のコンテンツが配置されるべきなので、それを研修設計者(自分)も受けて貰う人自身にも認識してもらいたいという思いでゴールは最初に明確にしました。
また常にゴールを意識して各種コンテンツを受けることで、コンテンツの吸収率も高まりやすく、疑問も湧きやすくなります。ゴールの設定にあたっては下記観点を大切にしています。
■1-1. ギリギリ達成可能なストレッチゴール■
ゴールのラインは「普通にやっていればここまで行くだろう」というところの少し上のラインで設定するのがポイントです。これをストレッチゴールと呼んでいます。このストレッチゴールは無理すぎず、しかしかといって全く無謀ではないラインに設定するのがポイントで、研修設計の中で一番難しい部分でもあると思います。
例えば今回の研修でいくと私も当初は「普通に研修すれば1ヶ月あればアポイント取るところまではいけるだろう」と踏んでいたのですが、それだと普通だなということでそこからストレッチさせて「2週間で必ず1アポ取る」とまず考えました。しかしそれだとリードの質に左右される部分が出てしまうので達成がギリギリ可能なラインとして怪しいかもしれない。そういった思考を経て研修全体のゴールを「3週間目以降、通常リードに架電してアポを獲得できる状態」というラインに設定しました。
これならばもし2週間で1アポ取れれば問題なく証明されているし、仮に取れなくても架電の質や各種業務のチェックをすれば到達していると判断することも出来る。そういった観点で上記を研修のゴールに設定しました。
ストレッチゴールは当然、研修を受ける人の力量も見極めながら変動させるのがポイントだと思います。例えば新卒なのか経験のある中途なのかでゴールや到達までの期間は変わってくるはずですし、商材の理解のしやすさも影響します。その辺を考慮してゴールは設定しましょう。因みに今回の事例は「社会人スキルは第二新卒レベル以上×商材理解難易度"高"」で設定しています。
■1-2.研修全体→週次→日次でブレイクダウンゴールを設定■
研修全体のゴールを決めた後、そこに留まらず、さらに週次、日次のゴールへとブレイクさせています。実際に私が作ったブレイクダウンゴールは下記です(日次は自社特有のものもあるので細かく理解する必要はありません)。
ブレイクダウンゴールを設計するのは、研修コンテンツとその日のゴールの関係性を強く意識してもらい短期間でのPDCAサイクルが回るようにするという意図が1つ、そしてもう1つは「毎日ゴールを達成するという感覚をモノにしてもらう」というのが狙いです。
前者はわかりやすいですね。どの研修をどこに持ってくるかは設計者視点でも悩むので、悩まなくて良いようにゴールを先に設計し、そのために必要なコンテンツを日次で配置していくという思想です。そして研修を受ける人視点では、「今日はここまでいけば良いんだな」という視点を持ってコンテンツを吸収できることで効率が高まります。
PDCAサイクルは回転数がモノを言う存在なので、日次でPDCAというのがポイントだと思っています。週次だと2週間で2回しか回せない。でも日次であれば10回転。この5倍の差は大きいと感じています。
そして後者の視点。個人的にインサイドセールスを含む営業組織では大切だなと思っているのが「ゴールを達成することを当たり前にすること」だと思っています。息をするようにゴールを達成する。そういうことがDNAレベルで根付くとチームは強いと考えています。その手始めとして研修の期間でも毎日のゴールを達成するということ、それが当たり前だという感覚を認識してもらうためにこのゴールを設定しています。
インサイドセールスは市場の環境変化を最も受けやすくかつ察知しやすい組織であるがゆえに、日次レベルでPDCAを回せることがIS組織が成果を出すためのポイントであると考えています。例えば顧客の反応率が悪いから連絡手段を切り替える、セミナーの反応が好調だからリソースを通常の1.5倍突っ込む、等。そういう日々の判断を大切にするためにもPDCAは日次、これを体に叩き込むのはポイントだと考えています。
またこのブレイクダウンゴールですが、隣接するゴールごとの段差を適切に設定するのがポイントです。イメージとしては最終ゴールから逆算して10日を10等分してゴールを設定するような感覚です。昨日より今日、今日より明日、ちょっとずつ出来ることが増えていく感覚は人の成長をドライブさせる大きなエンジンになります。きちんと積み上げていけば到達できるラインであることを確かめるためにも、このゴールの段差の意識、積み上げの意識は持っておく必要があります。
■1-3. ゴールはしつこく確認する■
ゴールは設定しただけでは意味がありません。研修を行う者も受ける者もそれらを認識して実行できるかどうかが分かれ目になります。そしてゴールを強く認識してもらう手段はたった1つ「繰り返し言い続ける」が最強だと考えています。私の実践例としては下記のようにゴールを伝えています。
研修全体ゴール:
・初回の研修全体像説明時に3回繰り返して説明
・週次のゴールを確認する際に再確認(2回)
・毎朝今日のゴールを確認する際に、全体ゴールから再確認(10回)
・夕方明日のゴールを確認する際に、全体ゴールから再確認(10回)
=計25回伝える
週次ゴール:
・初回の研修全体像説明時に説明(1回)
・週の最初と最後で確認(2回)
・朝夕の日次のゴールを確認する際に、週次ゴールを再確認(10回)
=計13回伝える
日次ゴール:
・週次のゴール確認の際に一通り確認する
・朝夕の日次ゴール確認時に説明する
=計3回伝える
文字面だけ見ると、しつこすぎるように見えますが、それくらいでちょうどよい、というのが肌感覚です。人間はどうしても目的を見失い、手段に走ってしまう生き物なので確認してし過ぎるということはありません。また研修において最も重要なのは「全体ゴールを達成できるかどうか」です。最も重要なことほど、繰り返し伝えるべきだと考えています。
研修のゴールに限らずですが「大切で本当に伝えたいことは10回伝えろ」というのは価値ある実効的な行動目標だと感じます。
2:インプット⇔アウトプット
何かを学ぶときはすべからくそうですが、インプットとアウトプットを交互に行うこと。これが上達の早道です。この研修プログラムでもこのインプットとアウトプットを交互に繰り返す、というのはかなり意識的に組み込んでいます。1つ1つ見ていこうと思います。
■2-1. インプット方法は種類を分ける■
インプットは主に座学/資料読み込み/体験(セミナー・商談同席)です。この辺りは通常の研修でもあると思うので、あまり詳細を書くことはありませんが、工夫しているポイントとしてはインプット方法の種類を意図的に分けています。
座学:責任者から口頭+文字の組み合わせ
資料:文字のみ
体験:口頭のみ
これは人によってインプット手段に得手不得手があることを考慮したものです。文字を読むのがすごく得意な人もいれば、真逆で文字を読んだら眠くなるけど人の話は喜々として聞いていられるという人も居ます。そういった得手不得手によりインプットの吸収効率がバラつかないように、複数のインプット手段を用意することで、一定のインプット効率を実現できるようにしています。
■2-2. アウトプットの効能は理解の深化/修正/蓄積■
アウトプットは主に研修の気づき/ロープレ/実架電です。アウトプットもインプット同様、文字でのアウトプットと口頭でのアウトプットに分けています。研修の気づきというのは、研修期間の2週間毎日書いてもらう日報のようなものです。項目は
1. 本日のアウトプット
2. 本日の学び(本日のアウトプットと被ってもOK)
3. 分からなかった単語
4. 業務以外の感想(自由に)
という4つです。アウトプットは各研修コンテンツで個別に設定されているものを書く欄で、学びは今日自分が学んだことを書くイメージですね。アウトプットの効能は「自分の中での理解度が深まる」「理解が間違えていた時に修正される」「自分で振り返ることができる」というものがあると思っています。
深まる:聞いただけでなく自分が伝えられるようになる、というレベルになるには壁があります。アウトプットの訓練を繰り返すことでこの壁を乗り越えられるようになります。
修正:もし自分が聞いたものを間違って理解していたとしても、自分がアウトプットしていればレビュアーがその違和感に気づき修正してくれます。逆にアウトプットしないとそういう機会がなく誤解したまま先に進むことになりかねません。
蓄積:またアウトプットは自分で見返す上でも大切になります。研修中はまだ見ぬことを色々と学ぶので、昨日学んだことをずっと覚えていられるほど脳のリソースが豊富ではありません。だから外部にそれを残すことで蓄積され、記憶の定着が促進されます。蓄積はその他にも「これだけのことを学んだんだ」という自信にも繋がります。
このように有益なアウトプットですがたった10日間だとしても続かなければ意味がありません。そのための工夫として、責任者も毎日日報を確認し必ずコメントを返す、ということを自分に課していました。
人間は「誰も見ていないバンジージャンプは飛べない」というのが習性です。あなたのアウトプットを見ている、そしてそれに対して興味関心を持っている、ということを伝えるためにコメントを返すという動作は心理的安全性を高め、アウトプットの継続性を高める上で重要な動作だと考えています。
日報はGoogle Docsを使ってやっていました。あと当たり前ですが、アウトプットする時間、というのもきちんとスケジュール上に組み込んであります。
■2-3. インプット→アウトプットのインターバルを短くする■
このインプットとアウトプットですが、なるべく短いスパンで交互に訪れるのが学習効率が良くなります。例えばですがこのようなイメージです。
△ 初週はひたすらインプット、2週目はひたすらアウトプット
◯ 1時間インプット、30分アウトプット
インプットとアウトプットは脳の使う部分が異なるので、どちらかだけを長時間使うのは集中力が持たず効率が落ちてしまいます。この2つはなるべく短いスパンで繰り返していくのが理想的です。このように短いスパンでインプットとアウトプットを繰り返すための仕組みが2つ。
仕組み1:各研修にアウトプットを設定する
インプットの研修には必ずアウトプットを設定して、研修の項目にそれらを明記するようにしています。例えば下記のようなイメージです。
インプット)プロダクト概要の座学+資料読み込み
アウトプット)プロダクトのことを知らない人に3分で説明する文章を書く
インプット)フィールドセールスの商談に同席する
アウトプット)架電で顧客に商談の場の価値をどのように伝えるかを書く
このように各インプットに対してアウトプットを予め明示しておき、日報のdocsにそれらを書いてもらう(これがアウトプットの項目1)仕組みにすることで、インプットを受けてすぐに自分でアウトプットをすることが出来るようにしています。
仕組み2:初週ロープレは毎日、2週目実架電の振り返りも毎日
もう1つの仕組みが架電です。やはりインサイドセールスは架電が主戦場。最大のアウトプットは架電になるので、その機会が失われないように初週は毎日ロープレ、2週目は実架電を行い毎日振り返る(振り返るので必ず架電が必要になる)ということをやっています。
これによりその日学んだことのアウトプットを見せる場としてロープレを使ったり、ロープレの場でアウトプットをするんだ、というゴールを目指してその日のインプットをしてもらったり、という相乗効果があります。また2週目でその日の架電を振り返る場があるからこそ、その日の架電アウトプットをちゃんととしようと思える、といった効果があります。
ちなみにTIPSですが、2週目の架電振り返りでは「自分が行った架電を責任者と一緒に聞きながら振り返る」ということをやっています。これは自分の架電を客観的に聞く機会は意図的に設けないと無いこと、しかし自分の架電を客観的に聞いてみると「早口だ」「あのーとか、まあが多い」「上手く内容を伝えられていない」といった振り返りがしやすく次に活かしやすいからです。
3:高頻度のメンバー交流
ここまでゴール・インプット⇔アウトプットという、オンラインでなくとも重要なことを中心に話してきましたが3つ目の思想はオンラインで実施する際に工夫が必要になった点です。
■3-1. 縦ラインでの高頻度なコミュニケーション
オフィスで研修を行うのであれば、毎日オフィスで顔を合わせたり挨拶をしたりすることそのものが存在の確認だったり適切な距離感を形成したりするのですが、オンラインだとそういった体験は存在しないので、その代わりになるべく短時間のコミュニケーションを高頻度で取る、ということを意識していました(というより高頻度であるがゆえに1回1回は短時間になるという感じですね)。
高頻度である理由は、分からなかったり躓いたりする時間をなるべく少なくするためです。オフィスでいれば、なんとなく自分が暇そうかどうかを見極めて「すいません、ちょっとここなんですが…」と声をかけて疑問をシームレスに解消できますが、オンラインだとなかなかそういった体験は再現できません。
「気軽にDMやSlackで相談してくださいね」と言っても、実行できる人ばかりではありません。自分の悩みを言語化したり文字化するのに苦手意識がある人も居ます。なので、上記のようなことは言いつつ、必ず責任者自ら能動的に話して疑問をこまめに解消して、スタックする時間を減らしていくというのが狙いになります。
初週は座学もあるので、必然的に接触頻度は多くなりますが、2週目からは減ったりしがちなので朝夕にゴールの確認をしたり、ちょっとしたことでもzoomでオンラインで話すなどの工夫をすることで、高頻度を担保することが出来ます。
■3-2. 横ラインでの情報交換
責任者との接触頻度が多くてもそれだけでは、理解が行き詰まったりすることがあります。それは「物事は複数の角度から見たほうが理解度が高まる」からです。責任者はあくまで自分の体験と立場からしか物事を話せません。それが的を射ていたとしても、新メンバーに伝わるかどうかは別の話。
同じことでも視点や角度が異なっているだけで理解しやすくなるということはよくあります。なので新メンバーと既存メンバー同士で情報交換できる場を担保することが重要になります。
これもオフィスでやっていれば責任者が居ない時に分からない時に隣の人に「すみません、ちょっとこれの操作方法を知りたいのですが…」と聞いて「ああ、それはこうやるんですよー」みたいな形で解消され、距離が近まるのと横同士で疑問が解消されるのが一石二鳥で解決できたりするのですが、オンラインだとそうもいきません。そこで解決のために2つの仕組みを取り入れていました。
仕組み1:業務TIPSをシェアし合うブレイクタイム
毎日14:00-14:15という午後休憩直後のタイミングで、架電スタッフ全員で集まって業務TIPSをシェアし合う時間を持つようにしています。
毎日繰り返しで時間が設定されていて、Zoomで集まり毎日事前に決めたテーマやその場で話し合いたい架電/アポなどについて全員で知見やTIPSをシェアしあったりしています。良い架電があれば皆で聞いたり、新機能のアップデートがあれば内容をお伝えしたり。意外と「今更聞けない…」みたいな内容も人それぞれ抱えていたりするので、そういった既存メンバーの悩みを解消する上でも役立っています。
新メンバーには研修初日からこのブレイクタイムに参加してもらい、皆の業務TIPSのシェアを聞いたり、自分の悩みを他メンバーに気軽に質問したり出来るようになっています。また最初のうちはそういう文化が根付かないのもあるので、例えば自分に来た質問も「質問ありがとうございます。◯◯さん(既存メンバー)ってこういう時、どうしてるんですか?」と意図的に既存メンバーに振ることで「横同士の情報連携をしていいんだ」という認識が強まるように工夫しています。
仕組み2:オンボーディング用のSlackチャンネルを立てる
2つめはSlackチャンネルです。「is_on boarding」というチャンネルで新メンバーの方が躓いたことも気軽に質問できるようにしてあります。オープンチャンネルであり、かつ自分が質問するチャンネルだということを明示してあるので、通常のチャンネルで質問するよりはハードルを下げています。
また、ブレイクタイムで話したことをこのチャンネルで補足したりすることで、責任者が必ずしも答えられない時に他の既存メンバーがさっと補足しやすかったりする、などのメリットもあります。こちらはどちらかというとサブ的な位置づけではありますが、こういうデジタルの場もあったほうが良いなというのが個人的な感触です。
ただし横同士の情報連携は、行き過ぎると自分や研修の意図と違う情報が流れすぎたりしたり、自分が言っていることと、横で言っていることが異なって新メンバーの方が混乱してしまうケースが懸念されるので、横での情報連携の場にはなるべく自分は同席する、また情報連携の系統としてはまずは責任者が第一ラインである、ということは明示するなどのリスク回避策は取ったほうが良いかと思います。
■3-3. チームビルディングのモーニングタイム
最後がモーニングタイムへの参加です。これは業務と関係ないことも含めて、毎朝zoomで行っている15分の雑談タイムのようなものです。チームの目標が良い感じのときはそれについて話したり、昨日取れたアポを皆で称賛したり、それとは関係ない雑談などをしたりしています。このモーニングタイムにも研修の初日から入ってもらうことで
・自分がチームの一員であること
・一員としてそこに居て良いこと
・フラットな立場で話し合って良いこと
の3点を体感してもらうことに重きを置いています。これもリモートになってから始めた取り組みではありますが、チーム全体を機能させるためにも重要ですし、新メンバーのオンボーディングという意味でも重要な役割を果たしていたなと感じています。
コミュニケーション施策についてまとめると下記のようになります。
以上が研修の根本を支えた3つの思想です。研修のポイントは大体上記が8割くらいなのですが、せっかくなのでその他に気をつけた残り2割のポイントもご紹介しようと思います。
インサイドセールスが学ぶべき知識体系(3カテゴリ)
インサイドセールスが目指す状態は、顧客と話して適切な顧客に提案を行いアポイントを取得することなのですが、それが出来るようになるために何を知っている必要があるか、という意味では実はかなり広範囲にわたって色々なことを頭に入れなければなりません。
自分が改めて研修を設計するにあたって書き出していても「これ、結構なボリュームあるな…」と思ったので、何らかのカテゴリを使って構造化しないと頭がパンクする…と思ったので、私なりに整理してみました。
基本的な構造は①顧客と③自社、その間を繋ぐ架け橋として②製品がある、というものであり、インプットすべき内容はこれに沿って整理することでかなり伝えやすくなったなと思っています。以下1つ1つのカテゴリと、それをインプットするためのマテリアル例を簡単にご紹介します。
■①顧客■
顧客については「ターゲット像」と「顧客体験」の話に分かれます。
①-1. ターゲット像:自社のターゲット顧客がどのような企業・担当者なのか、どんな悩みを抱えていてどういう方に役立てるのか
<理解のためのマテリアル>
・自社で定めたターゲット像資料
・既存顧客リスト
・導入顧客のインタビュー(録音を聞くなどもアリ)
①-2. 顧客体験:製品の購入にあたってどのような一連の体験を経るのか(特にインサイドセールスという観点では前後であるマーケとFSフェーズの理解が重要)
<理解のためのマテリアル>
・自社サイトの申し込み導線確認
・ホワイトペーパー読み込み
・セミナーを参加者として視聴(アンケートも書く)
・商談に同席
・CS支援内容の座学(架電で伝えられるレベル)
※ここは口頭で伝えるだけではなく、実際に顧客の体験がどうなっているかを必ず自分自身で体感することを重視しています
■②製品■
製品の話も「顧客視点」の話と「自社視点」の話があります。
②-1. 顧客視点:製品がどのような悩みをどう解決するのか、どういうビジネス効果があるのか、他社製品とどう違うのか
<理解のためのマテリアル>
・成功事例の理解
・製品が生まれた理由
・自社サイトでプロダクトを使った分析を行う
②-2. 自社視点:プロダクトのハード側面。利用料金や仕様など。
<理解のためのマテリアル>
・営業資料の読み込み
・仕様についてのFAQの確認
・プロダクトを実際に操作してみる(デモアカウント)
■③自社■
自社の話は「ISチーム業務」と「全社事業理解」の2つに分かれます。
③-1. ISチーム業務:1リードにアプローチする際にどのような業務の全体像なのか、1日の時間配分はどのようにすべきか、チームとして何を追っているのか
<理解のためのマテリアル>
・業務全体像の伝達
・各種ツールの操作練習
・先輩の業務観察(デジタル上ではツールの履歴確認)
・ISチーム目標、振り返り指標の共有
③-2. 全社事業理解:ISの架電行為は何のために存在しているのか、それらを通じ事業にどのように貢献するのか
<理解のためのマテリアル>
・会社のビジョン/ミッション/バリュー
・全社戦略資料
・他チームや他部署のミッションおよびKPI
以上です。主に1週間目の研修で座学や各種同席などを通じて理解頂く内容ですが、伝える時にも予めこういうカテゴリ整理をしておくことで、学ぶ側も整理しながら理解しやすくなるのではないかと思います。
研修スケジューリングのコツ
ここまでお読み頂ければある程度分かるかも知れませんが、
・週次/日次のゴールに沿って研修コンテンツを配置
・コミュニケーションタイムは定時で確保
・アウトプットタイムを必ず確保する
などはスケジューリングにおいて当然重要なポイントになります。が、それらはある程度上記でお伝えしたので、それ以外の点で工夫したTIPSをご紹介します。
スケジューリングのTIPS①:初週必須か2週目でOKかを分ける
様々な研修コンテンツを検討してスケジュールを配置していると、もうどれをどこに組み込めば良いのやらわからなくなってきます。ゴール通りに配置するといえばそれまでですが、ゴール自体も自分で決めているので、なかなか組み換え等で苦労したりすることもあると思います。
そこでオススメなのは、初週で絶対やらなければいけないコンテンツなのか、2週目でもまだ大丈夫なコンテンツかを区分けする、というものです。
日次のゴールは組み換え出来ることもありますが、週次レベルでの組み換えはあまりないと思います。なので週次のゴールに照らし合わせた時にどうか、という基準で区分けをしておくとスケジューリングがやりやすくなります。あれもこれも、と詰め込みたくなりますが、アウトプットの時間も大切なので、インプットタイムの3~4割くらいは2週目以降に回すのがおすすめです。
スケジューリングのTIPS②:空白の時間が無いようにする
これはオンラインであるがゆえの対応です。オンラインで怖いのが「やることないけどコンタクトが取れない」という状態です。オフィスにいれば仮にやることがなくなった時に、こちらから察知することができますし、メンバーから「すみません、大体終わったのですが…」とアラートを受け取ることもやりやすいのですが、オンラインではなかなかそうはいきません。
そこで「この時間何をやればいいかわからない」ということがおきないように空白の時間をなるべく作らないようにスケジューリングしていました。もちろんバッファは組み込んであるのですが、不必要にやることが不明確な時間がないようにするとオンラインでも安心して研修を進めることが出来ます。
スケジューリングのTIPS③:仮に空白が生まれてもやれることを用意しておく
TIPS2 と相反するのですが、とはいえ空白の時間が生まれる可能性はゼロではないので、その時に実施できるタスクを用意しておくと安心です。例えば、先輩の架電を聞く・質問文を書き留めて繰り返す、などは、やればやるだけ実力が上がりますし終わりもありません。空白の時間がもし空いたらこれをやってね、と言っておけば受けている側も安心して研修を進めることが出来ます。
因みに弊社ではis_callというSlackチャンネルを作り、アポが取れた全ての架電と、個人的に良いなと思った架電をアップロードし、誰もが聞けるような状態を作っています。
言えるようになるまでトークは完コピ
インサイドセールスといえば架電、架電といえばトークスクリプトですが、新人のうちはなかなかスクリプト通りにしゃべれないものです。予期しないお客さんの質問に詰まってしまったり、次何を聞けばいいかスクリプトには書いてあるのに咄嗟に出てこずしどろもどろしてしまったり。
あくまで私のやり方でしか無いのですが、ロープレの振り返りや実架電の振り返りをするときは「実際に言えるようになるまで完コピする」を重視しています。
例えばですが、一緒に振り返った時に「ここのお客さんの質問には~~と返せたら良かったね」という感じでフィードバックすることはよくあると思うのですがその時に「わかりました、次からやってみますね」という新メンバー内での完結で終わらせずに「よし、じゃあ今から僕がこのお客さんと全く同じこと聞くから、さっき学んだように返してみてね」と言ってその場で即興ロープレをし、完全に同じように言えるまで繰り返し練習するということをやっていました。
これ、やってみるとわかりますが1回だとまず出来ません笑。「わかりました、次からやってみます」というのは簡単ですが、体で覚えるのは実際には難しいものです。これは仕方のないこと。なので英語学習でうところの「Repeat after me」方式を採用しています。
架電のトークスクリプトの質が一定担保されている場合は、守破離の「守」を最初にやったほうが確実にスタートダッシュを決められます。自分で破るのではなく、まずは先人のスクリプトを完全にコピーできるようになる。これが地道ですが、アポへの近道であり王道だと私は考えています。
なのでこの「Repeat after me」をその場で言えるようになるまでやります。3~4回やれば、短いフレーズであれば出来るようになります。この3~4回、時間にして5分くらいの架電スクリプト「Repeat after me」練習が、地味ですがアポ獲得のためには効果的でした。
実際翌日のメンバーの実架電を聞いてみると、他のところはダメでも練習したところはきちんと言える様になっているので、この練習は一定実効性があるのではないでしょうか。
研修期間に架電するリードの選定基準
実践に勝る経験はありません。この研修プログラムではロープレも行っていますが、ロープレと実践、どちらが学びになるかと言われれば圧倒的に実践であると考えています。理由はシンプルで「顧客に聞かれて返答に困る」という状態こそが知識の吸収を加速度的に向上させるからです。
なので、研修の中では早い内から(企業によってそれが翌日からなのか1週間後からなのかは差があると思いますが)実践リードに触れていただくことが重要だと考えています。
その時に考えなければいけないのは「一体どういうリードを研修期間にお渡しするのか」という点です。私もその点については結構悩みました。正直、その時の事業の状況にもよるので、一概にこういうリードが良いという具体的な解は無いのかなと思っていますが、観点として「影響度」「リアリティ」「接続度」の3点から考え
影響度:低
リアリティ:高
接続度:高
のリードをなるべくお渡しするのがポイントかなと思っています。
影響度=チーム成果への影響度です。重要なアポをまだ成果の出せない新人に渡してしまうと、チーム全体の成果が毀損されかねないので影響度はなるべく低のリードを選びます。
リアリティは実際に架電で相対する顧客との近さです。影響度が低い顧客を選定していくと必然的に、実際の顧客像とかけ離れた顧客になってしまいがちなのですが、それでは実践としては不十分どころか間違った方向にいきかねないので、リアリティはなるべく高いリードである必要があります。
そして最後に接続度。せっかくの実戦経験なのに、架けても架けても繋がらないという状態では練習になりません。一定程度接続度が担保されているリードを選ぶのがポイントだと思います。
弊社の場合は、上記を考慮し「セミナーに参加しているものの、アンケート回答での意向はそこまで高くない顧客」や「ホワイトペーパーをダンロードした顧客」などを対象に、ご関心に沿った別セミナーをご紹介するという形で架電の練習を行っていただきました。直近のアクションなので、繋がりやすいことに加えてリアリティも高い、しかし通常のスタッフが架けてもアポになる確率は低いのでちょうどよいリードだったと感じています。
そしてセミナーに誘導しつつ、場合によってはアポイントを取得するという形にすることで、研修の全体ゴールに向かって活動をしてもらっていました。結果的には数は少ないのですが隠れた良いリードにあたりアポになるケースが多かったですね。
最後に
長くなってしまいましたが、2週間でアポが取れるようになったインサイドセールス研修の全ては以上となります。ストレッチゴール、繰り返し伝えるなどの概念はカスタマーサクセスで学んだ内容が活きたなと思ったりしています。
これからインサイドセールスで新人を迎える、オンラインで研修をしなければならないという方の参考になりましたら幸いです。
Twitterでもインサイドセールスの知見も日々つぶやいています。よければフォローくださいませ。それでは!
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