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たまにはアップルを誉めてみるコーナー

 たまにはアップルを誉めてみたい。
 ということで、今回は「アップル製品から革新性が失われている」というよく見かける主張に対してアップルの立場からの反論を試みたい。

 さて、iPhoneが発売されるたびに言われることがある。
「もうこれ、アンドロイドの後追いだよね」
 確かに、iPhone11も十分高性能だが、世界最先端、というわけではない。
 しかし、よく考えてみれば「iPhoneが世界最先端」というのはそもそもアップルは目指していないのではないだろうか。
 だってよく考えて欲しい。最先端の技術を開発するというのは、かなりの金がかかる。しかしアップルが重視するデザイン、というのはそこまで費用が必要だろうか。確かに、デザイン通りの筐体に仕上げるには費用は掛かるだろう。しかしデザイン自体は数名のデザイナーがいれば十分なのではないか。新技術の開発などより遥かに安価で済むと思う。
 そもそも、アップルはもはや技術の進歩や革新を目指していない。
 特にジョブズからホモクックに時代が移り変わってからは、「高級品」へ向かおうとしているのは明白だ。
 つまり、アップルが目指しているのはブランドである。
 2つ目がデザイン
 3つ目が統合された経験(と書いてユーザーエクスペリエンスと読ませるらしい。意識高い白人を目指してみよう!)。
 技術は、あくまで上記の3つの目的を達成するための手段に過ぎないのだ。
 なので、アップルに技術を期待するのはやめた方がいいだろう。

 そもそも、最初のiPhoneも性能自体はガラケーに劣るものだった。
 それが使い勝手やかっこいいデザインによって一般ユーザーに浸透していった。
 そしてスマホというもの自体は、他に先駆者がいたことは有名である。しかし最初のスマホは使い勝手が悪かったゆえに、普及するには至らなかった。

 iPhoneのすごいところは、スマホを発明したというより普及させたところにあるのではないだろうか。

 日本では「教祖が一番偉い」という価値観が強固である。オリジナリティがない文化ゆえに、オリジナリティを求めるのだろうか。しかし、教祖以上に布教者のほうが偉いこともある。キリスト教もイエスが教祖だが、布教者がいなければキリスト教が広まることはなかっただろう。
 むろん、布教者は布教者に過ぎない。しかし、布教者の功績を認めることも大事ではないだろうか。

 これはスマホだけでなくタブレットも同様である。タブレットを一番最初に生み出したのは他ならぬマイクロソフトである。しかし、当時のタブレットはスタイラスペンでしか操作できなかった。それを見たジョブズは「指でも操作できたらいいのに」と思って――iPhoneを経て――iPadを生み出すことになる。
 ちなみにアップルペンシルを指して「ジョブズはペンを望んでいなかった」という声もあるが、上記のエピソードを見ればわかるが「スタイラスでしか操作できない」という状態に対しての発言であり、「指でもいいしペンも使える」というなら多分、問題ないと思うのだがどうだろうか。

 アップルの得意なのは、「先駆者のフリをして実は布教者である」という点だ。ジョブズはこれを「インスピレーションを受けた」と言っている。つまり、パクっても売れればおk!なのであり、技術がどうのこうの言っても仕方ないのである。
 最新技術が使いたいなら、ぜひアンドロイドにどうぞ、ということだろう。
 アップル製品が提供しているのは、デザインとスムーズな操作感と体験なので、それを壊さないように慎重に技術を搭載する必要がある。
 これは裏を返せばアップル以外の企業は新技術でアピールするしかない、ということでもある。あとはコスパとか。

 結果として、スマホの世界シェアの2割ほどしか獲得してないアップルだが、スマホの利益の9割近くを独占している。

 これは大成功といえないだろうか。
 そしてデザインはある程度パクれても、ブランドや体験についてはいきなりパクるわけにもいかない。そのため、アップルの優位性はそこそこの技術的優位では揺るがないだろう。

 しかし、その技術進歩が驚異的に早いのもこの業界の面白いところである。アップルもあぐらをかいていたら一瞬で没落するだろう。それはそこまで遠い思い出ではないはずだ。
 なので、最近のアップルはコンテンツ業界も視野に収めようと色々新しいサービスを立ち上げているようだ。

 果たしてそのサービスがうまく行くかどうか、それはしばらくの長い時間がかかるだろう。評価するには長い時間が必要というのもあるが、そもそもアップル自身も短期で一気に決着をつけようとは思っていないだろう。すでに映像配信ではネトフリにアマプラ、ゲーム業界では任天堂にソニー、クラウドゲーミング事業にはあの四騎士の中でも最強と言われているグーグル先生が参加する。そう簡単な道のりではない。
 本当ならさらに挑戦を続けて、新しいハードを生み出し続けて欲しいところだが、アップルはいつの間にか失敗が許されない企業になってしまった。特にダサい失敗はできない。正直、こういう状態が一番危ない。リスクを取らなくてもある程度安定した収入はあるから、そうやってジリ貧に陥ってどうしようもなくなる、というよくある失敗だ。
 ファッションと違って、テック業界はかっこよさのみでは制覇できない。結局は実用品だからね、ファッションと違ってかっこよさだけではどうしようもない。

 さて、まとめてみよう。
 アップルはブランドや使用感、体験という、他企業には真似できない特別な存在になった。その優位はかなり圧倒的で、これからもある程度の期間は安泰であろう。
 しかし、まだこれだけでは決定的勝利ではない。そこでコンテンツ業界に進出、アップルは快進撃を続けるのかどうか……

 それは実際の未来になってみないとわからないだろう。アップルがどういう動きを見せるのか、楽しみに見させてもらうとしよう。

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