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吉村正和『心霊の文化史』

 英国が面白い国であることは、間違いない。海の向こうのフランスやドイツなどと比べても、いや、それぞれに個性的ではあるのだけれど、それでも面白い国であることは間違いない。ちなみに今の首相はボリス=ジョンソン。イートンからオックスフォードというエリート中のエリートの出身ではあるが、いやそれだからこそ彼の大学時代の専攻は西洋古典(「ギリシャ・ローマ文化学」あたりがより正確か。)であり、イリアースを誦じる人物でもある。

さて、上の本は西洋神秘思想史、ヨーロッパ文化史を研究されている吉村教授の著作だが、私たちのよく知る「タロット」のスミス=ウェイト版(aka「ライダー版」)も、「イギリス生まれ」である。

 しかし、という言い方は正確ではないかもしれないが、監修したアーサー・エドワード・ウェイトは、アメリカ生まれのイギリス育ちであるし、作画を担当したパメラ・コールマン・スミスもロンドン生まれではあるけれど、父親はアメリカ人である。この「純粋」なイギリス(イングランドというべきか)ではない二人が、類稀なるタロットカードを生み出したというのも興味深い。そういえば、ボリス=ジョンソンもアメリカ生まれだ。これは偶然。

イギリスと科学というテーマはそれだけで百科事典ができそうな量なので、当然ここで簡単に述べることはできないけれど、いわゆる科学的な思考・嗜好・指向と、それと同時に神秘主義的な流れもあることも表裏一体というべきか、むしろ「神を知る」という大いなる目的に向かって行く流れの一つではないかと思われる。そういう意味では、信仰と理性とは矛盾するものはないというのも当然だろう。

乱暴な「文系・理系」ということが意味のない分類であることはいうまでもないけれど(例えば哲学的な思考で最も重要なのは数学的センスであると思う)、ともすればサブカルチャー的な扱いにされてしまうエリアも、特に19世紀後半のイングランドでは、一つの知的な流れの一つなのだろう。

この辺りの知的潮流はもっともっと時間をとって調べたいところではあるんだけれど、とりあえず、この本の紹介だけに留めておこう。




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