アラン・ドロンと『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
アラン・ドロンが亡くなった。
大好きな俳優。大学時代、『太陽がいっぱい』『地下室のメロディ』『冒険者たち』『サムライ』『さらば友よ』『レッド・サン』、浴びるように見ていた。
アラン・ドロンの作品の好きなところは、なぜかバッドエンドが多いこと。『太陽がいっぱい』や『地下室のメロディ』のように完全犯罪の達成目前で犯行が露呈してしまったり、『冒険者たち』では友情と恋慕でゆれながら、思いを遂げられないまま死んでしまう。この無念さが、ドロンの悪魔的な美貌と合わさって、映画をぐっと奥深いものにしている。
アラン・ドロンは、特にタバコのくわえかた、銃の構えかたが素晴らしい。
僕はふだんタバコを吸わないので、映画の中でタバコを吸うときはいつもドロンの吸いかたを参考にしていた。軽く口の端にくわえながら、セリフを喋るドロンの姿は兎に角、格好いい。
『19』の撮影中、野沢那智さんに実際にアラン・ドロンとアル・パチーノのちがいを目の前で演じてもらったことがあるが、声だけでドロンがそこにいるようだった。
香港の映画監督ジョニー・トーは、『冷たい雨に撃て約束の銃弾を』で主人公にアラン・ドロンをイメージしていたらしく、確かに設定も『サムライ』や『仁義』を彷彿とさせる役柄だった。最終的には、ドロンではなくジョニー・アリディが渋みたっぷりに演じていて、素晴らしかった。
もし、アラン・ドロンが出演していて、アンソニー・ウォンやラム・シューたちを従えた銃撃戦をスクリーンで見ることができたなら、感動のあまり泣いしまうのだろう。
全然、関係のない話だが、福岡に「あらんどろん」という居酒屋があって、偶然通りかかって入った店だがとても美味しかったのと、居酒屋の店名にもなってしまうアラン・ドロンって偉大だなと友人と話したのを思い出した。