革命暦*ブランキー・ジェット・シティ
革命期、恐怖政治下のフランスでは、独裁政府がその急進過激ぶりでカレンダーまでも刷新した。その新たなる暦、いわゆる革命暦においては、1か月が30日で統一される(365日中、余る5日は年末に祝日としてまとめられる)。また、1週間の長さは10日に変えられた。これで1か月はきっちり3週間ずつになる。週の途中で月が変わるという不調和はもう生じない。
独裁政府がこの暦で賭けていたのは、とりもなおさず合理性である。そして合理性とは10進法である。月の数が12となるのは、まあ仕方がない。そうでないと月30日・週10日が崩れるし、何より季節の数4で美しく等分できなくなる。しかしながら、1日が24時間、1時間が60分、1分が60秒であることにいかなる必然性がある? なぜ整然たる10進法で統一しない? そのような次第で、1日は10時間に、1時間は100分に、1分は100秒に改められた。だがそうすると1日の長さが100000秒になり、旧体制の86400秒から大きく伸びてしまう。ここで独裁政府は、その頑迷さからは考えられないほど柔軟な発想を見せた——1秒の長さそのものを変え、従来の0.864秒分に圧縮してしまえばよかろう。
かくして完成した新時間システム「10進化時間」は、1793年9月から施行された。これからフランスにおいて正午は5時である。それは同時に1日の5割が完了したことも示す。もう1分の68%は何秒かなどと頭を悩ませる必要はない、以後68%は常に68という数字のままに表せる。1日の39.2%が経過した時刻は? 計算自体が不要、それは見たままに3時92分のことなのだ。そのように実に合理的と信じられていたこの時間システムは、全く国民に受け入れられず、実用化後わずか半年で撤廃された。
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Blankey Jet Cityの曲「皆殺しのトランペット」には、ギター・ボーカルの浅井健一がロンドンに行った際の回想が語りとして挿入される。その時彼はリージェンツ・パークの高台にいて、そこからはロンドン動物園の一角を見下ろすことができた。彼は大人になってから動物園というものがあまり好きではなかったので、感慨なく、ただぼんやりと眺めていた。すると、ある事に気がついた。一羽の大きな白頭鷲がいて、その白頭鷲は簡単な柵に囲まれてはいたのだが、足枷のような物ははめられておらず、鎖につながれてもいなかった。その場所には高い金網もなく、天井もなかった。白頭鷲と青空との間には、妨げるものなど何もなかった。
それなら、白頭鷲はいつでも自由に大空へ飛び立てるはずだった。逃げようと思えばいつでも逃げられるのに、なぜこの鳥はそうしないのだろう。不思議に思って見ていると、ふいに、それまでじっとしていた白頭鷲が翼を広げた。その翼は、異様に小さく、異様に短かった。白頭鷲は何度も何度も羽ばたこうとするのだけれど、その体が浮くことは決してなかった。浅井健一は言う。「誰かがその白頭鷲の翼を切った」
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