遺産になった道具たち その2-コツ
前回は刷毛のお話をしました。刷毛は渡邉製本では日常的に使われていますが、今回は今となっては頻繁には使われなくなった製本道具の紹介です。
上の写真の、四角い木の塊が今回の主役です。
本の背に丸みをつけるための道具「コツ」
これは「コツ」という、本の背を丸くするための道具です。樫や桜などの堅い木材でできています。写真のコツは長さ90mm×幅70mm×厚さ25mm位ですが、他にもサイズの違うものがあります。
使い方はこんな感じです。
コツで丸みを出したままでは形が戻ってしまいますので、この後、両サイドに耳を出す加工をして、さらに、ニカワで寒冷紗やシワ紙の補強材を貼りつけて強度を出します。
今では機械で加工できない特厚本やダミーの制作で使う
今は機械化されていますので、コツにほとんど出番はありません。
渡邉製本では、束見本制作や、機械の対応サイズを超えた特厚本の加工の際に、手で出した丸身が戻らない様にコツで背をこすり込んでいます。(丸身出し機が壊れた時の非常時にも活躍します)
上の写真を見ると、左側のコツがピンと角の立ったの四角い形なのに比べて、右のコツは角が削れ短辺の真ん中が窪んでいるのが分かるかと思います。
これは、長年使い込んできた証拠のくぼみであり、そして色も使い込むことで変色した飴色になっています。
このコツがいつごろから渡邉製本にあったのかは不明ですが、機械化する以前の昭和30年代から使い込んできたものなのでしょうね。
ちなみに、弊社にはこんな使い込まれた飴色のコツが4個位まだ保管されていて、手加工で丸身出しをする際には、現役で活躍してくれています。
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