どらま館制作部週間03を終えて~その1
こんにちは。どらま館制作部スタッフのにいづま久実です。
どらま館は今年度、円盤に乗る派さんを招聘して制作部週間で様々な企画を行っています。6月の第1回制作部週間では劇団森×劇団森OB カゲヤマ気象台『森森森森会議』と円盤に乗る派ワークショップ『自分のためにモノローグを書く』を開催しました。
8月の第2回では円盤に乗る派さんを紹介する記事企画『円盤の乗り方』と円盤に乗る派オンラインWS『演出プランを練る』を行いました。
そして今回の制作部週間03では、『演劇のすゝめ』というトークイベントを生配信しました。ご視聴してくださった方ありがとうございます。
見逃してしまった方も大丈夫です。アーカイブがこちらからご覧になれます。
ゲストには俳優の平田満さんをお招きし、円盤に乗る派からは制作部週間ではたくさんお世話になっているカゲヤマ気象台さん、日和下駄さんが来てくださりました。また今回は学生からも、劇団くるめるシアターの田村将さん、演劇倶楽部の小澤南穂子さんとどらま館制作部から技術班の中西、制作班からにいづまが登壇しました。
招聘団体である円盤に乗る派の『ウォーターフォールを追いかけて』の取り組みについての紹介では、昨年の取り組みから、今年の4つのタームに分けた取り組みについてのつながりなどを円盤に乗る派のお二人からご紹介いただきました。詳しくは→円盤に乗る派HP
”演劇観”の話では、コロナ禍で上演が当たり前ではなくなった演劇の捉え方を話しました。舞台上だけではなく、稽古場や過程が大切だと言う話は、とても興味深かったです。
演劇の”楽しみ”に関する話では、演劇に関わった理由などを聞いたのですが、平田さんを含め「居場所」と言う理由の人が多かったです。全く違う世代で関わり方なのに一体感が生まれたような感覚になりました。
登壇者のカゲヤマ気象台さんと、田村将さんから感想をいただいています。
カゲヤマ気象台さん
何事においても、私的な領域を超えたところには「楽しくあってはいけない」「生産的でなければならない」という圧力が働きます。「仕事は楽しくなければならない」もよく言われますが、それでも「楽しむこと」は第一の目的にはなりません。あくまでも生産性を高めるため、モチベーションを上げ、効率的に働くために必要とされるのであって、楽しみのあまり生産性を犠牲にすることは許されません。これはもはや信仰なので、それに反することは「なんとなく、倫理的にいけない」ことのように思われます。しかし、人生はそれだけではない。私的な領域を超えながら、楽しいだけの場所、生産しなくてもよい場所があるかもしれない。演劇はその場所を開き得る可能性を持っているように思います。もちろん、演劇を成り立たせるには「仕事」は必要ですが、これは「仕事」を解放することのできる「仕事」であると信じていますし、そういう意味では演劇以外にもそういう「仕事」はあり得るでしょう。イベントから1週間ほど経って、そんなことを考えています。
田村将さん
コロナ禍も一年半たった。一時は冷え切っていたように感じる早稲田の演劇界隈も少しずつ活気が戻りつつある。しかし、この一年半ある種抑圧されていた若いエネルギーを発散するために演劇が行われているようでならない。なぜ演劇をしているのかという一歩引いた冷静な目線は置き去りにされ、皆無我夢中になっている。
そのような状況で行われた、この対談企画はなぜ演劇をしているのか、なぜ数ある芸術、表現の中で演劇なのかという、コロナ禍で一旦棚上げされた−しかし本当はもっとも強く突きつけられた−問いを今一度考え直すきっかけになった。冷静に、そしてある種スリリングに演劇についてのあれこれを探っていくことが私は好きなのだと、思い直すことができた。
今私たちは生き急いでいる。「大学のうちに」「若いうちに」と我先に、演劇をしている。それは、日本の経済状況か何かわからないが何かが我々そうさせるように感じる。しかし、円盤に乗る派の息の長いプロジェクト、約半世紀の平田さんの俳優としてのキャリアに触れ、演劇はきっと「より早く」「より若く」ということでは逃してしまう豊かさを多分に含んでいるのだろうと感じた。その豊かさのことを日本語で「藝」というのかもしれないが、それが、いまの窮屈な生活を演劇によって解放していく一歩になると私はおぼろげに感じた。
今回のトークイベントを通して、自分にとっての演劇の面白さや必要と感じている部分をあらためて確認することができました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次の更新は、10/28です。その2もお楽しみに!!