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舞台『ガマ』@東京芸術劇場シアターイースト

劇団チョコレートケーキ、2022年夏の新作は、太平洋戦争末期に起こった沖縄戦を取り上げた『ガマ』。ガマというのは沖縄本島南部に数多く点在する洞窟で、その数は2000ともいわれている。戦時中は日本軍の陣地や傷病兵を収容する病院壕として、さらに民間人の避難に使われたが、物語は海軍司令部壕があった首里から少し北に行ったところにあるガマを舞台に進められる。

脚本の古川は修学旅行で訪れたガマでの平和学習で体験した“暗闇”を表現したかったとインタビューでも話してくれた。演出の日澤はそれに応えてラストシーンの直前まで薄暗い中で話を進めていく。正直役者の表情を読み取るため、終始眉間にしわを寄せての観劇にはいささか疲れたが、あの暗さだからこそ生まれる説得力はその苦労を上回っていた。

ガマにまず入ってくるのはひめゆり部隊の女学生安里(清水緑)と教師の山城(西尾友樹)。意識を失っている日本軍の将校、東(岡本篤)を抱えている。そこに後からやってくるのはふたりの兵隊、岸本(青木柳葉魚)と井上(浅井伸治)と彼らのガイドを務め、防衛隊に属する知念(大和田獏)。この6人が生と死の境目で生まれるいくつもの葛藤をぶつけ合う。

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さて国が戦争を引き起こす時に行う事といえば自国民の熱狂を煽ること。国家や民族、更には宗教等を理由にして自分たちがいかに優位な立場であり、勝つことが全てだとすり込むために、徹底して熱狂させる。そしてその熱狂に取り憑かれ易いのは勤勉な国民と若者だろう。この物語でも一番若く、将来がある安里がその熱に浮かされる。そしてこれまで熱狂を煽る側だった東や山城が、彼女の熱を冷ますため躍起になっていく。その他、沖縄戦で起きたいくつもの悲劇を織り交ぜながら物語は進むが、終盤に「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」(命こそが宝であるという意味を持つ沖縄の言葉)という象徴的な言葉で、ガマにいる一同は生きることに気持ちを向けていく。

興味深いことのひとつに古川が舞台となったガマを「首里から北の方に少し行った」ところに設定したところだろう。脚本執筆に当たってモデルになったガマがあったのかもしれないが、これが日本軍の移動先となった南部のガマだったら、事実が悲惨すぎてこれほど冷静な物語は描けなかった気がする。

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太平洋戦争で我が国唯一の地上戦となった沖縄戦。本土決戦を先延ばしにするための“捨て石”にされた沖縄は戦が終わってもそのままにされた。そしてアメリカ統治時代が終わって50年経った現在でも、日本国は沖縄を差し出している。それを改めて感じさせる作品だった。

もう一つ。月並みかも知れないが、やはりこの作品は是非沖縄でも上演するべきだろう。(それが実現したら是非観に行きたい)かつて起こった悲劇を再確認するためだけでなく、戦の時代を知らない世代のウチナーンチュたちが安易に島を差し出さないようにするためにも。

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[写真 池村隆司]

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