改めて久世星佳氏の魅力を分析してみた

今日は何となく、改めて久世星佳氏の魅力とは何か考えてみようと思う。

【久世星佳氏の魅力ポイント5つ】

①芝居の上手さ

「宝塚から世界が見える」の中で「性格俳優のよう」と評されるように、久世氏は宝塚らしからぬ芝居をするジェンヌであった。「ベルサイユのばら」でアランを演じた久世氏を見て、宝塚演出の藤井氏が「唯一、男がいる」「宝塚にしてはすごくリアルな芝居ができる珍しいタイプの役者」と言ったとか。

久世の芝居の魅力は、宝塚でよくある過剰なまでの「足し算の芝居」ではなく、絶妙の間、台詞の抑揚による「引き算の芝居」である。それが良く分かるのが1996年のTCAスペシャルで花ふさまり氏と組んでやった「永遠物語」の松五郎の芝居である。

花ふさ氏演じる吉岡夫人が去り、一人舞台に残った久世氏演じる松五郎。「永遠(とわ)」という言葉を噛み締めながら雪の中で倒れ込む。台詞も動きも少なく、ただ久世氏の呟きだけが舞台にひっそりと響く。短い場面だが、この抑えた芝居に久世氏の上手さが凝縮されているように思う。


②ノーブルさの中に香る色気

久世氏って上品で堅物そうに見えるけど、そこはかとなく色っぽい。真矢ミキ氏とかの「チャラい色気」とはまた違う、抑制の中に香る色気というか。 芝居の中のラブシーンだけでなく、悲しみに打ちひしがれる姿、真剣な眼差しで力強い台詞を吐く様子など、どんな場面でもこぼれる色香。ショーのムーディーな曲でのデュエットダンス、またフィナーレで風花氏と笑顔を交わす姿には、風花氏との体の関係を疑いたくなるような確かな愛が感じられる。乙女の夢の世界にあるまじきリアルな色気、生で見てみたかったな。


③美しく説得力のある歌声

久世氏の歌はテクニック的に上手いというよりは、声の美しさと思いを込めた歌い方で聴かせるタイプだ。ダンスにしてもそうだが、久世氏の舞台上での表現はすべて芝居の延長線上にあると思う。自分を表現するのではなく、演じる役の表現として歌い踊る。他のジェンヌもそうだろうけど、久世氏は特にその傾向が強い。台詞を話すように歌うので、歌声には自ずと役の気持ちが込められ説得力が生まれる。

その声の美しさも特筆すべき特徴である。 月組で一緒だった姿月氏は歌うまジェンヌとして有名だが、2人の声質はよく似ており共にビロードのような美しさがある。2人でデュエットしているシーンは、互いの声によって厚みを増した美しいハーモニーが広がり、耳福なこと請け合いである。


④ジェンヌなのに「いぶし銀」の美しさを感じるルックス

男役にも様々なタイプがいて、天海氏のようなアイドル系、涼風氏のようなフェアリー系、紫苑ゆう氏のような典型的王子系など、大抵は華やかな雰囲気を持った人がトップを極める。しかし…久世氏を見て私が思うのは「いぶし銀」。 退団時でも30代に入ったばかりだったのに、下級生時代から老け役が似合ってしまう妙な落ち着き。

下級生時代は茶髪にしていたが、ある時期(二番手時代?)から退団時までは黒髪で通している。久世氏の顔には茶髪は似合わない。断然黒髪、オールバックがいい。化粧も上手かったようで、元々派手さのない顔を色っぽく仕上げるグラデーションの効いたメイクがいい。 天海氏などは元々派手めな顔なのに更に目元を黒々と縁取りしている時期があり、「あちゃ〜」というような世間の人がイメージする所謂宝塚メイクになっていた。

月組では天海氏、姿月氏と長身メンバーに囲まれていたせいかあまり目立たなかったが、久世氏も169センチとなかなかの長身ジェンヌだ。しかし…彼女、なぜかいつも猫背気味。そこがまた久世氏らしいとも言えるけど。体型的には天海氏とかと比較してみると、肩幅も厚みもあまりない。ウエストとヒップのラインには女性らしい凹凸を感じる。衣装部さんには「理想の体型」と言われる位、スーツの良く似合う体型だったようだ。


⑤知性と枯淡を感じさせる人柄

ネット上にやたら落ちてるトーク動画を見ていると、彼女の知性あふれる人柄がよく分かる。飄々としてとてもマイペース、マイペースすぎて稽古にはいつもギリギリに滑り込んでいたらしいが。下級生時代にもあんまり下級生らしいしおらしさとか無縁だったろうな…と推測。30代そこそこで枯れた風情まで漂わせるジェンヌとか…こんな人他におらんだろ。

真山葉瑠氏とのトークを聴くと、彼女達、そのキャラとは裏腹に意外にも舞台では超緊張するタイプらしい。そんな自分たちを「態度のデカい小心者」とか言ってたわ。意外とそんな面もあるのね。

まだまだ久世氏の魅力を語り尽くすには及ばないが、ひとまず簡単に整理してみた。天海氏、姿月氏ファンの相方も「もし彼女達が現役時代に宝塚を見ていたとしたら、多分久世氏のファンになってたと思う」と言っていた。そうなのか。

何とも玄人好みのジェンヌ、久世星佳。今年は舞台の仕事もあることだし、生でその魅力を堪能することを楽しみにしている。

私の文章に少しでも「面白さ」「興味深さ」を感じていただけたら嬉しいです。