真逆の魅力を持つ、『映画大好きポンポさん』と『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』
先日、『映画大好きポンポさん』『ガールズ& パンツァー最終章 第3話』『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を立て続けに観ました。どれも素晴らしい作品でしたが、特に『ポンポさん』と『エヴァ』はこれでもかと言うぐらいに真逆の魅力を持った作品でした。
この二つの作品それぞれの感想を書くことで、いかに真逆であったかを伝えられたらと思います。
(※極力避けますが、軽度のネタバレを含みます。)
◎映画大好きポンポさん
この作品は一言でいうのなら「気持ちの良い」作品でした。
無駄な説明を極限まで省き、テンポ良く進む序盤のストーリー。伝えたいことの明確さ。序盤と終盤の美しい対比構造。全て気持ちが良いです。
その中でも一番気持ちの良さを感じたのが、劇中で主にポンポさんの口から語られる「良い映画」の定義を実際にこの映画が実践しているという点です。まあ、言ってしまったからには……的なことではあるのでしょうが、1本の映画を通して有言実行を見せつけられるのはなんとも爽快です。
例えば、「90分以上の集中力を逆に強いるのは優しくない」「映画っていうのは女優をいかに魅力的に撮るか」「万人ウケを狙うとフォーカスのボヤけた映画になる」みたいなセリフが出てきます。
そして、実際にこの映画は、上映時間は90分程度だし、ヒロインのナタリーの成長をじっくり描くシーンがあり、伝えたいメッセージの具体性がとても強い。
映画の内側でも外側でも楽しませてくれる、素晴らしい作品です。
さきほどの「90分以上の集中力を客に強いるのは優しくない」、つまりは「映画は短いほうがいい」というようなセリフに見られるような一つの価値観をしっかり主張するようなセリフがこの映画には多く含まれています。
例えば、物語の終盤で一番のキーワードになる「何かを得るためには何かを捨てなければならない」というセリフ。この価値観って、人によってはまったく共感しえない可能性もあると思います。逆を言えば、刺さる人にはすごく刺さる。このようなターゲットを絞ったセリフだからこそ強く印象に残る。これがフォーカスを絞るということなのでしょう。
この映画にはそういうセリフがたくさんあったように思いました。ちなみに、僕が一番印象に残ったのは、ナタリーのセリフ。「夢を捨てるためにここに来たんじゃない、叶えるために来たんだ」
いろいろと感想と書きましたが、まとめるとこの作品の魅力は「短くテンポ良く」「明確なメッセージを伝えたい人間にだけ届けている」点だと思います。
◎シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
こちらの作品は、観る行為そのものが作品なのではないか、と思えるものでした。
長きに渡って描かれてきたこのシリーズは、誰もが結末を望んでいたのに、結末を観ることに一抹の寂しさを憶える。そんな風に思っている方は多いのではないでしょうか。僕はそういう思いもあってか、公開してすぐに観る気にはなれなかったのかもしれません。緊急事態宣言の影響で物理的に観る機会が奪われていたこともありますが……。
実際のストーリーとしては、全てのキャラクターたちに結末を与えるような内容でした。
この作品を観る前は、「どうせ何だかんだ言って、また納得いかない終わり方するんだろうな」なんて考えている自分がいましたし、どこかでそれを望んでもいました。
自分はテレビシリーズ、旧劇場版、新劇場版は一応全て観ていますが、このシリーズの世界観の理解はしっかり出来ている方ではないと思います。しかし、そんな自分でも、はっきりとこれで終わりなんだなと感じられる内容であったのは確かでした。
長年追いかけてきた「結末」を用意してくれてありがとうという気持ちと、「結末」を与えられたことで「次を夢見ること」を奪われた寂寥感が同時に押し寄せる、そんな感想を抱きました。
◎2作品の対称的な点
とても抽象的な感想になりましたが、では、どのあたりがこの二つ作品が真逆に感じるのか。
まず単純に上映時間が長さです。「短い映画が良い映画!」とする『ポンポさん』に対して、『エヴァ』は2時間30分ほどあります。『ポンポさん』を先に観た僕は、こんな長い映画耐えられるかなあと心配になったものです。笑
しかし、『エヴァ』に無駄なシーンがあったかというとそんな風には思いません。むしろ、これまでの全てに結末を与えるとなるとむしろそれくらいの時間がなければ納得はしなかったかもしれません。
もう一つの相違点は、メッセージの受け取り手です。
『ポンポさん』は伝えたい人間のフォーカスを絞って、ストレートにメッセージを伝えていたように感じました。対する『エヴァ』は、『エヴァンゲリオン』に触れたことのある人すべてに結末を与えるだけで、そこから何を感じ取るかはその人の自由なのではないでしょうか。この作品を観ること自体にこそ意味があり、この作品の中身になにを感じるかはそれぞれが自由に選べば良い。そこは重要ではない。そんな気がする作品でした。
どちらの作品も一度観ただけなので、複数回観ることで感想が変わるかもしれませんが、何とも対称的な2作品を立て続けに観たなぁと思う、久々の映画鑑賞でした。