FYI.17 外国人患者の医療費
前回は選定療養費について書きましたが、当院には外国人の患者さんも結構来院されます。ある日、患者相談窓口に外国人の患者さんが来られて、「以前、保険証を持っていなければ診察代が2倍になると聞いたのですが、本当ですか」と尋ねられました。
保険に加入していない場合や保険適用外の診療は、基本的に全額自己負担扱いになります。それが外国人だと更に2倍?!驚きました。しかし、確認すると実際に受診料は200%というか、自由診療として医療機関が診療価格を自由に設定できるということになっていました。
一見、人道的にどうなのか、外国人差別ではないかと捉えられかねない状況ですが、一方で、多くの医療機関が外国人患者の医療費不払い問題に頭を抱えていたことも分かりました。200%などの設定は、通訳対応等をはじめ、諸々の対応に係る諸経費の算定に加えて、外国人を診る場合に生じる不払いのリスクも込みで上昇したという側面もあるのではないだろうかと想像します。
だから、外国人の医療費が200%などと高額に設定されていることを不当だと、医療機関を単純に批判するのは少し違うような気がします。個人的には、日本人であろうと外国人であろうと、まずは適切に保険加入を進めていくことが最も重要ではないかと考えます。その上で、難民や生活困窮者など、保険に加入したくてもできない人たちへの支援をどう行なっていくか。これは、医療機関の問題というより国の問題、あるいは私たち国民一人ひとりの問題ではないかなと思うのです。
今どき、医療にはお金がかかります。「3割負担」の恩恵を享受している私たちの中には、コンビニ感覚で受診する人もいるかもしれませんが、その背後には、残りの7割を払っている保険者(私たちが加入している保険の運営主体側)がいることを忘れてはなりません。つまり、病気になってもならなくても、もしものためにと保険に加入する人たちが出し合うお金があってこそ成り立つ仕組みになっているのであり、日本ではそれが国民皆保険制度としてあるということ。そのお金を国民みんなで出し合いましょうという発想に基づく制度があるということです。これを当たり前と思ってはいけません。米国のように国民皆保険制度を持たない国もあります。
病に罹って苦しい時に皆でサポートし合う仕組みがあることは本当にありがたいことだと思います。一方で、昨今の医療費はどんどん高額になっていって、保険制度でカバーしきれなくなりつつあるようにも感じています。それにより、結局お金がないと受けたい治療が受けられないという状況が、外国人に限らず、私たちの多くにとっても深刻な問題になってくるのではないか。この問題はどう考えていったら良いのだろうと思うこの頃です。