京成バラ園とわたし。
幼少期から通う、父との思い出の場所
ちょうど春バラが満開となるピークシーズンの昨年の5月、京成バラ園は政府の緊急事態宣言を受けて休園となりました。京成バラ園は私がまだ幼かった頃から家族で頻繁に訪れ、親しみを感じる近所のお出かけスポットでした。父が当時京成バラ園で買い求めて植えた実家の門扉にあるアーチのバラは、40年近く経った今でも四季咲きの美しい花を咲かせてくれます。
京成バラ園が拡張工事をしてリニューアルオープンしてからは、毎シーズン家族と一緒にバラ園を訪れて、ありとあらゆる美しくて香りのよいバラを観賞して幸せな気分に浸っていました。バラ園を訪れることがこんなにも贅沢なことだったなんて、休園にならなければ気付かなかったかもしれません。
コロナ禍で気付いた、バラのある暮らしの価値
私は全国通訳案内士という国家資格を得て、海外から日本へ観光に訪れるお客様を英語で案内するお仕事をしていますが、コロナパンデミックによって全てのお仕事がキャンセルとなってしまい、とてもショックを受けていました。仕事がなくなり、県境を跨ぐ移動も制限されて、私の心の癒しであった京成バラ園へ訪れることも出来なくなってしまい、言葉では言い表せないほどのショックでした。
春のピークシーズンの休園によって、年間収入の7割を失った京成バラ園でしたが、「バラの力で多くの人たちを笑顔にしたい、八千代市の花である「バラ」で、せめて市内の医療従事者や患者さんに癒しを届けたい。「バラ」の力で、千葉県八千代市から全国の多くの人たちを笑顔にしたい!」という思いをこめて、昨年7月にはクラウドファンディングを立上げられ、その取り組みには目標をはるかに上回る多くの支援を集めました。
実は私もサポーターの一人なのですが、リターンとして選んだ「京成バラ園オリジナル 丈夫なバラ初めて フルセット」が届いてから、自宅の庭でバラを育て始めています。土に植えたバラの苗木から咲くバラには、花もちがよく形が整っている切り花用のバラとは違う、逞しい生命力を感じます。
バラは平和・復興のシンボル
今では気軽にお庭で育て始めることができるようになったバラですが、かつては珍しい西洋のバラを手に入れることができたのは、皇族や貴族に限られていました。バラは西洋への憧れの象徴的な存在でしたが、日本でバラが広く大衆の手に届いて愛好されるようになってくるのは、第二次世界大戦後の高度経済成長期以降のことです。
大都市東京が焼け野原になった敗戦からわずか3年後、京成バラ園の初代研究所所長を務めた故鈴木省三氏は銀座の資生堂ギャラリーで「第1回バラ展示会」を開催しました。バラは「愛」や「美」を象徴する花のみならず、日本では復興を意味する「平和」のシンボルとしても社会に浸透していきました。そして、敗戦から奇跡の復興を世界に向けてアピールした1964年の東京オリンピックの翌年、京成バラ園芸の鈴木省三氏によって作出、発表された第一号のバラ「聖火」は、ニュージーランドの国際コンクールで金賞のほか南太平洋金星賞という特別賞をも受賞しました。これを機に、鈴木省三氏はミスターローズとして世界的に知られる育種家となりました。
京成バラ園ではそうした鈴木氏から受け継いだ育種のノウハウを継承し、春バラのみならず秋バラもベストな状態で楽しめるよう日々、徹底した管理が行われています。
バラは国際交流にも貢献
バラは世界中に2万種類もあると言われる花の女王として君臨していますが、もともとは約200種と言われるワイルドローズ(野生種)から自然交配や品種改良によって生まれたオールドローズ、そして人工交配によって続々とモダンローズの新品種が生み出されています。実は、日本にも10数種類の野生種があって、日本から欧米へ渡って新しい品種が生み出されていることを考えると、不思議な気持ちになります。バラの育種・保存によって世界は手を取り合って協力しているのです。ここまで人間が手をかけて新品種の作出に熱意を持って取り組んできた花が他にあるでしょうか。バラは剪定や適切な肥料をあげたりして病気にならないようにケアが必要です。入念な手入れをして見守ったバラがいよいよ蕾を付けて咲きだした時、私たちは何とも言えない感動を味わい、バラを愛でるのです。
コロナパンデミックで生活スタイルや働き方も大きく変わり日々戸惑いや不安が募る中、バラは手入れを怠らなければ、変わらず見事に咲いて私たちを癒してくれます。
私は、あらゆる試練を乗り越え、堂々と花を咲かせるバラの姿に励まされました。そしてこの感動を京成バラ園に来られなくても、オンライン体験という新しいスタイルで、一人でも多くの人々に伝えることができないか、京成バラ園さんに今回の企画を持ちかけたところ、ぜひやりましょう!と快く引き受けてくださいました。そして、せっかくなので、通常の営業時間にはお見せできない「夜のバラ園」をお見せしようということになりました。バラも生き物ですから、その時にしか見られない表情があると思い、今からとてもワクワクしています。今回の私たちの新しい試みに関心をもって、知られざるバラの魅力を感じていただけたら幸いです。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。お申込はこちらから↓