親族アトツギが最もイノベーションを起こすファクト。そして、先代は良きサポーターになってください
どうも、ベンチャー型事業承継のゴードンです。
現在マレーシアの大学院の博士課程でファミリービジネスの研究をしています。
親族アトツギが一番イノベーションを起こしている
ベンチャー型事業承継の根幹になりそうな論文を発見したのでテンションが上がっています。
2021年、455件のドイツのファミリービジネスの承継データを用いて、「親族アトツギ」、「非親族のアトツギ」、「そのミックスによる承継」のパターンを調べたところ、「親族アトツギ」が一番プロダクトイノベーションを起こしているという結果が出ました。
これは、後継者の人的資本、家業が持つ特有の資源やそれを扱う先代の知識にアクセスしやすいことなどが影響しています。
さあ、支援者のみなさん、全力で親族アトツギをサポートしましょう!
事業承継期という契機
この、事業承継を行った直後というのもポイントです。つまり、後継者の影響力は上がりつつも、まだ先代も暗黙知や社会的な力を持っている段階であり、この部分の掛け合わせが大事なのです。後ほど再度言及しますが、この後継者と先代の適切な調和関係がイノベーションを引き起こします。
イノベーションに必要な2つの要素
・後継者の人的資本
結構そのままなのですが、後継者が経営者になるにあたっての能力を指します。経営経験、業界の知識、リーダーシップスキル、戦略的思考力などなどです。このあたり、やはり後継者はしっかりと経験積んでスキルを磨き続ける必要がありそうです。
ここだけだと、親族じゃなくてもいいよね、むしろ外部から経験豊富で実績バリバリの後継者連れてきたらええんちゃうの、と思いますよね。
大事なのは、2つ目の条件が組み合わさることです。
・家業の培ってきた資源(ファミリネス)
経営の競争戦略には大きく2つの学派があります。それは、ポーターの提唱する「ポジショニング戦略」と、バーニーの提唱する「リソースをベースにした理論(RBV)」です。ざっくり、自分たちがどこのポジションに行くべきかを考える理論と、持っているものをベースに考える理論です。2つの良し悪しは、入山先生の記事がわかりやすいのでこちらをご覧ください。
今回は、事業承継期のイノベーションなので、当然持っているものが大事になります。
資源には、企業が培ってきた物的資源(例:商品や工場)、人的資源(例:サービスや従業員の技術)、そして組織資本およびプロセス資本(例:持っている資源をうまく使って価値に変える仕組みや知恵)があります。これらをRBV(リソースドベースドビュー)といいます。
そして、ファミリービジネスに特有なのが、創業から培われてきた理念やビジョン、知識、長期的な考え方、結束などです。
こうしたRBVやファミリービジネス固有の無形資源を総称して、ファミリネス(家業の培ってきた資源)と呼びます。
こうした資源は、明文化されておらず、暗黙知になっていることがほとんどです。そこを一番理解しているのは先代であり、そこに一番うまくアクセスできるのは後継者なのです。
2つを掛け合わせるリーダーシップ体制が重要
家業が培ってきた資源を、きっちりと実力を磨いてきた後継者が再構築していくことで、イノベーションが起こります。
事業承継期において、先代と後継者は同じ船に乗る「チーム」です。
この際、「先代の影響力(DOI)」と「後継者の力(HC)」のせめぎ合いが重要になります。
結論、それが難しいねん!というつっこみを受けそうですが、「最適なレベル」の協調性が必要とされます。
「先代の影響力」がそこそこにありながら、「後継者の力」がしっかり高まっている状態(図中②)で、最もイノベーションが起こりやすくなります。
しかし、「先代の影響力」が強くて、「後継者の力」が低い(図中①)と、イノベーションは起こりにくくなります。現状の延長線になるからですね。
また、「先代の影響力」が強く、「後継者の力」も同様に強いケース(図中③)ですと、イノベーションは起こりにくいです。これは、二人のリーダーが存在してぶつかり、従業員にとっても混乱を招くからです。
後継者が力をつけてきたら、先代は意図的に影響力を落とす。このような調和(サクセッションダンス)が事業承継後のイノベーションには大事なのです。
まとめ
親族アトツギのイノベーション強し!
家業が培ってきている資源をいかに引き出し、後継者の力で再構築していくかがイノベーションの鍵になります。
でも、その「資源の引き出し」の鍵を握っているのは先代なんですね。いかにうまく先代から知恵を引き出すか(でも、いいなりはNG)が大事なんですね。いろんな知恵をみなさんから聞いていきたいです!