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#109 帰省ブルー
帰省ブルーという言葉を初めて耳にした。
簡単に言うと義実家へ特に奥さんが旦那さん実家へ、お盆などで里帰りすることを、憂鬱に感ずるということらしい。
そもそも、一緒に暮らした経験が無い義理の親と数日であろうとも同じ屋根の下、限られた空間に、何の戸惑いもなく存在することが出来る方が、私としては不思議だし、ストレスを感じるもは当たり前だろうと思う。
しかし、親の立場になれば、我が子やその子、つまり孫の顔を見たいのは当然だともいえる。
年代や個人差はあると思うが、還暦の私としては息子の嫁が気を遣う、あるいは気が進まないなら、帰省してこなくてよいので、せめて我が子と我が孫との、残り少なくなった交流の機会を与えてほしいと思う。
つまり、簡単に言うと
嫁は来なくていいから、子と孫の顔を見たいということになる。
しかしながら多分嫁の親だって同じような思いでいることは、大いに考えられるので、もう孫はいいから、息子とだけは結婚以前のあの楽しい家族だった頃に束の間でよいので戻りたいと思う。しかし当の息子はそれを望んでいない可能性は大いにあるが。
嫁に息子を取られたとまでは思わないが、我が息子という感覚が彼の結婚以来薄れていったのも事実だと思う。その感覚を年に数回だけ取り戻したいということだ。特に子どもと別居している親は、あと何回いや何時間、我が子と交流できるだろうか?と年を重ねれば重ねるほどそれが気になるのではないか。
そもそも今や、息子家族と同居して、嫁に自分の老後の面倒を見てもらうなんてことはほぼ「ファンタジー」になったと言ってもよいと思う。
良し悪しは別にして、日本が経済的に豊かになるにつれ、女性への教育環境も充実し、社会進出が広く行われた結果、女性は家事(親の面倒を含む)以外の活躍場所が歴然と存在している。
そのうえで親の老後の面倒を見るなどということは、今までの努力で身に着けたスキルを封印することになり、それは誰であっても安易ではないと思う。
視点を舅サイドにすれば、所詮面倒など見てくれくれないであろう、息子夫婦に対して気や金を使う意味が無い。
それならば、少しでも金銭を老後の資金に充当する方がよいと思うのも自然なことだ。
そう!結局お互いの損得勘定にたどり着いた。
よって、帰省した帰りがけ、嫁に「息子には内緒に!」と諭吉を10人ほど入れたゆうちょの紙袋をそっと渡せば嫁のブルーはピンクに変色する可能性は大いにあるが、渡した方は、その後グレーな老後になりそうな気もする。
なぜならば、次回も当然諭吉を多数動員することになるから。