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頭頚部がん術後補助CRTにおける毎週シスプラチン+RT療法 (JCOG1008)

J Clin Oncol. 2022, 40: 1980-1990

頭頚部がん術後補助の標準治療となっているCDDP 100mg/m2の3週毎3回投与を40mg/m2の毎週7回投与にしても効果が損なわれないかを検証した試験。頭頚部がんCRT領域では術後・再発ともにCDDP 100mg/m2が標準となっている。最近は制吐剤も良くなってきて完遂率も上昇していると考えるが、悪心・食欲不振・粘膜炎・誤嚥等の有害事象のマネジメントが重要。照射野にもよるが、私は基本頸部照射(特に全頸部照射)を含む場合は胃瘻造設の上行っている。weekly CDDP (40mg/m2)は忍容性も良く、外来治療も可能なのでCDDP 200mg/m2以上の投与を目指すための選択肢として慣習的に行われていた。

対象はStage III, IVA, IVB期の術後頭頚部(口腔・中下咽頭・喉頭)がん患者で、再発high-risk因子を持つもの(顕微鏡的positive margin, リンパ節外浸潤)。
P2→P3デザインであり、3wレジメンに対する毎週レジメンのOS非劣性を検証する目的。RTは66Gy/33Fr。

2012-2018年まで合計261例がentry。年齢中央値は62歳で、男性85%, PS=0が70%。原発は口腔46%, 下咽頭 31%, 中咽頭14%, 喉頭9%の順。high-risk因子はpositive margin 35%, 節外浸潤 85%。T4 49%, N2以上が85%でStage IVAが88%だった。

PIII partの3回目の中間解析(median follow up 2.2年)でOSのHR 0.69 (w群>3w群)の差がつき、99.1%CIの下限が非劣性マージン上回ったためpositiveと判断。3年生存率は71.6% vs 59.1%でwCDDP良好。subgroup別でも概ねwCDDP群良好。T因子、N因子、原発巣で調整したHRも0.79とwCDDP群で良好だった。3wCDDP群51例の再発患者の内、局所再発 15例 (29%), 遠隔再発 31例 (41%), 両方 5例(10%)。wCDDP群37例では局所再発 14例 (38%), 遠隔再発 21例 (41%), 両方 2例(5%)であった。

RFS
OS

RTは両群とも全例完遂。CDDPのdose deliveryは3w群で280mg/m2, w群で239mg/m2。化学療法治療完遂割合は各々93.2%, 86.8%であった。

AE≥G3は好中球数減少が3w群 49%, w群35%。悪心が13% vs 5%。感染 12% vs 7%といずれも3w群で多かった。聴力障害も3w群で多かった。


本試験は、内容的にはRTやCDDPの完遂割合を見れば質が高い試験であることがわかるのだが、結果の解釈にはやや注意が必要であろう。何故なら、どうしてwCDDP群でこのような良い成績となったのか理由が分からないからだ。

supplementaryを見るとがん死が3w群 44/132例, w群 30/129例とされておりこれがOSに差がついた原因であるのだが、CDDP deliveryはむしろ3w群で良好でありこの群でがん死が多い説明がつかない。治療関連死や遅発性の合併症死亡が多いならわかるが、それは両群とも変わらない。wCDDPが3wCDDPより良いという理論的背景が不明であるにも関わらず、この差がついたのは"偶然"である可能性が否定できない。

そう思って見返すと、統計学的設定が片側α 0.5, 検出率75%, 非劣性マージン 1.32 (5y-OSで10%)で260例という設定で、術後補助療法Phase IIIのNとしてはやや少ないと言わざるを得ない。(もちろんリクルートが難しいがん種でこの患者数を集積した研究者には敬意を払いたい) さらに今回の試験は中間解析での判断でもあり、正確な解釈にはもっと時間をかける必要があると考える。

Kaplan-Meierだけを見るとwCDDPが3wCDDPよりAEも少ない上に成績も良さそうと飛びつきたくなるが、臨床で全例wCDDPに変えるという行動にでるのはちょっと待った方が良いだろう。これはあくまで非劣性試験であり、臨床的には"3wCDDP導入困難症例にはwCDDPが選択肢である"という原則的解釈をまずは堅持するべきかと考える。

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