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インプロワークショップ「ワタリーショップ」で「振り返り」を取り入れている理由。精密な振り返りは「今自分がどこにいて何をしているのか?」を知る機会

ワタリのインプロワークショップの特徴として「振り返り」というものがあります。

「振り返り」ってどういうもの?

即興芝居が終わったあと、演じた人たちに「演じてる時に何をどう感じていたのか?」を聞いていきます。
自分がやったことを自分がどう認識しているのか?
実感をたどりつつ語ってもらいます。
その人が共演者の言動をどう捉えていたのか?
お互いに聞き合います。
そこから見えてくるものがとっても面白く興味深いのです。

ダメ出しじゃない。相手に期待しない。強制もしない。振り返りは相互理解と自己成長のツールになる

この振り返りをなぜやろうと思ったのか?
ワタリが共同主宰している即興チーム「ロクディム」を発足した当初。
もっと良いものを!もっとクオリティを上げたい!と気合いが入りまくりのワタリはライブが終わるたびにすぐにメンバーに「あのときのアレなんなん?」「なんであのアイディアなの?」とそれこそメンバーに詰め寄るようにダメ出しチックに関わっていました。
ライブが終わって楽屋にはいった瞬間にそれだからよっぽどだと思います。
そんなやり方がしばらく続いていきました。

あるときメンバーの一人が

「怖くてもうできない」

と言いました。
そのときの衝撃はいまでも残っています。
そんなつもりはなかった・・・。
もっと良くしたくて・・・・。
ただそれを受けるメンバーの顔をいっさい見れていなかった。
自分の関わりが目的の真逆になっていたと知り、このやり方をヤメました。
「なんであれなの?もっとこうしてほしい」
というダメ出し&相手の行動を限定するようなやり方から
「あのときどう思ってた?」
と聞き合うスタイルになりました。

自分の実感を伝える。
それが相手にどう伝わったのか?をただ知っていく。
そうすることで自分か思っていたことが相手に全然うまく伝わっていないことや、相手の意図をまったく汲み取れていない自分に気づくことができました。
また相手の性質や性格をよく知ることもできます。
それを聞いた上で、さらに大事なのは
「こうしてほしかった」と相手に期待したりコントロールしたりするのでなく「じゃあより良くするために自分は何ができるのか?」を考えるっていうことです。

相手のせいにして相手をコントロールするやり方は
即興チームの解散を促進させます。
どんどんお互いに(または権力者以外が)縛り合い自由をなくしていくからです。
トップダウンでやってます!の劇団であれば問題ないのだけど、即興はこのやり方は不向き。

そうじゃなく
自責で「じゃあ自分は何をすれば?」と考える。
相手のことも知れるし、自分の成長にも繋がる。

と、まぁ簡単に書いてますが、
これは言うは易く行うは難しなやり方です。
ついつい相手に「こうしてほしい」と言いたくなってしまう時もあるでしょう。
でもそれが相手に呪いをかけるのと同じことだと知っていき、ただ振り返るということを学んでいきました。

数年前に何度か東北福祉大学の上條晴夫先生とコラボワーク「インプロ×リフレクション」をさせてもらった経験もこの「振り返り」のレベルを何段階も上にあげてくれた出来事でした

自分が感じたことを自分で捉えて言葉にする。
何が起きていたのか?
この出来事をどうしていくのか?
そんなことを一人で解像度高く考えられるのはよほどトレーニングを積まないとできないこと。
ハルさんのリフレクションはそれを皆でやれる素敵な時間でした。
自分が感じたことを活かすことができない人がたくさんいる。
そもそも解像度高く捉えることができない。
そこをファシリテーターを媒体としてしっかりと解像度高く考える機会を与えることができる!
参加者が
「なんか楽しかった〜」➜「これ・・これからの人生にとってもめっちゃ大きい出来事だった!」
になっていったのを目の当たりにして目から鱗。
ワタリにとって大きな経験でした。
そこからワタリのワークショップでも探究がはじまりました。

振り返りが得意じゃない人がいます。

いろんな理由があると思いますが、よくあるのが
「自分のことが好きじゃない」「自分よりも他者のことを重んじている」
「いまの本当の実力を知るのが怖い」
というものです。
だから自分の考えていることを曖昧にしておきたい。
ぼんやりしてるんです。
自分で自分のことを知ることに貪欲じゃない。
自分で自分を知るのではなく、それが大変だから人から自分を認められたいという人がいます。
でも人から言われてもしっくりこないから、それもぼんやりさせてしまう。
自分の軸がないから、自分から一歩出るのがとっても勇気がいる。
自分よりもいつもまわり。まわりが気になって仕方ない。

自分が自分を救える主にならないと誰も自分を救ってはくれない。
親友のように自分を見てあげて助けてあげないといけません。
でも一人だと難しい。
そういう人は楽しく笑いながら、かつ自分のことを振り返る環境にいくのが良いと思います。

こういうのがあまり前にできるようになってからが表現のスタート

自分のことをしっかりと見つめることができて、それを言語化することもできる。
他者の発言も受け止めて、「じゃあ自分はどうすればもっと良くなるのか?」を考え実行する。
そして一番大事なのはお客さんの視点。
観てる人がどうだったのか?
ここも丁寧にフィードバックしていく。
自分がやったことが他者にどういう影響があったのか?1番楽しませたいお客さんはどうだった?
自分がオープンになれず、自分の課題ばかり考えていると、ここには到達することはできません。
そしてここを見なかったら、表現として何も伸びていかないように思います。
振り返りをしていくことで、自分がいまどんな自分でプレイしていたのか?
自分が他者と繋がって即興していたのか?独りよがりだったのか?が見えてきます。

なので、振り返りはとっても大事!ということでワタリのワークショップ「ワタリーショップ」に必ず取り入れています。

デメリットというか注意点もある

下手すると話ししてばかりで全然即興できていないってことにはならないように注意が必要です。
自分のことしか考えていない人の振り返りは「できなかったことの言い訳」や「自分がいかに素晴らしいかの自慢」になってしまうことがあります。
そのときにファシリテーターはそれを打ち切って次に進める必要があります。
ワークショップも生物。バランスを見つつ振り返りのデメリットもわかりつつやっていくのが良いとおもいます。

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渡猛(TAKESHI WATARI)
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