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本の表情にアクセントをつける -小口色塗り-

製本の技法も様々なものがありますが、今回は「小口色塗り」とか「三方色塗り」と呼ばれる本やノートの切り口に色を付ける技法のお話です。

様々の色の小口塗


 【はじめの一歩:色塗り校正は必須です】
この加工で、まず初めにお客様と打ち合わせしなければならない重要なポイントは、塗る色の選定です。
大体、印刷インクの番号での指定が多いのですが、この加工で使用するのは主に布やボタンを染める粉の染料ですのでそれほど多くの種類はありません。指定の色に合わせて、染料を選び、時には2種の染料を混ぜ合わせて色を作っていくのです。もちろん、水の量に対し何グラム溶かすかも、色を合わせていくうえで必要になります。

2色の染料を調合して色を出します
少し赤を混ぜた青色で塗っています

時には何度もテストした色を提出して、お客様と摺り寄せていくこともあります。例えば、紫でもこれは明るすぎるから、もっと、表紙の用紙に色に合わせた、黒に寄った濃い紫にしてほしいとか。緑は緑でも、見本より青みがかった緑にしてほしいとかの要望が出ます。
そうしますと、再度、染料の配合や濃度を再検討して、見本の色を作り出しています。
 
【本番の製作】
弊社の場合は、昔ながらの刷毛塗りで加工していますが、機械のスペックに頼っていないので、どんなサイズどんな厚みにも限定されることなく、フレキシブルに色塗り加工に対応しています。

B4判コデックス装の本に四方色塗りをしたもの

上の写真のように、B4判でも柔軟に対応ができます。

本製作では、染み込みを防ぐために古いプレス機(昭和に作られた丈夫な機械です)で締めておいて、染料を刷毛で塗っています。この際、一番神経を使うのは色ムラなのですが、弊社の職人さんたちは均一に塗れるように経験上から工夫をして加工してくれていますので、かなり安心です。

A4ヨコ並製本の色塗りの様子


 
【色塗りあるある】
本文用紙は上質ですと一番、無難です。もちろん、コート系マット系でも対応していますが紙によっては染み込みがきつかったり、水分によって波を打ってしまったり、一枚の板のような硬さになってしまうこともあります。コミック紙のような大ラフの紙は染み込むこともデザインの一部と考えていただければOKなのですが・・・・。

コミック紙を使用してB5並製にブルーの色塗り

この本の場合も、色の染み込みはデザインの一部と考えていただいて、OKをもらって製作しました。

同じ紙で同じ染料なのに色が変わってしまう。
これも良くあります。色塗り校正で決めた色で本番を始めると、印刷機を通った刷本の場合、見本より色が濃くなってしまうことがままあります。このため、弊社では必ず、白紙と本番の刷本では色の発色が変わってしまうかもしれないことを前もって伝えるようにしています。
最も丁寧なやり方は、本番と同じ条件の色校正紙で、再度、染め色の発色を確認してもらうことです。これをやっておけばかなり安心できます。
 
最後に、色塗りに興味のある方は弊社のYoutubeチャンネルから作業動画がご覧いただけますので、下記のURLから訪問してください。
 
https://www.youtube.com/shorts/rGCBgxUlumM
 
(記事担当:社長)


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