性虐待被害ートラウマに苦しむ人へ。当事者からあなたに伝えたいこと。
私は性虐待のサバイバー
私は、家族からの性的虐待のサバイバーだ。
私が4歳のとき、10歳年の離れた兄が私に性加害をするようになり、それは10歳で養子に出るまで6年間続いた。
私は今、35歳を生きている。
35年間を振り返ると、私は9割方死んだままで生きていた。
心が死んでいた。
顔は笑っていても、いつも心は死んでいた。
死んでいることにも気がつかずに生きていたように思う。
4年前にとある人から、「好きなこと、うれしいことについて教えてください」と言われた。
頭ではわかる。
しかし、心で「うれしいかんじ」がわからなかった。好きなように振る舞うことはできる。しかし「好き」という心の感覚がわからなかった。
今は身体で感じとれるようになってきた。
うれしい感じ、というのは、身体の芯の方からホワっとした温かいものがにじみ出てくる感覚。身体の芯のところから感覚として湧き上がってくるものだ。
好きという感覚。これも、身体の奥の方が「ふわっ」と震えるようなこそばゆい感じ。
この感じを感じ取ることができるようになってから、私は人知れずずっと抱え続けた、おして時折猛烈に襲ってくる獰猛なほどの「死にたい」という感覚が少しずつ薄れていった。
ずっと、生きたいと思ってきた。
同時にずっと死にたいと思いながら生きてきた。自分がなぜそう思うのかを振り返ると、必ず性虐待の記憶にたどり着く。
ストレスが一定値を超えると、幼少期に膣に挿入された感覚や、上にのしかかられる感覚がフラッシュバックしてきて、それは猛烈な恐怖を伴う。
35年間生きてきて、そういう感覚に襲われて冷や汗をかいて飛び起きるが幾度もあった。
悪夢を見、いついった恐怖感が蘇ってくるのかわからない、記憶や自分自身に訪れる感覚におびえながら暮らさなければならない。
また、身体に刻み込まれた感覚があがってこないよう、自分の感覚をマヒさせて、なんとかこれまでを生き延びた。
これをどうにもすることのできない無力感や、身体の中に渦巻く獰猛な自分をどう諫めて生きればいいのかがわからなかった。
だれに相談しても、どんな文献を読んでも、ヒーリングテクニックを身に着けたり、カウンセリングを受けても、本当に”自分を生きている感覚がない。”と感じながら、それでも生き続けることは、一言で言って、地獄の他にいいようがないほどの地獄だった。
性暴力はとても言いにくく、その影響を語ることも難しい。
性虐待を受けた自分は、汚れていて恥ずかしくて、生きている価値のない人間なのだと思いながら生きること。
それらの思いを感じながら他者と関わりながら生活しなければならないことは、生きることをとても難しくした。
感覚を麻痺させるということは、生きていく上で伴う痛みも、喜びもどちらも感じ取りにくくなる。
心の痛みに鈍くなるので当然、人間関係がうまくいかなくなってくる。
家族から性虐待を受けると、今度は身近な人を信用できなくなる。信用できないでいる自分にすら気がつけずに生きることになる。
人生の悩みや苦しみは常に、人間関係から訪れる。
人を信用できないと、すなわち人生は地獄と化す。
性虐待の影響について、世の中で語られることは少ない。そもそもセックスについて、性について語ることがタブーとされた世の中で、性虐待がもたらす影響についてのニュートラルな記事を探し当てることは、あまりにも難しかった。回復について必要な知識を得ることもとても大変な作業だった。たくさん遠回りをした。
30年も前のことを掘り起こし、不幸自慢?そんな風に思う人も、中にはいるかもしれない。不幸自慢に浸るつもりなんてないのだということを先に言っておきたい。
私は今、35歳になり母になった。
幼かった当時、自分の身に何が起きているのか、わからなかった。
子育てをする中で、命を活かすということに向き合う中で、だんだんと自分の身に起きたことが非常に残酷なことであったことを理解した。
また、性虐待が人生にもたらす影響について理解してきた。
そして、このような地獄のような経験を、これから生まれてくる子どもたちにさせてはいけないと思うようになった。
性虐待の記憶に自分の人生が破壊された人があれば、その方たちの人生に寄り添いたいと願う。そして、自分が地獄の苦しみから回復するのに役立った経験を共有し、少しでも役に立つことができれば。
本当は、心を感じながら生きたかった。
本当は、人を信じ、前をしっかり見据えて生きたかった。
ー性虐待により、心が死んでしまった方へ。
あなたは何も悪くない。
そして、あなたが求めれば必ず回復し、自分の心を、命を、人生を取り戻すことができる。
ー娘や兄弟が性虐待にあったという、サバイバーの家族の方へ。
一人で抱えるにはあまりにもツライ。忘れなさい、となかったことにするのではなく、加害者を責めるのではなく、まずは、被害者の心に寄り添っていただきたい。そして、適切な機関につないでください。
性虐待で死んでしまった心を取り戻し、命をつなぐプロセスについて
自分の経験から役に立ったことを、このnoteを通して、できるだけ具体的に伝えていきたいと思う。
今、そういう思いでこの記事を書いています。
どうか、必要な人に届きますように。