竹の擦れる音が、怖かったんです。
芸事、道の歩き方は人の数だけありまして。各々の道に広がる匂いや湿度、音に気配。気づいて拾えるかどうかで終着点の充実度がどうやら変わるようです。
小学生の低学年でした、実家の裏山の竹やぶで葉の擦れる音、揺れてカンカンとぶつかる音が怖くて、たかだか10秒を駆け抜けることもできず、遅れて帰ってくるであろう兄をひたすら待っていたことがあります。数少ない、幼い頃の記憶です。立ちすくむ時間はいかほどだったのか。
今これを、畏れ、と色付けることは簡単ですが、とにかく怖かった。僕は今もこの感受性を持ち合わせているのだろうか。風に揺れる竹林の音に耳を澄ませているだろうか。夜、不意に広がる白粉の香りに気付けたろうかと自戒する日々です。
先生だなんて、偉そうなことなんて言えないんです。けれども、見ていただいて聞いていただいてあわよくば、誰かの糧になれたらよいなと、思う次第です。
今日は、七夕ですね。
ありがたくいただき、世界のどこかにタネを撒こうと思います。