ブルースはもう限界! 8戦未勝利で忍び寄る”負のハットトリック”
まさに出口の見えないトンネルである。
プレミアリーグが発足されてからというもの、ニューカッスル・ユナイテッドのサポーターがチームに求める理想は”勝つ”ことよりも”闘う”ことだった。3点取られても4点取ればいい。その逆に大量失点で負けることも時には仕方ない。もちろん近代の市場が急拡大したフットボールにおいて、所謂メガクラブとの対戦では、時にディフェンシブになる場合もあるだろうが、それはチームが結果を追い求めた結果であろう。
だがどうだ、スティーヴ・ブルースがピッチの上で表現するフットボールは我々の理想とは真逆もいいところ、対戦相手など関係なく毎週試合をする前から負けているような雰囲気である。
この約1ヶ月、チームは7戦未勝利、そして2つのカップ戦から敗退という屈辱を味わった。順位表でも降格圏に沈むフラムと勝ち点8差の15位と振るわず、サポーターの不満は(いつものことながら)最高潮。13日の対戦相手は、未だに僅か2ポイント(2分15敗)と最低記録更新ペースで最下位に位置するシェフィールド・ユナイテッドであり、ブルースにとっては絶対に落とせないカードだった。
そんな中、ブルースは5バックを中心にしっかり守り、”負けない”ためのチームを選択した。強豪との対戦が続いた中で”勝ち”を期待していたファンからはこの時点でため息が漏れる。
ディフェンダー5人に加え、アンカーのアイザック・ヘイデンは最終ライン近くまで下がることも多く、ショーン・ロングスタッフ、ジェフ・ヘンドリックとのトリオは中央をガッツリ固めた。ニューカッスルは、相手に前半から試合を支配され、前線で孤立した攻撃的なプレーヤー、ライアン・フレイザーとカラム・ウィルソンの2人は、ボールに触ることすらままならない状況だった。
どちらが最下位かわからないような内容の前半、ニューカッスルは1本の枠内シュートも放つことができなかった。ファーストハーフにこれを記録したのは今季6回目のことで、リーグ最多。逆にシェフィールド・ユナイテッドからすれば、最初の45分、枠内シュートを浴びずに済んだのは初めてのことである。
相手選手のシュートミスと、相変わらず集中力の高いプレーを見せるGKカール・ダーロウの活躍で辛くもスコアレスでハーフタイムを迎えたマグパイズだったが、前半終了間際に攻撃のキーマンであるフレイザーが連続してイエローカードをもらい退場。10人での戦いを強いられることになる。
フレイザーのタックルは非常に軽率であり、絶対にしてはならないプレーだった。彼は前半ほとんどボールに絡めず、数少ないチャンスでもサポートが無く苦しいプレーを余儀なくされた。フラストレーションが溜まっていたに違いない。選手の怠慢プレーという短絡的な見方もできるが、実際はブルースの采配がこの状況を招いているとの見方もできる。
人数の少ないチームはその後、よりディフェンシブな戦いを展開した。後半途中に画面に表示された「後半ここまでのポゼッション:12%」という数字はいくらなんでも惨めである。
73分に試合が動く。ここまで守備陣の中心として素晴らしいプレーを見せていたフェデリコ・フェルナンデスの手にボールが当たってしまい、VARチェックの結果PKを献上。これを途中から出場していたブレイズのレジェンド、ビリー・シャープに沈められ、ニューカッスルにとってはより一層厳しい状況になった。
ブルースは残り15分を切ってから交代カードを切り始めたが、時すでに遅し。ここ最近いいプレーを見せていたにもかかわらずスタメンから外れたジェイコブ・マーフィ、アンディ・キャロルは少ないプレータイムの中でゲームに入ることもままならず、そのまま試合終了を迎えた。
試合後、ブルースは記者からの厳しい質問責めに合い、ひたすら保身に走るしかなかった。
「ハーフタイムに色々と変更を加えようと思ったが、退場によって妨害された。残念だ」
「レフリーが(VARの)画面をチェックすると、必ずペナルティになるのは 問題だ。私にはどうしようもない」
「ビリー・シャープのタックルは酷かった。一発退場になるべきだった」
「ボトムハーフにいる時は、こういった結果が続いてしまう時がある」
こういった結果が続いているから、ボトムハーフなのだ。なぜこの男は他人事のように物を語れるのだろう。その図々しさをもう少しピッチ上でも表現してみたらどうか?
試合への望み方も相応しい物ではなく、いざ試合が始まれば惨めな内容、そして結果はシェフィールド・Uに今季初勝利をプレゼント。地元紙クロニクルはこの日のパフォーマンスを総括し「このクラブのエンブレムに対する侮辱」という見出しを付けた。過去にプレーしたOBらもブルースやチームの批判を初め、サポーターは#BruceOutのハッシュタグをトレンドに載せようと拡散した。スタジアムや練習場には監督解任を求めるバナーが貼られた。
チームは8戦未勝利で、この後アーセナル、リーズ、エヴァートンと難しいカードを控えている。新型コロナウイルスに感染し、後遺症に苦しんで1ヶ月以上戦列を離れているアラン・サン=マクシマンの復帰もまだ先になるとみられており、出口の見えないトンネルの中で、懐中電灯のバッテリーが底をついたような感覚だ。
この状況を打破するため、ブルースを解任し、しっかりと戦略をピッチで表現できる指導者を連れてくることが今すぐに求められる。数年前、スティーヴ・マクラーレン政権が19位に沈み、ラファ・ベニテスがチームを立て直したものの手遅れだった経験を忘れてはならない。
だが報道によれば、マイク・アシュリーはまだブルースをサポートする考えを示しているとのこと。ライバルのフラムやバーンリーが徐々に調子を上げている中、一瞬の遅れが命取りになりかねない。
今年2部へ落ちることになれば、アシュリーが2008年にチームを買収して以降3度目の降格になる。そんなネガティブなハットトリック、絶対に見たくない。