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【アニメ感想】名探偵コナン 第1059話「沖野ヨーコと屋根裏の密室(前編)」

―視界を遮る謎の雲、推理で晴らしてSPARKLE!
 密室からのSOS、
 トランプが示す事件の真相!
 たった1つの真実見抜く、見た目は子供、頭脳は大人。
 その名は名探偵コナン!―


約2カ月ぶりの原作回。
今回は「安楽椅子探偵」形式で、原作回の中でもかなり異色回~。そしてとにかくヨーコちゃんが喋る喋る! 脇田も喋る喋る!

コナンくんの服装は、モスグリーンのシャツにピンクのインナー。
登場キャラはコナン・蘭・小五郎・沖野ヨーコ・脇田。
ゲスト声優は中西尚也さん、イッキさん、本田裕之さん。御3方ともコナン初出演です!


▼ヨーコちゃんの「凡俗さ」と「強さ」

今回、沖野ヨーコが久しぶりの登場。がっつり喋っている回だと87~88巻「容疑者は熱愛カップル」シリーズ以来。サブタイトルに「沖野ヨーコ」と銘打っているところを見ると、公式もヨーコちゃん再登場を大々的に祝っているっぽい


今回は、改めて「沖野ヨーコ」というアイドルの人気の秘密、「凡俗さ」と「強さ」を思い知れた回だった。
ヨーコちゃんといえば、音楽だけでなく、映画やドラマなどのお芝居、CMやバラエティー番組まで、多岐にわたる活躍をするトップアイドル。小五郎も蘭も青島全代もテンションが上がる、コナン界の大スターだ。

そんなバリバリ芸能人大スターが、今回、探偵事務所で「凡俗」なほど溶け込んでいたのがスゴいと思った!
コナンは子供だからヨーコちゃんへの壁を感じない。蘭は過去数回の面識があるのと、年が近い(ヨーコちゃん22歳(!?))ことで、距離が近くなるのは分かる。
ただ、初対面のオジサン・脇田もこの場に溶け込めるというのは、実に不思議なことだ。
(脇田はヨーコちゃんを「アイドルの沖野ヨーコさん」と呼んでいるから、ヨーコちゃんのことをあまり知らないのかも?)
個人的には、この事務所の朗らかな空間を作り出したのは、他ならないヨーコちゃんなのではないかと思う。


緊急事態とはいえ、トップアイドルが寝巻きのまま屋敷の中をうろついたり……、初対面の脇田にスマホをおいそれと渡したり……。
今回のヨーコちゃんは、トップアイドルであるにも関わらずどこか庶民的で無邪気
また、事務所までの道に迷っちゃったり……、お寿司に「私、お寿司大好き♡」とテンション上がったり……、天然なキャラクターもまた、ヨーコちゃんの魅力といえる。

一方で、「私、気になります!」「私…気になっちゃって…」「私、気になって眠れないんです!」と事件に前のめりになる姿勢が、沖野ヨーコの「強さ」の面を表している。

沖野ヨーコ初登場回である、「アイドル密室殺人事件」では特に彼女の二面的な「強さ」が印象的だ。
元恋人が、自分を恨んで自殺しても「悲しみを隠して一生懸命」偶像(アイドル)を演じていた点が、タフな「強さ」だ。
対して、いやがらせ行為をしていた池沢ゆう子を許したのは、「優しさ」に起因するしなやかな「強さ」
庶民的であり無邪気でもあり、天然で凡俗だが、タフでしなやかで強い。これがヨーコちゃんの人気の秘密なんだろうな、と思った。

『名探偵コナン』1巻・FILE.9「不幸な誤解」より

(コナンくんも「ヨーコちゃん」呼びなの可愛い笑)


さてそんなヨーコちゃんだが、コナン界では紛れもない「バイプレイヤー」に位置する。ストーリーの根幹に関わることは少なく、舞台背景として登場することが多い。(他にバイプレイヤーキャラといえば、仮面ヤイバーやゴメラ、剣崎修、新名香保里、麦倉直道、弓長警部、米原桜子などが挙げられる)

そんなバイプレイヤーキャラであるヨーコちゃん、今回過去一喋ってなかった??
喋った「文字数」で考えると、絶対過去最高記録だよね……笑


▼原作との相違点

今回、一番原作とニュアンスが大きく異なったのは、コナンくんの「密室殺人…(キリッ)」のとこですね。
原作では「密室殺人」のあと、「だよね?小五郎おじさん!」と頬を染めて無邪気なニッコリ顔で言っている
アニメでは「密室殺人」」のあと、「……あっ、アッだよね?小五郎のおじさん……!」と汗をかいて慌てて小五郎になすりつけている。
子供らしくない発言を、原作では「開き直り」、アニメでは「慌てて訂正」している。


ヨーコちゃんの「五体満足なのは私だけでしたから」も「普通に動けるのは私だけでしたから」に変更。その後のコナンくんの「ケガとかしてたの?」も「ケガしちゃってたの?」に変更。どちらも柔らかいニュアンスになっている。
脇田のエセ江戸っ子弁もクセの付け方が所どころ違うけど、千葉繁さんのアドリブなのかな?


また、ヨーコちゃんの新ドラマの役どころを聞いた蘭ねーちゃんのセリフも(超細かいが)違う。原作だと「絶対観ない!!」だが、アニメだと「絶対観れない…」だ。作品そのものを否定する言い方を避ける、そんな蘭の性格の良さが表れているので、アニメ版のセリフの方が好きかもしれない。


▼コナンと長尺セリフ

それにしても今回、セリフが多い!長い!ヨーコちゃんと脇田がよぉ喋る!!!

……原作回はセリフ量が多いのはコナンあるあるだけど、今回は特に膨大!「安楽椅子探偵」(後述)の形式なので、必然的にヨーコちゃんの「説明セリフ」がほとんどを占めている
これは声優さん大変だろうな……。と思いきや、そこはさすがプロの声優さん。長沢美樹さんのお声、ハキハキしてて本当に聞き取りやすいし、セリフもメリハリが効いてて、長くても全ッ然聞けるわ~。声優さんってすごい
後半は事件の整理のため、脇田も「説明セリフ」を担当。千葉繁さんも長いセリフお見事!

コナンは長寿アニメなのでベテラン声優さんが多いですが、こうした「長ゼリフ」にキャスティングの妙が出てますよね。世良役の日髙のり子さんとか、服部役の堀川りょうさんとか、推理パート担当キャラは毎回よく喋る。


▼M・P・シール『オーヴンの一族』

冒頭に書いたとおり、今回の話はいわゆる「安楽椅子探偵」の形式をとっている。

「安楽椅子探偵」とは、「現場に赴かず、依頼人や新聞記事などによる情報のみから真相を暴く名探偵」のことである。
有名どころでいえば、バロネス・オルツィの隅の老人、アガサ・クリスティーのジェーン・マープル、アイザック・アシモフの黒後家蜘蛛の会のヘンリーなど。


中でも今回は、「安楽椅子探偵」黎明期の探偵「プリンス・ザレスキー」をご紹介しよう。

プリンス・ザレスキーは、マシュー・フィリップス・シール作の短編小説4編に登場する探偵。王位後継者だったが流謫の身となり、世を捨てて古い王城で黒人の従事者ハムと共にひっそりと暮らしている。
(Wikipediaの記事によると、「推理小説史上初めての本格的な安楽椅子探偵」らしい)

ザレスキーが初登場するのは『オーヴンの一族』という短編。
ここでは、「私(著者シール)」が彼の城を訪れ、「オーヴン家のファランクス卿の謎の死亡事件」を持ってくる。物語の前半は「私」による状況説明で大半が占められている。しかし後半は、ザレスキーの推理による解決で占められているため、「説明」と「解決」の二部構成だ。
「私」による状況説明はほぼ「私」の口語で進むため、第三者視点が一切ない。その点は、今回沖野ヨーコがひたすら長い説明セリフを述べていた点と似ている。

対して、後の「安楽椅子探偵」であるミス・マープルシリーズなどでは、事件関係者の様々な視点が挿入される。最終的に事件を坐らに解決するのはマープルだが、物語の構成は視点が交錯しているため、こちらはよりドラマ(映像)的といえる。


よって、今回の「安楽椅子探偵」形式は、マープルなどよりももっと古い時代の、「安楽椅子探偵」黎明期の形式に近いといえる。


最後に、「オーヴンの一族」からザレスキーの好きなセリフを引用しておく。

文明とは、もしそれになんらかの意味があるとするならば、人間が共に音楽的に生きる技術以外の意味はあり得ない――いうならば、パンの吹奏とか、バッカスの讃歌の勝ち誇るオルガンの演奏に合わせて生きることだ。
~~~(中略)~~~
そもそも生きるという問題には近似値的な解決すらない。いわんや、共に生きるという微妙で複雑な問題においてをやだ。

『プリンス・ザレスキーの事件簿』「オーヴンの一族」(M・P・シール、創元推理文庫)



▼まとめ

消費期限が2日切れてたって……。ウチだったら一週間でも食べちゃうかも笑

そしてネクコナ後のコナンくんの「いかかみきれない」超絶可愛い~~~!


♪ 小泉今日子 / 「なんてったってアイドル」
https://open.spotify.com/track/4aWokvGExBxN3TyLI0RGZh?si=0efed0ffa81e436b


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