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フキノトウ。大人になってわかる苦味。

子供の頃、食卓に刻んだフキノトウと味噌を和えてアルミホイルに包んで焼いたもの”ふき味噌”が並んでいた。焦げた味噌の香ばしさに誘われて摘んでみると、なんとも言えない苦味と鼻腔を抜ける風味。グゲと吐き出したい気持ちを抑えて白米をかき込み、ご飯の甘みで中和を試みるも、ほっかほかの蒸気に混じったふきの風味が再び鼻腔を刺激する。いやー、なんでこんなものをうちの親は…。苦くて変なニオイのするもの。大豆片が残った味噌のカリッとした食感だけは心地よかった。

さてそれからいく年月が流れまして、越してきた鎌倉の家の周りにはそこかしこにフキが芽吹いています。うちの実家よりも季節の巡りは半月ほど早いようですっかり花が開き始めているけれど、お構いなし。刻んでしまえばみな一緒、とあれもこれも子供達と一緒に摘んでは水に晒して刻んで同量の味噌と和え、お酢と酒を少々、ひとつまみのキビ糖とともに叩いてホイルで包んでオーブン焼きに。今では季節を知らせる白米のお供から、うどんやラーメンの薬味がわり、はたまたオーブン焼きにした鶏ムネ肉にもつけちゃったりと毎食のように口にしています。

春の苦味はデトックス、なんて言いますが、大人になって毒素が溜まっている証拠かしらと、今日も複雑な気分で旬の味をかみしめています。体内に毒素少なめな子どもたちは一度口によせたっきり、食卓に上がっても見向きもしませんが。


ありがたくいただき、世界のどこかにタネを撒こうと思います。