パタッとよく開く上製本の話-背ヌキ式なんて呼んでいます-
モレスキンノート、知っていますか?
皆さん良くご存じの「Moleskin Note」(モレスキン)。大きな文具店のノート売場には必ず置いてある、そう!あのゴムバンドが付いている黒いノートです。
弊社でも同じ造りの依頼をいただくことがあります。そういった場合、「モレスキンと同じ造りですね?」なんて確認することも、ままあります。それでほとんど通じますから、さすが有名ノートですね。
どこが普通の上製本とちがうのでしょう
この造りの特徴は、表紙に背ボールと溝がないことです。この点が、普通の角背の上製本と一番異なる点です。表紙の背に何もないことから、弊社では「背ヌキ表紙の上製本」⇒単に「背ヌキ式」なんて呼んでいます。そして、ノド元迄パタッと開く造りにできることがこの製本の最大のメリットになります。
普通の角背の上製本の様に、表紙貼りの背の部分に1枚ボールが付いていると、それが少し邪魔をしてノド元迄開きずらくなってしまいます。もちろん、背ヌキ式でも本体の加工に「ニカワ」を使って補強紙を貼ってしまいますと、若干開きは悪く(固く)なってしまいます。その部分をボンドのみで「寒冷紗」を巻く方法で加工することで、フレキシブルになりノドまで真っ平に開くことが実現できるようになります。
ノドまで開きが良いのって本当かな?
上の写真でもお分かりになるように、結構ノド元迄開いていますよね。背の加工にニカワを使ってしまうと、もっと固くなってしまいます。このような、特性があるからこそ高級ノートやダイアリーなどによくこの製本が採用されているのです。
角丸と相性が良いのも特徴です
そして、毎日使う目的のため、角が折れ曲がっってしまわないように、「角丸」といってエッジを丸く加工するのもこの製本では一心同体のように行われています。
中身だけ角丸にして、表紙は角のまんまっていうのも、デザイン的にバランスが悪いですよね。そうなりますと、ハードカバーの表紙も四方を丸くするのは必然です。この角丸加工の綺麗さが全体の造形を決めるといっても過言ではありません。この加工は熟練の技を持った職人が一角一角(ひとかどひとかど)、寄せて丸めてつぶしているのです。機械のみで作った角丸表紙との違いは一目瞭然です。今度、皆さんも機会がありましてら、この部分だけ着目して違いを探してみてください。
角丸表紙加工に関しては、以前ブログに書きましたので、興味のある方はこちらをお読みください
丁寧な仕事の『角丸』-表紙貼りの技術