渡邊織音

東京都出身 構造設計・舞台美術家 京都_北山舎メンバー・福島_NPO法人野馬土_理事・…

渡邊織音

東京都出身 構造設計・舞台美術家 京都_北山舎メンバー・福島_NPO法人野馬土_理事・演劇_グループ・野原 http://wshikine.s1001.xrea.com/

最近の記事

土は種でできている②

私たちの言語が伝えることの難しさやもどかしさに苛まれている頃に、潜在していた未踏の現象が、地球を言葉なく覆い始めようとしてる。 私たちがいく世代もの分断と透明を、無色の言葉で消毒している頃に、毒ともならない生命が、単純そして飛躍的に生まれ、増え続けている。 霞んだ答えを大きく膨張させている頃に、多くの問いがもたらされた。 世界がくすんできたころに、この世の山は明瞭に現れてきた。人間と経済が消えて、生命がいつもの場所に戻ることができて、このことが私たちの生きている時代のわ

    • 土は種でできている①

      種は土の隙間を見つけるように、ひっそりと便乗し、その隣人にもよるが、運が良ければ生えてくる。その運や淘汰には、秩序や混沌とも言えないことがきっと起きているに違いないと思うときに、人が育ててきた秩序のある畑を中央線から見かけた。 そこは確かな整備・分類と同時に収穫への期待がふくらんでいるような気がして、必要に応じた生活の選択を、効率的な技術や、数字をつかいこなした幾何学にあふれたようにみえる、あるいは見えているにすぎないことを、わたしは確認した。畑の周りには秒刻みの電車と分刻み

      • あなたが思い出す風景に②

        草花が生えるシアター屋上の風景をそのままを生かすことが、舞台上で行われている積み上げていく空間性とは違う形で立ち上がることがある。この出来事に出会うためと、庭園の営みを分けてもらうために、作物を育てることによって、土との対話が始まった。土は懐かしい香りを提供してくれる。特に雨上がりに蒸発する水分に含まれている微細な粒子が、私たちのさまざまな想起を構成しているのである。粒子は土そのものや、微生物、菌類、雨に含まれる排気ガスや、風向きによっては潮風を運んでくれたり、気圧の高低差に

        • あなたが思い出す風景に①

          屋上庭園に、鳥や風の気ままなおもむきによってもたらされた種の循環に、土が種で構成される風景になろうと、はたらきかけたその姿は、ここが武蔵野台地の原野である、ということを強く思い起こさせ、私たちの目からひっそりと身を潜めていた。 人がその人生の断片を舞台上であらわにする頃、この15年でその台地はなにごともなかったように、野性を育んでいた。その大地といってもいい姿は、わたしたちによって再発見されはじめていた。この吉祥寺シアターが更地になることもなく、ここは再考されている。とても大

        土は種でできている②