開き切ったバラがプリントされたDRIES VAN NOTEN AW2019-20
都内での会食の前に、DRIES VAN NOTENの展示会に足を運びました。プリントに用いられた花々はすべてDRIES本人の庭から、昨年の秋に彼が摘んで撮影したもの。秋のバラは蓄えたエネルギーをすべて開花に使うためにその美しさは格別、だそうで。プリントには花びらの溢れたものも少なくありません。撮影風景を見るとダリアなんかも花首で折れたものも少なからず。印象的だったのがバラの姿。一輪で完璧な美しさを湛えるバラは開花直後を愛で、飾ったり、写真に収められることが大概です。にも関わらず、上質な素材にプリントされたそれらは熟れて花びらが重力に抗えず、ぐずりとしたものも少なくありません。件のバラのほかには黄葉した楓も見られます。
切り花のいのちは人が愛で続けるかぎりは続くもの、と僕自身は朽ちる直前直後のバラを使っていけばなをすることも多いので、やたらしっくりきたビジュアル作り、と同時に不意に。
昨年秋のウィーン、先のミラノでのはないけを通じて漠然と感じていた、完璧を保つことへの無理筋感というか、もっと肩の力を抜いた、人間本位の完璧さから自然本位のありようにシフトしていこうという雰囲気をこのコレクションからも感じたのでした。もちろん僕の現地の体験は、いけばなというふるいを抜けた参加者から感じたものなので、とても断片的なものに過ぎないのですが、今回のコレクションを見て、少し仮説に裏付けがとれたような気がしています。勝手に。PRの関根さんと「彼は前世が日本人なんじゃないか」と思うくらいにこうした感受性に共感できる部分が多い、なんて話しをうかがったりして、かれこれ20年近く彼のクリエイションを追っかけてきて、やっぱり好きなデザイナーのひとりだなぁと再確認したのでした。
プリント用フラワーの撮影風景は以下よりご覧いただけます。
https://vimeo.com/319713792/8665890bf8
ありがたくいただき、世界のどこかにタネを撒こうと思います。