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メタバース空間がユーザーの個人体験を引き出す面白さ【日経COMEMO】

メタバース空間の音楽フェス『JM梅田』(阪急阪神ホールディングス主催)に参加して、とても面白かったのでレポートします!

このレポートを通してお伝えしたいテーマは
「私たちユーザーにとってのメタバースの面白さとは?」です。

バーチャル空間「メタバース」には、通信会社、エンタメ、ファッションまで様々な企業が参入しています。

※上記記事の「バーチャル大阪」はKDDIと自治体(大阪府・大阪市)が連携。今回書く『JM梅田』は私鉄のグループ企業・阪急阪神ホールディングが主催したイベントなので、座組みが異なります。

前回の記事で書いたのは、「メタバースって何だろう?」ということでした。VRゴーグル等がなくてもスマホからバーチャル空間に入れる点については、コアユーザーから一般人への広がる可能性を感じました。

それでは今回は『JM梅田』のライブ紹介に行きたいと思います!

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私はアニメ『KING OF PRISM』(以下『キンプリ』)が好きで、推しキャラがライブに出演するので参加した次第です。

■いざ、メタバース空間へ!

降り立ったのは大阪・梅田駅前の交差点。阪急百貨店や阪神百貨店の建物とその周辺が実物と同じように立ち並びます。

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面白かったのが、ログイン時に選べる自分のアバターでした。選択できるアバターのひとつが“『北斗の拳』に登場する雑魚キャラ”。『キンプリ』にもモヒカン頭のモブキャラが登場するので、このアバターを選んだファンも多かったです。
モヒカンさんはゴツい見た目だけど、拍手の時は肩幅よりも小さく手をたたくなどアクションがかわいくて、そのギャップも愛されました(笑)。
Vtuberファン向けには「推しの名前Tシャツを着て歩けるアバター」(要課金)などのサービスがあってうらやましかったです。

推しの出演はラスト回だったので、それまでアバターで梅田の街を歩いてみました。
ところどころにある百貨店の案内板をタップすると、各社のwebサイトやYouTubeの動画に飛ぶことができます
「関西テレビ」や、「大音ラボ」(大阪音楽大学内の音楽プロダクション)など、地元企業の出展も。こういうお土地柄が出てると、こちらも「大阪に遊びに来たなぁー」感が盛り上がります。

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私のように関西文化を知らない人が訪問しても、その企業を知ることができたり、オンライン通販が利用できるのが良いですよね。
おそらくメタバースのイベントに参加する企業には、通販(Eコマース)の盛り上がりへの期待があると思います
ひとりのお客として見たら、将来的にはもう少しゲーム性が生まれるといいなと思います。
『JM梅田』フェスのグッズ物販が欲しかった!

そしてファン的な目玉は『キンプリ』やVtuberなど、ライブに関係しているコンテンツ企業の展示ブースです。
推しの作品ロゴ! 推しを生み出したコンテンツ会社! 推しの新規紹介動画―! 
コロナ以降、リアルイベントが開催されなくなってしまった『キンプリ』ファンにとって、これだけでも情報量過多です!(大歓喜)

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記念撮影をするためにファンが集まってくるので、見知らぬアバターさんでも「おっ、『キンプリ』民だな」とわかります。ファン同士で集いたい私たちは、自己紹介に『キンプリ』のセリフなどを入れて、お仲間だぞアピール。
固有のファンが集まる拠点を作るのは大事だと思いました。

■VTuberファンと異文化交流

『JM梅田』は、Vtuber、アニメ『キンプリ』など、本来は別々のコンテンツが一同に介したライブイベントです。
逆に言えば、それぞれに推しやファン層は異なるため、合同ライブとしての一体感を感じられるのかな? という心配がありました。

バラバラな参加者を繋いだのがTwitterでした。
どの参加者も、公式ハッシュタグ #JM梅田 を使って実況していました。
最初に盛り上がったのは『北斗の拳』ケンシロウ、初音ミクといったライブに登場する著名キャラクターの話題です。
私は1日目の参加だったのですが、街には『北斗の拳』のネタがいっぱい。
「ケンシロウさんがライブに出る!」「動画、推しと一緒にケンシロウさん登場するとか面白い」などのつぶやきを読んで「いいね」したりしていました。

Twitter繋がりで言うと、予想以上に思い出になったのが「ポイントラリー」でした。
『JM梅田』の企画で「街に落ちているキラキラを集めて、スペシャル動画を見よう!」というのがあり、気軽な気持ちでキラキラを集め始めたら、全部で31個なのに29個しか見つけられない!
あと2個なのに…!どうすればいいんだ……。
#JM梅田 をつけてTwitterでつぶやいたところ、知らない人からアドバイスが届いたのです。
「オプションでアバター表示数を0にすれば見つけやすいかもしれません」
アドバイスによって無事にキラキラが集まり、スペシャル動画が見られました!

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教えてくださったのは、Vtuber「神楽すず」さんのファンの方。

「神楽すずさんは『キンプリ』が好きで、こんど同時視聴もあるんです」と教えてくれました(3月21日同時視聴、ファンのTwitter感想は #りくすずえとら タグで見られます)。

今回知ったのは、Vtuberファンには「教えてもらう/あげる」「他の人の推しにも関心を持つ」という共有文化があることでした。『キンプリ』のライブを見て感想をTwitterにつぶやいてくださった方も多く、私たち『キンプリ』ファンもVtuberさんのライブを見て感想をつぶやいたりと、異文化交流が盛り上がりました。

■「推しと同じ次元で会えた!」

Vtuberさんと言えば、このメタバースでとても驚いたのは、Vtuberファンの感激ぶりでした。
「推しと同じ次元で会えた!!」
そんな言葉がTwitterからたくさん流れてきました。

街にはVtuberさんが現われて、アバター姿のファンとの「握手会」もあったそうです。

Vtuberのファンにとって、推しは「アイドル」的な存在。でもいつもは「画面越し」にしか見られないし、そもそも現実空間で会うことが叶わない。それが「自分がアバターになる」ことで「同じ2次元で会えた」という感激に繋がったのですね。

アニメ『キンプリ』も、推しがスタァとしてライブをする物語なので、今回のライブは、自分たちが推しの作中に出てくるライブに行ったかのような気持ちになれました。

『キンプリ』のようなアイドル作品とバーチャルライブの親和性は高く、
「メタバース×キャラクターライブ」に今後の可能性を感じました。

■現実の街と、ファンの思い入れが結びつく

『JM梅田』では、関西の『キンプリ』ファンが“聖地梅田”に盛り上がりました。

「うちらの聖地、梅田でライブに参戦できるとは思ってなかった!」
「梅田の映画館のフラワースタンド出すんで、参加者を募集します!」

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【写真提供/めばえさん フラワースタンドには寄贈者の言葉が。※「セプテントリオン」は作中のユニット名です】

おそらく梅田だったことに最も喜んだのは、近畿地方の『キンプリ』ファンではないでしょうか。
“聖地梅田”の背景には、『キンプリ』の応援上映が関係しています。

アニメ『キンプリ』は、映画館で行われる「応援上映」で人気になりました。全国各地の映画館で行われていたので、土地ごとに異なる応援文化が発展しました。
その中で、話題になった映画館のひとつが「梅田ブルク7」です。“大阪人”が集まるためか、さまざまなペンライト芸やかけ声が生まれて「面白い」と評判になったのです。
私も現地でしか見られない応援上映が見たくて「梅田ブルク7」に遠征したことがあります。
https://note.com/watanabeyumiko/n/nf0ac45fc5293

そうした背景がもあり、「梅田」という土地に思い入れを持っている『キンプリ』ファンが多かったのです。

メタバースで『キンプリ』ブースが出ている場所を特定し、現地まで撮影に行った梅田の民もいました。

■バーチャルの街が、ファンが持つ脳内ストーリーを引き出す

ライブも、アバターでジャンプしたり、リアクションを取ったりと、とても盛り上がりました。

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今回の『JM梅田』に感じたのは、「提供されるコンテンツ以上の情報量を、ファンが自分の脳内で補完しながら受け取っている」ということでした。

Vtuberファンが「推しと同じ次元で会えた!」と感動したり、『キンプリ』“聖地”ファンが喜んだりしていましたが、いずれも
「ファン自身の持つ脳内ストーリーが膨大!」というところが共通しています。

時折、「メタバースで街を作っても、ゲーム的なものが少ないからうまく遊べない(ゲーム性がない)」という言葉も聞くのですが、
今回のライブに関しては、現実の街を摸したというだけでなく、
その街にお客さんの脳内ストーリーが合わさることで、初めてひとつのコンテンツとして完結するのかもしれない、と思いました。

「お客さんの脳内ストーリー込みで成立している」というのは、“リアルの野外フェスだってそうだ”、というご意見があると思うのですが、
メタバースでは「お客さん自身が持つ個人的な脳内ストーリーを、バーチャル空間で感じられた」、
その体験がスマホで多くの人ができて、SNSで共有できた、というところに私は感動しました。

今回のバーチャルライブの面白さは、「現実の街を摸した」「人気キャラが登場する」以上に、ファン同士の異文化交流や、ファンが自分の脳内ストーリーを仮想空間に注ぎ込めた点にあると思います。
それが「現実の街を摸した仮想空間の面白さ」であり、今後のバーチャルコンテンツの基礎土台となっていくのではないかと思うのです。


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