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2023りゅーとぴあジルベスターコンサートでの出来事

2023年12月31日。新潟市のりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館のジルベスターコンサートに出かけてきた。2023年は、個人的にコンサート鑑賞が最多の年となり、これが21本目である。

私はこのコンサートで、今までありえなかった「事件」に遭遇してしまい、コンサートの内容は本当に素晴らしくて、パンデミック開けの2023年を幸せな気分で締めくくれたのだけど、どうしても「そのこと」がついて廻り、「後味」が良くなかった。そこで、自分の考えを整理しながら書き記すことにした。
「事件」とは何かを端的に言えば「出ていけ」事件、ということになる。
私の斜め前に座っていたお客さんが、演奏中にガサガサと「ポリ袋」の音を出していて、第一部の終わった休憩時間に、最終的にそのお客さんがその席からの退席を強制されることになったのである。

開演最初のプロブラム、「L.バーンスタイン(マソン編曲)ウエストサイド物語セレクション」が終わり、次の「ラフマニノフピアノ協奏曲第2番」はセットが変わるので若干の時間があり、この間に問題となる「オジさん」が係員の誘導で私の斜め前の席についた。サイドの2階席で、通路側の端の席だったので、両隣に人が座って窮屈に感じる場所ではなく、「自由に使える空間的余裕」のある席だ。
このオジさんは、いわゆる「ゴミ袋」を手に入ってきた。私はそれを見て、悪い予感がしたのだが、結局予想外の出来事に発展してしまった。

「ゴミ袋」は、よくある自治体指定のポリ袋で、買い物袋の厚手タイプなので、ちょっと触っただけでもガサガサと音が出る。まあ、たいていの人は、その状況を見ただけで、「普通の人じゃない」と判断は付くのだが、席を案内してきた係員の女性は、そのオジさんが通路の離れた部分に置いた「袋」を、あえて席の脇に移動して置いたのである。

1つ目の課題は、この係員の対応にある。コンサート会場に「自治体指定のごみ袋」を手にして入ってくるということは、なかなかありえない。しかも、1曲目と2曲目の間で、会場の外で「待っている時間」があったはずだ。この時点で、当然目についているはずの「ポリ袋」を、どう捉えていたか、という点が、課題解決のための重要なポイントになる。
容姿で人を判断せず、差別せず、誰にでも開かれた音楽鑑賞の場であることを重要視すれば、一見のイメージが「ホームレス」的な人物であっても、チケット(1万円)を持っていれば、皆平等である、という考え方は基本にある。それがズレていると、人権問題になる。

私は、その問題のオジさんの斜め後ろの角席だったので、興味を持ってじっくりと観察してしまった。「袋」は、「所沢市指定」のゴミ袋だった。あとでオジさんが周囲の人に弁解するが、「大事なもの」がごっそりと入っているようで、この時点で「ホームレス」という印象が強くなる。でも、錚々たる演目のジルベスターコンサートを聞きに来るのだから、「ホームレス」のわけはない。足元は、裸足に安物のサンダル。いくら暖かい大晦日とは言え、裸足にサンダルで外を歩き通すのは、ちとつらい。かといって、自家用車で来ているならば、一抱えもあるような荷物を持って入る必要もない。

2曲目、ソリストに亀井聖矢を迎えての「ラフマニノフピアノ協奏曲第2番」が始まった。ラフマニノフ生誕150年のメモリアルイヤーを締めくくるための、第一部のメインプロブラム。今年は、ほんとうに何度この曲を聞いたことか。マエストロの原田慶太楼との息の掛け合いがピッタリで、私はその演奏に飲み込まれた。

その演奏中のかなり多くの時間、問題のオジさんは、服を脱いだり、それを袋の中に入れたり、また何かを探すために袋の中をガサガサしたりしていた。角席なので、動きや音がかなり耳障りになり、フェンス挟んだ隣側のお客さんの数名が何度も視線を向けていたので、まあ、かなり頭にきてるのだろうなとは思っていたが、私は途中から全く無視して音楽に集中できた。

演奏が終わって20分の休憩時間に入るなり、フェンス挟んで隣側のお客さんの中の一人が、客席係を呼びに行き、そのお客さんと「うるさいから出ていけ」の口論が始まった。

最初、客席係は「その荷物をお預かりする」という対処で乗り切ろうとしたが、オジさん曰く、「抗がん剤を探していた。大事なものがたくさん入っている」と、「預かり」を拒み、退席も拒否することで、周囲の男性客から「出ていけ」の連呼になってしまう。入場の際に渡された「マナー」の注意書きにも、「買い物袋等のガサガサ音に気をつけて」と書いてあるじゃないか、と、誰がどう見ても「問題のオジさん」の負けは明らかなのに、「出ていきません」と跳ね返すオジさんに、周囲のお客さんの怒りがエスカレートしていき「オレが引っ張り出す」という強い口調になったので、「他の席をご用意します」ということで、その問題のオジさんは退席していった。

穏やかな人の多いクラシックコンサートでは、なかなかにありえない退席劇で、コンサート自体は素晴らしくても、どうしてもこのエピソードだけを記憶から消去することもできなくなるため、たぶん、周囲にいた鑑賞者にとっては、若干後味のわるいジルベスターになってしまったのかなと、思うわけだ。

「人権」という視点で言えば、音楽を聞く機会は誰にでも平等に与えられるべきだとは思う。客席からの退場を、周囲の客の側から指摘されるというのは、滅多にありえないことで、この日の場合で言えば、客席は7割くらいの入で、ガラガラのエリアもたくさんあったので、ホール側の「予測」からのトラブル未然防止の対応策はあったはずだと、結果論ではあるが思ってしまう。

ところで、私にとっては、このことよりももっと気になることがあった。

第1部の時は、その「事件」もあって分からなかったが、第2部に入り、隣の女性がスマホの電源入れて明るくなったなと思ったら、膝の上に抱えた状態でステージの動画を撮り出した。角席で、前の席がないので、膝上のスマホからでも、画角的にステージが捉えられる。

静止画動画の撮影禁止というのは、ライブ・コンサート鑑賞の基本的なマナーというかルールである。演奏中じゃなくても、ホール内の撮影禁止というのが以前は常識だったが、最近はなんとなくゆるくなりつつあり、主催者側の判断で、たとえば角野隼斗なんかはアンコール限定で写真撮影OKとか、NHK交響楽団も、「カーテンコール撮影可」だったり、必ずしも一律に「撮影不可」でもなくなった。しかし、「お前いいかげんにしろよ」な客も、一定数いる。

客席を見ているホール係がそれを発見すると、休憩の時間にそのお客さんの席まで行って注意する、ということも見たことがあるが、この「盗撮」は、なくなることはないような気がする。撮影OKにすると、他人がスマホ掲げているコンサート聞くのは、非常にウザいことになるので、解禁になる時代が来ないことを祈るのだが。スマホ持ってないで拍手しろ、とは思う。

いろいろあったが、大好きなボレロに、舞踊をつけた想い出深い演奏で締められた2023年だった。

入場の際に渡される注意書き。りゅーとぴあのは細かくて面白い


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