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後継者育成で最も大切なことは「内発的動機付け」

どうも、ベンチャー型事業承継のゴードンです。現在マレーシアの大学院にてファミリービジネスについて研究しています。

今回、すごく面白い論文を見つけたのでシェアします!
常々私たちは、アトツギが自分の意思を持ちチャレンジしていくことが大切と伝えてきたのですが、それを裏付けるものが、カナダでの研究から明らかに!

研究の紹介

この研究は、カナダの家族経営企業89社を対象にした12年間の調査(すごい!)で、内発的動機付けが事業承継にどのように影響を与えるかを明らかにすることを目的に実施されました。

調査の初期段階では、先代と後継者の双方に対して、後継者の動機付け、先代の信頼、承継準備の状況についてアンケートが行われました。その後、2年後に承継準備の進捗が再び評価され、10年後には実際の事業承継の成果が測定されました。

この研究の最も注目すべき発見は、後継者の内発的動機付けが事業承継の成功に最も大きな影響を与えたことです。内発的動機付けが高い後継者は、学習に積極的に取り組み、ビジネスを自律的に運営しようとする意欲が高く、最終的に事業承継の成功に繋がりました。具体的には、内発的動機付けの向上は約7%の承継成功率の改善に貢献しました。世界の企業の約80%がファミリーが関与する企業と考えると、この数字は見過ごせません。

形式的なものよりも本人の動機

事業承継の計画(後継者の指名や時間軸の設定)そのものは、内発的動機付けに比べて事業承継の成功に与える影響が小さいことが判明しました。計画そのものは、実行されないことも多く、後継者の動機付けや自信のような心理的要因に比べて、承継の要因としては低かったそう。これは、承継のプロセスを形式的に進めるよりも、後継者の内発的動機を育むことが重要であることを示しています。
これって、先代だけが承継について勝手に進めてもだめ、とも言えますよね。

内発的動機付けが大切

家業を継ぐことは、単なる業務の引き継ぎではありません。それは、アトツギが「家業をどうしていきたいか」という姿勢を形成する心理的な側面が大事です。最近話題になりましたが、「お前はどうしたい?」というリクルートの伝統は、極めてこの特性に近いですね。

そもそも内発的動機付けって何?

内発的動機付けとは、活動そのものに対する興味や楽しさから生じる動機のことです。たとえば、「仕事が好きだから取り組む」「新しいことを学ぶのが楽しいから挑戦する」というように、活動自体が報酬となります。これは、後継者がビジネスの細部に関心を持ち、自主的に学び、成長する上で不可欠な要素です。

内発的動機付けを持つことで、後継者は困難な状況に直面しても諦めずに取り組み、より良い解決策を見つけることができます。家業の未来を築くためには、単なる義務感や報酬による動機付けではなく、「楽しいからやりたい」という気持ちが求められます。家業を引き継ぐこと、経営していくことは、ざっと考えても30年以上の取り組みです。自分から湧き出るものなしでは続けられないですよね。

じゃあ、どうすればいいの

内発的動機付けを育む要素は2つです。
一つは、「自律性(Autonomy)」。自分の行動や決定が自分自身の選択によって決まるという感覚を育むこと。選択肢を与えたり、意見を尊重したりによって育まれます。
もう一つは、「自己効力感(Competence)」。自分にもできるという、期待に答えられるという感覚です。フィードバックを適切にしたり、ちょうどいいレベルの課題を与えたりすることで育まれます。

後継者育成は、後継者だけでは達成できません。先代、サポーター、後継者それぞれどう取り組むべくかを考えてみました

先代に向けて

・意思決定権を後継者にわたす:後継者に権限を与え、彼らが自らの判断で行動できる環境を作る。これにより、後継者はビジネスに対する自律性を感じることができ、内発的動機が育まれます。新規事業をやらせる、改善プロジェクトを任せる、など。
・後継者の努力を積極的に支援する:学習の機会やフィードバックの場を提供し、成長を後押しすることが重要です。成功だけでなく、失敗を受け入れ、そこから学ぶ姿勢を支援することで、後継者の自己効力感が高まります。

サポーターに向けて

・後継者の努力を認める:家族や従業員、支援機関などのサポーターは、後継者の努力や成果を認め、口にすることが重要です。これは後継者の自己効力感を高め、内発的動機を強化します。

・自由な議論で挑戦する場を作る:意見を出しやすい環境の中で、後継者の能力が伸びそうな、夢中になれそうなチャレンジを勧める。なかなか後継者は自分勝手に思われることを考慮して自分でそうしたプロジェクトに取り組みたいと言いにくいです。

後継者に向けて

・自分の興味や情熱を見つける:家業の中で自分が熱量が上がる部分を見つけていく。苦手の克服も大事ですが、やっぱり得意や好きがバカにできません。内発的動機付けは、興味を持てる分野での成功体験から生まれます。

・失敗を恐れず挑戦する:たいていの取り組みは失敗します。ユニクロだって1勝9敗です。失敗も学びの一部として捉えるのが吉!失敗を乗り越えることで自己効力感が高まり、さらに挑戦する意欲が湧きます。

まとめ

アトツギが自分の意欲を持って、自分のやりたいこと、内発的動機付けを持つことにチャレンジしていくのは、事実として事業承継を成功に導きます。でも、社内外にそうした取り組みを阻むことが多いのもまた現実です。なんだったら、自分が一番否定してしまいがちです。ジャパネット高田の高田さんが、夢を殺すドリームキラーの存在の話をしていましたが、一番は自分だそうです。(めちゃくちゃいい話なので見てください!)まずは信じて、やっていきましょう!!


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